インタビュー

勝てるチームのつくりかた 学生ロボコン2016覇者・東大RoboTechの場合 前編

(左)エコロボット制御担当の高橋亮さん (中)チームリーダーであり、エコロボット担当の田中敬さん (右)ピットクルーでハイブリッドロボット担当の山田雄大さん

 

遅ればせながら、学生ロボコン2016・CHAIYO! シーズンの覇者、東大RoboTechのインタビューをお届けする。

記者の不躾な質問にも、淡々とかつ何も隠すことなく答えてくれたのは、チームリーダー兼エコロボット “班長” の田中 敬さんと、エコロボットの制御担当かつ田中さんの “腹心” でもある高橋 亮さん。本稿では、特にNHK及びABUの感想、開発の経緯、そしてチームのマネジメントについて聞いた。

これまで優勝校インタビューをしてきて毎回感じるのは、「優勝校にはどこかに “凄み” がある」という極めて文系的な感想。田中さん高橋さんに話を聞き、今回もある種の凄みを感じさせてもらった。可能な限り、これをお伝えしたい。

なお、技術的な部分の詳細に関しては、弊サイトが皆さんのご協力のもとまとめた「NHK学生ロボコン2016 出場ロボット解剖計画」をご覧頂きたい。

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NHKロボコンのこと、ABUロボコンのこと──いちばん心臓が痛くなったのは……

──NHK、国内大会の優勝、そしてABUベスト4、ロボコン大賞、おめでとうございます。どんな大会でしたか?

田中:タイヘンでした。特にABUは、ただただ大変でした(笑)。あんなにまったく動かないマシンを見るのは、本当に久しぶりだったんです。

高橋:テレビ放送だと、何事も無かったように見えますけどね……。

田中:予想外のことがたくさんありました。一番大きかったのはフィールドの違いです。テストランで初めて動かした時、「え、こんなところでぶつかるの!?」って感じです。僕たちはエコロボットの自己位置をとって、それをフィールド図の上にプロットできるツールを用意していました。それを見てみると、これまで通りちゃんと動いている。でも実際には障害物にぶつかっている。

高橋:それで調べてみると……、

田中:フィールドがずれてるんです。一応僕たちのエコロボットは、30ミリ軌道を変えたいとしたら、30ミリ変わるような精度がありました。それが最終的には、100ミリとか、そのレベルでずらしました。放送ではその時の様子が映っていましたが、もはやフィールド図から軌道がはみ出して意味をなさなかったので、ただのデータの画面が出ていたはずです(笑)。

チームメンバーが自分の仕事に集中できるよう奔走したというリーダーの田中さん

 

──その他の「ABUの魔物」は?

田中:外が暑いのに中は異常に冷やしてあるとか、会場入りが朝8時半ごろで夜8時ぐらいまで会場にいなくちゃならないとか、体力的にもしんどかったですね。

高橋:それと、練習用のフィールドが屋外なんですよ。それが砂とかゴミとかがあるうえに、本番フィールドよりずれていて。それに加えて「本番フィールドでのテストランは午前1回午後1回の計2回、と予め聞かされていたのに、急に何回でもできるようになったり。

田中:そういう連絡事項、コミュニケーションがすべて英語、というのは疲れました。もちろん通訳の方が居てくれたんですが、もし何か聞き漏らしたら……。その辺りは、高橋君とすごく頑張りました。食事も、体調を崩すといけないのでメンバー・ピットの人は日本から持っていったものだけを食べるようにしていたり。

──徹底しましたね。そんな中で、中国戦です。残念な結果でしたが、その瞬間、何を思いましたか。

高橋:あ、負けた、って。僕は試合中ずっと動いているんです。それでほとんど自機を見ているので、その瞬間、勝ったか負けたかもよく分からず……。唖然としてました。

田中:多分、リアクションが薄かったと思うんですよね。すごく悔しがるわけでもなく。なんでかっていうと、勝ち負けは全て相手次第、だったからです。中国の時は、もう向こうの方が速いことは分かっていましたからね。向こうが失敗してくれれば勝つし、スムーズに行けば負ける。言ってみれば勝ちと負けのくじを引いているようなものです。これまで一年間の積み上げの結果、そもそも負けていた。その場でどうにかできるものではなかったから、「あ、負けた、終わった」となったんだと思います。

──なるほど、例えばロボミントンの時だったら、「あのレシーブが成功していたら……」とか、悔しがる要素があるけど、今回はそれがなかった、ということですね。

田中:はい。でも実はいちばん心臓が痛くなったのは、安倍総理と会った時です。ABU本大会より。1時間ぐらい前に入っていろいろリハーサルして本番に臨んだんですが、 総理がロボコンのことを質問されて、自分のなかでは想定外だったのでそれに答えるのにあたふたしちゃって(笑)。

高橋さんは、田中さんの頼れるバディだ

 

