インタビュー

Kickstarterを席巻! “かわいい!”で世界を振り向かせたロボット工作キット「RAPIRO」

RAPIROの写真

“モノづくりのイノベーター”にスポットを当てる「People Plus」。今回は、クラウドファンディング「Kickstarter」(キックスターター)で、ハードウェアとして日本で初めてファンディング(資金調達)に成功し一般発売までこぎ着けたロボット工作キット「RAPIRO」(ラピロ)の開発者・石渡昌太さんが登場。
2011年、一匹狼のエンジニアとしてベンチャー企業「kiluck」を設立。電気、自動車メーカーなどの試作品開発をはじめ、脳波で動く猫耳型デバイスとして人気を集める「necomimi」の開発にも携わるなど、多くの実績を積み重ねてきた。彼が「RAPIRO」とともに挑んだKickstarterにはモノづくりに携わるひとりの日本人として、世界に示したい想いがあった。

 

議論よりもチャレンジを!
日本人エンジニアの心意気を世界へ

2009年にアメリカで誕生したKickstarterは、もはやひとつのブランドと言っていいほどの影響力を持ち、その名を世界にとどろかせている。これ本当にできるの?というアイディアから、夢が広がるプロジェクトまでが集まるクラウドファンディングは日本でも話題になっている。
石渡さんは、「注目のプロジェクトはその実現の可能性について、よく議論されたりしていました。でも、議論するだけでいいのか。日本のモノづくりに携わるひとりとして、日本発のハードウェアでチャレンジするべきなんじゃないか」と、言う。

 

「RAPIRO」の開発者・石渡昌太さん。

「RAPIRO」の開発者・石渡昌太さん。

「Kickstarterで成功させること。最初からそれが目標でした。どうせやるなら今のトレンドを日本流にプロダクトに活かして、みんなが楽しめるモノをつくりたかった」。ロボットの試作には3Dプリンタを使用し、制御基板はArduino(アルドゥイーノ)互換。さらに、名刺サイズのワンボードPC として大人気のRaspberry Pi(ラズベリー・パイ)(別売り)も搭載可能。外装のデザインは日本のロボットアニメの魅力をミックスし、眺めるだけでワクワクするようなロボットを多くのヒトが手にできるような値段で……。4ヶ月間の開発期間を経て2013年4月、日本人エンジニアの心意気を詰め込んだ組み立て式のヒト型ロボット「RAPIRO」が誕生した。

2013年6月にKickstarterで登場するやいなや、「かわいい!」「いいね!」と世界中が大絶賛。最終的には目標金額(約300万円)を大きく上回る1,000万円を調達した。さらにその後、日本のクラウドファンディング「Makuake」(マクアケ)でも大成功。言葉にすればトントン拍子のサクセスストーリーだが、しかしその道は決して平たんではなかった。

 

RAPIROの写真

フルカラーLEDで目が光るので、表情もより豊かに。

女子高生には好評だったが……。
最初の失敗?をバネに

石渡さんのKickstarterへの挑戦は、実は「RAPIRO」が最初ではなかったそうだ。人の気持ちを揺れるしっぽで表現した「Tailly」というプロダクトでチャレンジしている。以前、開発に関わった、脳波で動く猫耳型デバイス「necomimi」の経験から、ターゲットは女の子に設定。センサーで計測した心拍数に反応してしっぽが反応するプロダクト「Tailly」を開発した。

「しっぽが動くので、子どもと遊んだり、パーティグッズとして使ったりしたら楽しいだろうなと思ったんです。アニメやコスプレが好きな子なら興味を持ってくれるだろうし、日本らしいと。でも、女子高生には好評だったんですけど、肝心のお金が集まらなくて…」と苦笑い。

