NHK学生ロボコン2016 / ロボコン

NHK学生ロボコン2016 大会振り返りと記事まとめ

2016年7月10日に行われたNHK学生ロボコン2016は、東京大学・RoboTechが優勝し、ABUロボコン・タイ大会への切符を手に入れた。

 

大会オーバービュー

東大はまぎれもない強豪校。毎年最高レベルのロボットを仕上げながらも、2013~2015年は勝利に恵まれなかった。一方、その東大と決勝を戦ったのは、豊橋技術科学大学。こちらも強豪中の強豪で、1990年代、「ABU」となる以前から優勝候補であり続けている。最後の優勝は2009年で、こちらもここ数年は恵まれていない、と言えるだろう。両者の決勝戦は、会場のタイマーでは同タイム、まさにハナ差での決着となった。

今大会の大きなトピックは、代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターから大田区総合体育館へ会場が変更されたことだろう。競技フィールドそのものはさておき、ピットエリアは誰もが初めて立つ場。これまでとの違いは、広く、そしてサブの競技フィールドが用意されていたことだ。サブといっても完璧なものではなく、ポールが2本立ち、ハイブリッド機が多少の走行ができる程度のおまけ的なものではあるのだが、これがあるのとないのでは大違い。記者の目には、本戦で前日よりも調子を上げたチームが多かったように映ったが、これはこのサブフィールドの影響もあるのではないか。

過去、記者が見たABUの会場には、ほぼ完璧なサブフィールドが用意されていた。また、おそらく来年以降の日本大会もそうなる可能性が高く、この使い方も、これからの学生ロボコン、そしてABUを目指すロボコニストのひとつのテーマとなるのではないか。

技術オーバービュー

今大会の競技内容は、比較的シンプルなものだった。相手のことや得点などの戦略性をあまり気にする必要が無いスピード競技で、ライントレースとポール、というセクションの少なさだ。

しかしもちろん、シンプルだからと言って「簡単」なわけではない。

ひとつの障害は、フィールド構築の工数の大きさだろう。……これはおいておくとしても、まず、動力を持たないエコロボットをきちんと走らせることと、確実かつスピーディーなステアリング。このセクションに苦労するチームも多かった。この部分の白眉は、東大の磁力と風力のハイブリッドなシステムだろう。前半でのミスはかなり少なかった印象だ。また、アイデアとしては、大阪工業大学の非接触充電と、東京農工大学の「アラゴーの円盤の現象を用いたフライホイール」式が極めてユニークなものだった。いずれも原理的に「溜める」時間が必要で、スピード競技としては不利な選択。しかし、おそらく前例の無いものをカタチにし、大会出場を勝ち取った技術力と野心に拍手を送りたい。

ポールまわりでは、プロペラの設置の成功率が低かったように思う。確かに、この部分に必要な精度はおそらく1-2センチ。シビアな制御が求められた。設置そのものよりも、ハイブリッドロボットの位置決め、ということになるか。

ポールの登りで会場を沸かせたのは、やはりあまりにもユニークな発想をカタチにした、大阪工業大学だった。3本足の「タチコマ」or 「炭団」or「Fujin / Raijin」的マシンが、ポールに到達した瞬間に「変身」し、それまでの駆動輪であるオムニホイールをポールに押しつけ、登る。走行と登りをひとつの機構でこなす、ある種の美しさを持ったマシンだ。大工大のチームメンバーは、ロボワン経験者が含まれていると聞いた。こうした違う文化のミックスは、時としてイノベーションを生む源泉となることがある。

ここでは目立ったチームを取り上げてしまったが、決勝記事にも書いた通り、各チームとも高いレベルでロボットをまとめてきていた印象だった。「動けない」ということがなかった。初出場の九州職業能力開発大学校も、しっかりとした2機を仕上げてきていた。これは編集部にとってもなにより嬉しいことで、これからもみなさんの活躍をサポートしていきたいと強く思った次第だ。

NHK学生ロボコン・ABUロボコン経験者から

今回取材チームに加わっていただいた久野顕司さんは、ロボコンへの思い入れのアツさは編集部に勝るとも劣らない人のひとり。以下に、久野さんのコメントを付記しておく。

今年、例年開催されてきたオリセンを離れ、大田区総合体育館に会場を移した学生ロボコン。非常に会場が広くなり、観客が多く入れるようになりました。今までほぼすべての観客が学生ロボコン関係で、各校のOBすらも入れないほどのチケットの倍率でしたが、今年はそれ以外の人も入れるほどの余裕がありました。印象的だったのは、学生ロボコンを観戦したかったけどなかなか見ることができなかった高専ロボコン関係者が、初めて会場で見ることができてうれしいと言っていたことでした。

大会が始まる前は似たロボットが多いのではないかと思っていたのですが、まさか農工大や大工大のようなアイデアロボットを学生ロボコンで見ることができるとは思っていませんでした。速さもあり、他と違うロボットを作ってくるところにはこだわりと技術力を感じますね。