CHAIYO! シーズンのこと──もう一回やり直すとしたら

──この1年間、CHAIYO!シーズンについて聞かせてください。大きな要素として、開発過程での2000回のテストラン、というお話しがありましたが、これは意図的なものだったのでしょうか。

田中:意図的、です。今年はテストランを多くする方が勝てるだろう、と思いました。例えばロボミントンなら、5回中3回成功すればいい。でも今回の場合は、100発100中でうまくいかないといけない性質の競技内容ですから。今年は再現性の勝負だろう、だったら数多く走らせて成功率をとことん上げる必要があるだろう、ということです。

──なるほど、そういう意味では、ある種簡単な競技内容だった……わけではないですよね。

田中:はい、言うほど簡単ではない……、と思います。ぱっと見簡単そうに見えるかもしれませんが、例えばエコロボットは、アクチュエータに制限があります。一般的にロボコンて「なんか問題が出た、アクチュエータ付けて解決」という普通の手法があると思いますが、それが通用しないというのは、相当に難しい方だと思うんですよね。

──開発中に大きな課題となったのはどんなことでしたか?

田中:ハイブリッド機の方は、順当というか、他の年に比べるとうまくいったと思います。「これ失敗したから最初からもう一回」というのが無くて、制御に時間を割けました。

高橋:エコロボットの方は、3月ぐらいですかね、このへんでガラっと変わりました。それまではアルミフレームで組んでましたが、コースから落ちたらゆがんでしまう。それで、ジュラコンの板になったわけです。

田中:それに加えて、横ずれの問題もありました。磁石で押していたわけですが、このときのスピードを速めていくと、エコロボットがスライドするように横にずれてしまうんです。これを検知するためのy軸エンコーダも有効でした。

──全体としては「ヤバい!」というようなことはなく、「間に合わせた」という感覚でもなく……、

田中:完全に、積み上げていった、精度を上げていった、という感覚ですね。もちろんいろいろあって、順調とまでは言えませんが。

──あとは、磁石という選択ですね。これはいかがでしたか?

田中:もう一回やり直すとしたら……、ぜったいにやりません(笑)。

高橋:面白かったのは、最終的に使った日立金属商事・エックスメタル社の磁石ですが、これを入れた途端、すごく動くようになったんですよね。それまではエコとハイブリッドが20ミリずれたらアウトだったんですが、これのお陰で50ミリずれても大丈夫。制御担当として、急にやることがなくなっちゃいました(笑)。

田中:それまで、とにかく制御を追い込んできて、「オラ!もっと精度上げろよっ!」だったのが、コレを入れたら「あ、できるようになった!」という劇的な変化です。重要なのはそこまで制御を追い込んだという事実で、そこにメカの改善という要素が加わってジャンプアップ、という結果です。

制御・回路両担当の意見を反映したハイブリッドロボット

 

エックスメタル社の磁石を搭載したエコロボット

 

東大RoboTechのやり方のこと── “2000回” のなかみのつくりかた

──部の体制について教えてください。

田中:全体としては、まず部長と副部長。その下に、機械屋・回路屋・制御屋の各 “屋” があり、それぞれに “屋長” が居ます。ここまでは全て4年生です。3年生以下のその他のメンバーは、各屋に振り分けられている、というのが一応の体制です。

──ロボコンに向けたチーム編成は?

田中:今回で言えば、まず、僕がチームリーダーですね。そしてその下に、エコロボットの班長、ハイブリッドロボットの班長が居ます。エコロボットの班長は僕が兼務、ハイブリッドは山田 雄大さん(メイン写真右)。

──班長やチーム6人の任命は誰がするんですか?

田中:基本、エライ人です。部長とか屋長とか。ただ、それはイヤっていう希望も通るし……、

高橋:まあ、今回のリーダーは、田中君か山田君、あとは今回はメンバーに入らなかったHybrid班の班長も候補に上がりました。順当というか、ああそうだよね、って感じでした。

──チームリーダーと班長って、ちょっと別の種類の仕事ですよね。リーダーはまとめ役、班長は技術的なことが重要です。

高橋:本人の前ではちょっと言いづらい(笑)ですが、リーダーは技術のこともわかってないといけないし、外交的というか、ちゃんとコミュニケーションを取れる人じゃないといけないですよね。そうなると、今回は田中君かな、って。もともとは山田君がリーダーの予定でしたが、最終的には、山田君のハイブリッドロボットの調整が忙しかったので、エコロボット担当の田中君になった、という感じです。Hybrid班の班長は前に出たがらないタイプなので辞退して、田中・山田のふたりは、いろいろわかっているし人前で話せるし。

田中:リーダーと部長を兼任している他大さんも多いですよね。そういう意味では、ウチは特殊かもしれません。

「勝てるチームのつくりかた 学生ロボコン2016覇者・東大RoboTechの場合 後編」に続く!

Device Plus 編集部

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出場ロボット解剖計画