「彼女たちからは、『今はお金がないので、店頭に並ぶ日をすごい楽しみに待っています』というコメントやメールをいっぱいもらいました。とはいえ、目標額に届かないと製作できないわけですから、うれしいような悲しいような(笑)。でも、これが失敗だったとは思っていません。Fecebookの『いいね!』の数はRAPIROの5倍ありましたし、YouTubeの再生数も多かった。このプロジェクトが、Kickstarterのターゲットに合わなかったというだけのことです」と楽しそうに当時を振り返る。

 

tailly

「Tailly」や「necomimi」の詳細は、kiluckのWebサイトへ。
http://www.kiluck.co.jp/

 

「RAPIRO」誕生秘話

その経験をへて挑んだのが「RAPIRO」の開発。ターゲットは、ある程度お金に余裕のある30~40代の男性に設定し、Kickstarterでも話題になっていたRaspberry Piとの拡張も視野に入れた。

「Raspberry Piと連携するロボットが面白いと思ったんです。しかもロボットならターゲットに合うし、日本のロボットアニメは海外でも人気で日本らしいプロダクトです。Kickstarterではロボットを出している人もいっぱいいたんですが、Raspberry Piを使ったものはなかったんです。外装の完成度が低かったり、逆に完成度の高いものは価格が10万円以上もして、大人でもなかなか手が出せなかったり。その辺をリサーチして、値段を下げつつクオリティを高めていけば、他にはないロボットができると思ったんです」。

「RAPIRO」は、「Raspberry Pi」と「Robot」の頭文字を組み合わせて名付けたという。日本人エンジニアとして、今のトレンドを日本流にプロダクトに活かして、みんなが楽しめるモノをつくりたい…。石渡さんの想いは、その名前とともに「RAPIRO」の中に詰め込まれている。

 

RAPIROの写真

「RAPIRO」の試作品。

 

つくる喜び、カスタマイズの楽しさ。
ロボットの魅力をより多くの人に

2014年2月に一般発売となった「RAPIRO」は、外装の高いクオリティとかわいいデザイン、そして5万円を切る手頃な値段も話題となり、大きな反響を呼んでいる。
「5万円ぐらいのロボットは以前からありました。でも、外装の完成度の高いロボットは他になかった。僕は“値段”も製品の大事な魅力だと思うんです。RAPIROも10万円を超えていたら、これほど話題にはならなかったと思う。10万円はちょっと出せないと思っていた方でも、クオリティが高くて、しかも5万円に下がったら、例えば結婚している方でも奥さんを説得できる材料にはなるかなと思ったんです(笑)」。

初心者でも気軽に始められるように、部品の組み立てには、はんだ付けの必要がない。ドライバーでねじを締め、コネクタを接続していけばOK。12の関節を動かす12個のサーボモータと、それを制御するプログラム済みの基板が付属し、部品を組み立てれば電子工作初心者でもすぐ動かして楽しむことができるという。「ロボットの勉強をしている学生さんなら2~3時間で組み立てられます」。

また、制御基板がArduino互換も魅力の一つだ。プログラミングは、ユーザーが書き換えでき、ダンスをしたり、掃除をしたり、自分好みにアレンジできる。
さらに、別売りのRaspberry PiやRaspberry Piカメラモジュールを頭部に組み込めるのも大きな特長。インターネット接続して留守番ロボットとして自宅の様子をスマホに送ったり、音声認識で会話を楽しんだり、画像認識で相手の顔を識別したりと夢が広がる。

電子工作初心者は、プログラミングを勉強しながらゆっくりと、コアなファンはガシガシ自分好みのロボットへカスタマイズする。様々な人たちの楽しさが、より深まるように設計されている。

 

RAPIROの写真

制御基板はArduino互換で、プログラミングの書き換えも可能。

RAPIROの写真

別売りのRaspberry PiやRaspberry Piカメラモジュールは、頭部に組み込める仕組みに。

 