また、九州能力開発大学校(ポリテク)は創立2年目にしてChai-Yoを達成しています。毎年出場しているチームでもChai-Yoできていないチームがある中、残り1分を残してChai-Yoをやってのけるというのは本当に驚きました。来年からも期待したいところです。

今年の大会でChai-Yoを達成したチームは10チーム。これは近年のルールの中で群を抜いて多く、見ごたえのある大会だったと言えると思います。過去勝利条件を達成したチームは、2013は5チーム、2014年は4チームでした。ロボコンという競技は、学校でできていたことがなかなかできないのが普通です。実際に会場で動かさないとわからないことはたくさんあります。長距離輸送をしたり、分解するならなおさらです。前述したような試走場があることは選手にとっても大会にとっても非常によかったことだと思います。これからの大会でも試走上があればいいなと思いました。

決勝戦のチャイヨーの瞬間は2013年を思い出しました。ほんの数秒で勝敗がわかれる最高の一戦でした。東大も豊橋もすべてを出し切っての試合で、悔いがない試合だったと思います。

いつもより開催時期が遅く、各国の前情報が出てきていて日本の大会はどうなるだろうと思っていたのですが、実際に会場で大会を見て安心しました。東大にはあと少しの時間でできるだけロボットのブラッシュアップを行って、万全の状態でタイに送り出してほしいと思います。がんばれニッポン!

マネジメント、というテーマ


もうひとつ、蛇足ながら、記者からも付け加えさせていただく。「チームのマネジメント」について。マネジメントというと、ビジネスのようで、息苦しく感じる方がいるかもしれない。しかし、皆が気持ちよく、効率良く動けるように、と捉えれば、当然必要なことだと言えるのではないか。

  • チームメンバーの獲得の方法
  • 人員の配置
  • 年間、月単位、前日当日のスケジューリング
  • タスクやアイデアの管理
  • 内外とのコミュニケーションの方法
  • 安全管理
  • 技術の継承
  • アイデアの出し方
  • アイデアの取捨選択
  • プロトタイピング、テストの方法
  • 精度を高めていくメソッド、アプローチ、スタイル……
  • 各種チェックリストの管理

……等々、テーマを挙げれば切りが無い。

強豪校はどのように1年を過ごすのか? 各校のうまくいっているところ=「ブライト・スポット」は? また、他のロボットコンテスト参加者はどのようにしているのか? 編集部では、今後この部分にも深く迫っていきたいと考えている。

 

NHKロボコン2016 デバプラ記事まとめ

……ついつい前置きが長くなったが、今回の速報記事まとめ。

▼NHK学生ロボコン2016! 今年ももちろん最速レポート! from 大田区総合体育館
http://deviceplus.jp/events/nhk-robocon2016-preview/
競技ルールと観戦ポイントのまとめ。

▼センサチェック・テストラン速報:NHK学生ロボコン2016
http://deviceplus.jp/events/nhk-robocon2016-testrun/
全校ではなく恐縮ながら、テストランの様子を。

▼出場校紹介:NHK学生ロボコン2016
http://deviceplus.jp/events/nhk-robocon2016-team/
お忙しいところ、みなさんありがとうございました!

▼予選組み合わせ表:NHK学生ロボコン2016
http://deviceplus.jp/events/nhk-robocon2016-yosen/
予選リーグの組み合わせと勝敗一覧。

▼予選リーグ① 速報:NHKロボコン2016
http://deviceplus.jp/events/nhk-robocon2016-1st-round_001/
予選1順目。開幕早々、強豪校が次々に登場。

▼予選リーグ② 速報:NHKロボコン2016
http://deviceplus.jp/events/nhk-robocon2016-1st-round_002/
多様なロボットが登場。

▼予選リーグ③ 速報:NHKロボコン2016
http://deviceplus.jp/events/nhk-robocon2016-1st-round_003/
決勝トーナメント進出が決まる、運命の3順目。

▼準々決勝 速報:NHK学生ロボコン2016
http://deviceplus.jp/events/nhk-robocon2016-quarterfinal/
ここから敗者インタビューあり。悔しさが、会場の隅々まで伝わる。

▼準決勝 速報:NHK学生ロボコン2016
http://deviceplus.jp/events/nhk-robocon2016-semifinal/
強豪4校。Twitterのタイムラインが加速。トレンド入り。

▼決勝 東京大学×豊橋技術科学大学 速報:NHK学生ロボコン2016
http://deviceplus.jp/events/nhk-robocon2016-final/
決勝にふさわしい、ハイレベルな16秒。

 

地上派での放送は、8/6(土)午後4時5分~

そして東京大学が出場するタイでのABUロボコンは、8/21(日)開催。同時に、2017年大会の競技内容が発表になる。

それまでもうしばらく、Chai-Yo!の夢を見ることとしよう。

高専ロボコン2016 出場ロボット解剖計画
Device Plus 編集部

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