ロボコン

第一回 関東春ロボコンレポート(後編)〜勝ち続けるために…ロボコン主催校代表インタビュー

2017年3月23日、工学院大学1階アトリウムで開催された、第1回関東春ロボコン(@Kanto_spring_RC)。後編では、主催校の代表者インタビューをお届けする。

今回、代表者としてインタビューに答えてくれたのは、全体構想の考案、企業や高専生との窓口対応を担当した東京大学の田中さん。テーマ・ルール策定、大会書類作成等を担当した東京大学の犬伏さん。そして、開催地の提供とフィールド設営等の取りまとめを担当した工学院大学の萩原さんだ。

本大会の成功を支えたのは、3人が共通して持っていた、関東のロボコン、そして日本のロボット開発技術への危機感と熱い思いだった。

春ロボコン運営メンバー

関東春ロボコン運営メンバー

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完璧なルールはあえて作らなかった

──前回までは学内開催でしたが、今年は外部からの参加を募る形式にしましたね。何が一番大変でしたか?
東京大学・田中さん(以下、田中)(@K14st9):「人を呼ぶ」というのは大変でしたね。毎年の学内大会の経験から全くの初ではないのですが、対外試合という点においては真似られる前例がなくて。

東京大学・犬伏さん(以下、犬伏):自分たちのABUロボコン(2016年8月に開催された「ABUアジア・太平洋ロボットコンテスト」)のあとから開催準備を始めたのですが、新人に対してはF3RC(2016年9月に開催された新人参加のロボコン)のあとから間を置かずに、次年度のABUルールに近いテーマで開発を始めてもらいたかったんです。そうなると「次年度のABUのルールが発表される8月からF3RCが終わる9月」の間にルールを固めなければなりません。辛かったなあ(笑)。

田中:超忙しかったよね(笑)。僕は技術交流の活動をしたりCEATECに行ったりなんだりもしていました。忙しかったけれど、あそこで得た人脈は役に立ったと思います。

犬伏:「何か投げる」という構想だけはあったのですが、テーマがなかなか決まりませんでした。ボウリングというテーマに固まってからルールを作ったのは実質1週間くらいだったかなあ。

田中:下級生大会のルール作りに慣れている彼だからこそできたことですけどね。

犬伏:今回気をつけたのは、「ルールを完璧にしすぎない」ことです。疑問を持ち質問する技術もとても大切なので、あえて、ルールブックに質問を誘導するような「穴」を開けてあります。その調整が一番難しかったですね。その穴が致命的な見落としになってもいけないし。

──努力の甲斐あって、無事イベントを締めくくることができましたね。実際にやってみてどうでしたか?

犬伏:まず、当日の運営などにはまだ課題がありますね。また、今後、テーマの決定からルール策定までのスケジュール感をどう引き継いでいけばいいかなあと思っています。ABUの前にはテーマを決めないときついです。でも引き継げるかなあ……。

インタビュー写真02

(左)東京大学・犬伏さん (右)東京大学・田中さん

 

一代限りの勝利ではなく「勝ち続けるチーム」であるために

──春ロボコンをやろうと思った動機を教えていただけますか?

犬伏:「NHKで勝つため」というのは大前提です。それも、自分たちが勝つためではなく、今回春ロボコンに出場した世代が、NHKロボコンで勝つことですね。

──それは「東大がNHKロボコンで勝つため」ということでしょうか?

犬伏:はい。学内大会だと自分たちのやり方で凝り固まってしまって、そこから新しい機構や使い方が出てこなくなります。東工大さんの機構(3本爪のボール回収アーム)なんかは、ウチでは出なかったんじゃないかなあ。
団体として強い、一代限りにならない「勝ち続けるチーム」を作っていきたい。そうでないと、関東圏外の流れに勝てなくなってしまうという危機感があります。
開発をするにあたって一番大切なものは「このままでは負ける」という危機感です。これがないと新しい開発に手を出さなくなる。新しい開発に挑戦し続けないと、変化していくロボコンのルールについていけなくなるでしょう。新しいものに手を出し続けるためには他校とぶつかる必要があります。

──自分たちの内側に留まらない経験が対外試合で得られる、と。

犬伏:そうですね、学内大会だとチーム数も少なく、相手のチームがどう出るかがだいたい分かってしまうと、開発の枠が狭くなります。「こういうことをしてくるチームがいたらどうしよう」という発想力も広げなくてはなりません。

──強い相手と戦うことで強くなれる、という考えですね。

犬伏:そうですね、去年のABU大会では、中国に対して「国としてのレベルが違う」と思いました。試合結果は1.5秒差でしたが、技術的には10年の差を感じました。うち(東京大学)は、戦略や制御では強いのですが、メカに弱みがあります。弱いところを上げていかないと、強みも活かしきれなくなってしまう。そのためには技術交流が必須です。今回は東工大さんのメカがトップクラスでしたね。

──なんというか、すごく熱いですね……!