自分だけのロボットを持つうれしさ。
完成度の高い外装が叶える満足感

「買った方々がブログやFacebookなどで組み立て方の解説をしてくれていたり、プログラムを書き換えて新しい遊び方を紹介していたり。なかには僕もわからないようなプログラムに挑戦して1時間ぐらいのムービーをわざわざ制作して報告してくれる人もいて。英語で専門用語も多くて全然わかんないんですけど(笑)、そういうのを見るとやっぱりうれしいですね」。

こうした熱意は、機能はもちろん眺めているだけでもうれしくなるデザインと外装の完成度の高さによるところも大きいに違いない。
「やっぱり見た目はすごく大事です。デザインが安っぽいと組み立てるときのモチベーションが上がらないじゃないですか。RAPIROは技術力の高い『ミヨシ』さんという町工場に金型製作をお願いしています。職人さんの手でゼロコンマ何ミリ単位で金型を微調整して頂きながらつくっているので、ぴったりパーツがハマってきっちり組み上がります。しかも、かわいいので愛着もわきやすい(笑)」。

「僕自身かわいいモノをつくるのが得意なので、ここはこだわりました。頭身を低くしたのは、かわいさや愛らしさはもちろんですが、他にこんなロボットがなかったから。頭身が高いロボットと違って、倒れる心配がないのも初心者の方には安心かなと思ったんです」。

石渡さんがCEOを務める「kiluck」を漢字で書くと「機楽」となる。楽しい機械をつくる。自分も楽しく機械をつくり、その機械を多くの人に楽しんでもらう。いろいろな “楽しい”と、“機械”という言葉を組み合わせて生まれた名前だという。「RAPIRO」が実際に製品化され、一般消費者の手に届けられ、「機楽」の“楽しむ”精神とともに国内外へと広がっている。

 

RAPIROの写真

「RAPIRO」の部品。完成度の高い外装は組み立てる前からワクワクさせてくれる。

みんなが楽しく、気楽に。
ずっと“つくり続けられる”環境へ

最後に、石渡さんに今後のビジョンについて伺った。
「ずっと、お客さんに喜んでもらえるモノをつくり続けていきたいですね。僕たちのようなベンチャーは、大企業がつくっているモノと同じモノをつくってもしょうがない。大企業では参入できない領域は山ほどあって、RAPIROのようなロボットもそうなんです。ハマるモノをきちんと継続していければ、エンジニアとして好きなモノづくりが続けていける。まずは“つくり続けていくこと”が大事ですね。Kickstarterもまた挑戦しますよ(笑)」。

「それともうひとつ。実は年内にインキュベーションのような新しい会社をつくろうと思っています。講演に行くと起業の相談などをよく受けるんですよ。彼らをサポートする、コンサルティングのような会社です。これまでいろいろな実績を積み重ねてきた中で、さまざまな企業、町工場や投資家の方とのつながりがあります。生産のサポートもできますし、販売やマーケティングのノウハウも貯まっています。もし、僕と同じようなビジョンを持ってがんばってモノづくりをしたい人がいるなら、投資家の方の紹介や、生産のサポート、アドバイスなどができる」。

「同じプレイヤーとしてサポートしながら一緒に走っていくことはできると思うんです。そうして続けていけば、やがて自分の会社を持てるようになるかもしれない。そんな会社をつくりたいと思っています」。

「kiluck」の名前には「機楽」の他にもう一つ「気楽」という意味も含まれている。
「モノづくりをやっていると、どうしても真剣になって根を詰めすぎちゃうことがよくあるんですよ。だから、好きなことをずっと続けていくためにも“気楽に行こうよ”という意味も込めています」。

日本のモノづくりの誇りを胸に、みんなで楽しく、気楽に。「kiluck」のモノづくりは新しいステージへと進んでいる。

 

RAPIROの写真
「RAPIRO」は、Amazonなどインターネットでの購入はもちろん、秋葉原や大阪の店舗でも購入できる。45,360円(税込)。詳細は「RAPIRO」のWebサイトへ。

●RAPIRO
http://www.rapiro.com/

 

 

Device Plus 編集部

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