工学院大学・萩原さん(以下、萩原)(@hagi0913):彼の熱意で始まったようなものですから(笑)。

犬伏:優勝した翌年でないと、こういうことを言い出すチャンスってありませんしね(笑)。

萩原:関東圏が勝てなくなってきているところで東海勢を見ると、このくらいの規模の大会を定期的に開催しているんですよね。今回のような自動機主体の大会参加を機に、こちらは東大さんから技術を盗みたい思いもあります。

インタビュー写真03

(左)東京大学・犬伏さん (右)工学院大学・萩原さん

 

すべての経験がNHK大会の糧になる

──ロボコンの大会を企画したいと考える人に向けて、メッセージやアドバイスがありましたらお願いします。

犬伏:まずは春ロボコンに参加してほしいですね! NHKロボコンへの出場を考える学校さんであれば、大学とか高専とかにこだわらず参加してほしい。また、開催をするのであれば、運営は3大学共催でないと難しいんじゃないかと思います。

萩原:大会という規模になったときに、参加校も多いほうがいいですしね。

犬伏:また、当日の運営者人数を減らして、最低限必要なことに絞るのも運営のコツかと思います。人数を多くすると管理や会議が必要になってしまいます。少数精鋭が前提なので、別の大会の運営を経験したうえで、自主開催に挑んだほうがいいでしょう。

──今回の開催で、学べることは多かったようですね。

萩原:それはもう。工学院大学は最近予選敗退が続いているので、このような刺激は大切と考えています。今回、機体の完成度は満足のいくものではなかったのですが、NHKロボコンを見据えながら春ロボコンのロボットを作り上げるという経験や、他校の強いチームに触れるのはとても価値のあることだったと思います。

犬伏:例えば大きな荷物を運ぶことの大変さや物品の用意も、やってみないと分からない部分です。今回の春ロボコンで搬入を経験した学生が次のNHKロボコンで物品管理を担当することになるので、非常にいい練習になったのではないかと思います。そうしたことひとつひとつから学ぶことができます。今回は、前日搬入でテストランすることも考えましたが、参加チームも少ないですし、初回なので大会として成立させることを最優先してコンパクトにまとめることにしました。思ったより上手くいきましたね。失格処分はちょっと困りましたが……。

──マシンの暴走によるゲート破壊へのペナルティで失格処分は厳しいかな、という印象も少しばかりありました。

犬伏:「同じ失敗をNHK大会でやらないように」という意味も込めていますね。NHKであれをしてしまうと、それまでの1年がすべて無駄になってしまいますから。

萩原:ああいったところで緊急停止スイッチの大切さを実感してほしいですね。NHK大会やその先の将来で危険をおかさないためには、ここで厳しい対応をする必要があったと思います。

犬伏:とはいえ、安全性には気をつけたつもりだったのですが、投げるオブジェクトの選定やゲームバランスの設定には改善するべき点がありました。

インタビュー写真04

 

今後の構想と後輩たちへのメッセージ

──今回のテーマやルールのこだわりついて、改めて教えていただけますか?

犬伏:今回重視したのは「1回でストライクさせない」ことでした、必ず何度か往復してボールを取らせるつもりで。また、ボール回収成功に高い得点(20点)を付与して、勝つための戦略にバリエーションをつけられるようにしました。「壁を乗り越えてまたぐ」や「壁の先からアームを伸ばす」といった案もルール上で許容しています。ただ、この時期の1年生に与える要求水準よりは、難しめにしています。

萩原:うち(工学院大学)の学生にとってはかなり難しい水準だったと思います。自動制御に関する課題が目立っていましたね。今回のように、「大会」という目標に向けて負荷がかかることにより、モチベーションが高まって良い効果を生んでいると思います。

犬伏:危機感を持つための大会とロボットを開発するための期間、そして挑戦した開発の結果を実証するための大会が欲しいんですよね。春ロボコンで危機感を持って、NHKロボコンに向かってくれたら嬉しいです。僕が危機感を持ったのは2014年のABU、そしてロボミントンでした。ロボミントンでは実現のための技術力が足りなくて切ったアイディアもありました。悔しかったなあ、あれは……。

──今後の展望やアイディアについてうかがえますか?

犬伏:「同じくらいの難易度」のルールを作るのって本当に難しいんです。来年以降のルールやアイデアは断片的にあるのですが。教育的観点とテーマをどう結びつけていこうか……というところです。いろいろなアイデアを許容しつつ要求水準を調整したいですね。やってみたいのは「人が乗る」とか「ロボットがロボットを運ぶ」とかですね。あとは「自分で置いたものを自分で回収する」など……。直前の精度が、次の行動に影響するようなコンセプトも面白いですね。

──最後に、全国のロボコニスト、下級生たちにメッセージをお願いします。

犬伏:常に新しいものを見つけて、試して、使ってください。それを続けないと「勝ち続ける」ことは難しいでしょう。

萩原:このような大会の機会を大切にしてほしい。まずステップアップ大会に出場する機会に恵まれたことは感謝したいし、そこで得た経験と悔しさを持って、NHK大会に臨んでもらいたいと思います。

田中:アイディアがマシンの上限を引き上げ、技術がそれを形にして、練習量が安定性を高めます。つまり、最初に必要なのはアイディアなんです。だから皆さん、いろんなところに行って、たくさん交流してください。経験の積み重ねが開発能力につながります。

犬伏:あ、同じようなこと言ってる~~~!!

──ははは(笑)。ありがとうございました!

まとめ

以上、第1回関東春ロボコンのレポートと代表者インタビューを前後編に分けてお届けした。代表者3人の息の合った「バディ」感からは、関東圏のロボット開発を牽引するエンジニアの力強さがひしひしと伝わってきた。

「もっと強くなるために、強いライバルを呼ぶ」と語る彼らの姿を、本大会に参加した後輩たちはどのように眺めていたのだろうか。本大会の経験がどのように活きるのか、今年6月に開催される「NHK学生ロボコン2017」に期待したい。

第一回関東春ロボコンレポート(前編)はこちらから

高専ロボコン2016 出場ロボット解剖計画
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