世界の未来を変えるロボットを作りたい! 大舞台で戦うロボコン戦士たち

昨年、デバプラでは「あなたの心に火をつける一冊『ロボコン イケてない僕らのイカした特別授業』」で1冊の本を紹介した。このルポルタージュで出てくる大会が、FRC(First Robotics Competition)だ。なんと!この本に負けず劣らず、本気でアメリカのロボコンへ挑戦している高校生たちがいる!

今回、デバプラ編集部は、彼らの活動に共感し、「少しでも支援ができれば!」と考えた。メンバーの大塚耀さんへコンタクトし、彼ら自身の手による記事を寄稿してもらった。もし、彼らの活動に共感できるならば、ぜひ応援して欲しい!

 

クラウドファンディング readyfor
「国際高校生ロボット大会FRCに日本からの初出場を果たしたい!」

https://readyfor.jp/projects/TTS-5749

募集締め切り 2015年3月9日午後11時


 

はじめまして、Tokyo Technical Samuraiの大塚です。今回の大会ではハードとクラウドファンディングの担当をしています。今回、DevicePlus編集部よりメールをもらい、Peple Plusに寄稿する機会をいただきました。私達の活動を知ってもらいたいと思い、記事を書かせていただきました。宜しくお願いします。

活動のきっかけ

2014年8月下旬にメンバーの一人である大西が、TwitterでFRC(First Robotics Competition)を知り、メッセージアプリ LINEを使って、同じ学校の仲間に対して呼びかけたことがきっかけです。

その後、校内で話が広がっていき、10月の上旬にさまざまな思いを持った有志メンバーが10人集まったことで、私たち「Tokyo Technical Samurai」の結成に至りました。

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1列目左から:中山,原田,大塚,川端,川村 2列目左から:大西,江口,松本,眞田,笠井

メンバー,役割分担など

私たちのチームは10名で結成されています。

江口壮哉   – ハードウェア担当、機械システム分野、マイコン制御部所属
大塚耀 - ハードウェア、クラウドファンディング担当、機械システム分野、マイコン制御部所属
大西祐輝 - ハードウェア、管理・経理担当、電気電子分野所属
笠井信宏 - ソフトウェア、チームウェブページ製作担当、情報システム分野、マイコン制御部所属
川端唯人 - ハードウェア担当、機械システム分野、マイコン制御部所属
川村洋平 - ハードウェア担当、チーム副代表、機械システム分野所属
真田行隆 - 電子回路担当、機械システム分野、マイコン制御部所属
中山武壽 - ハードウェア担当、機械システム分野、マイコン制御部所属
原田英将 - ハードウェア担当、チーム代表、電気電子分野所属
松本賢史 - 電子回路、イラスト担当、電気電子分野所属

なぜFRCなのか

このFRCという大会は、何しろ大会の規模が大きいのです。なんと18か国以上、5000を超えるチームがこの大会で争うことになります。そして製作するロボットの大きさも、人間以上。日本国内の大会では、決して味わうことのできないものが凝縮されているロボット競技会がFRCなのです。

また、この大会は、アメリカ発祥なので、コミュニケーションは、もちろん英語。200ページを超えるマニュアルや、60ページほどのルールブックに、日本語版なんてものはありません。大会会場も海外なので、会場へ行っても英語が話せないと、本当に何もできません。

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さらにこのFRC、実は参加するためにかかる費用も$6,000(日本円:120 × 6000 = 720,000円)と、並大抵の額ではありません。渡航費も含めると、最低でも280万はかかります。企業にお願いして廻り、協賛金をいただいて参加するということがルールの1つでもあるのです。ロボットについての知識も求められますが、それだけに留まらず英語力や、交渉のノウハウも必要になるこの大会だからこそ、私たちは、国内の大会では、得ることのできない経験を得るために、FRCへの参加を決めました。

自分たちでお金を集めなければいけないルール

このFRCの規定の中の1つに、「参加費や部品代、旅費などはスポンサーシップからまかなう」というものがあります。日本からメンバー10名が参加するために必要な費用は300万円以上。とても高校生が簡単に集めることのできる額ではありません。

それ以前に、私たちは企業と交渉した経験はなく、興味を持ってくれそうな企業を探し、ひたすらメールや、電話でアプローチをかけるしか、方法はありませんでした。

最初は正に、苦難の連続でした。そんな中でも、私たちの話を聞いてくださった企業の方々には親切にしていただき、宣伝の方法、アプローチの手段などを教えていただきました。企業のオフィスに入るということ自体が初めてで緊張する反面、何もかもが新鮮に見えました。

将来、もし、私たちの中の誰かが起業をすることになったとき、恐らく今回と同じような資金集めが必要になると思います。そんなことを思うと、高校生のうちから、断られたり応援されたりという人と人とのつながりを学べるという点では、将来に役立つとてもいい経験になるのだろうと思います。

クラウドファンディングに挑戦してみて

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今回メンバー大塚の提案から、1月28日より参加費・渡航費をクラウドファンディングで調達しました。当初は、正直、私たち自身クラウドファンディングが成功するとは思っていませんでした。クラウドファンディングが始まった時にはすでにロボット製作真っ盛りであり、文章をじっくりと考えて推敲(すいこう)するような時間が十分に取れたと言うとうそになります。

それでありながらも初日にはメンターさんの協力もあり、ほぼ半分まで集まってしまった時にはうれしいのか、恐ろしいのかで、手を震わせながら画面を見ていたのを覚えています。

さまざまな方の協力もあり無事に目標額の50万円を達成することができましたが、やはりクラウドファンディングは非常に特殊な資金調達ツールであるため、実感が湧いていません。感謝をするとともに、ありがたくお金を使わせていただこうと思っています。

FRCの概要・ルール・特徴など

FRC、公式名称”FIRST Robotics Competition”は、民間非営利団体(NPO)FIRSTが主催する、高校生のための世界規模のロボット競技会です。毎年決められたテーマにそってロボットを製作し、結果を競い合います。ロボット製作の技術だけでなく、コミュニケーション能力・マネジメント能力など、総合的な力を育てるための大会となっています。

今年、FRC2015のテーマは「Recycle Rush」です。コンテナを積み上げ、ゴミ箱の中にゴミを入れ、得点を競うゲームとなっています。最初の15秒間は自動操縦タイムであり、ロボットが自動で制御して、自分たちのチームのエリアにあるゴミ箱とコンテナ一つを真ん中のゾーンへ運びます。その後、操縦タイムです。チームメイトが、直接コントローラーを握り、コンテナとゴミ箱を積み上げていきます。操縦タイムの制限時間は2分15秒間です。

積み上げ方や、積み上げる方法によって得点が変わり、判断力・チームの結束力が試される競技となっています。

 

ロボットの技術的説明,支給されるマイコンの特徴

-ハード

ハードウエアの設計での一番のコンセプトは、倉庫などでコンテナを持ちあげるフォークリフトでした。機体の足まわりには全方向、自由に移動できるメカナムホイールを選択し、またそれを減速するギアボックスはゼロから設計しました。ギアは、小原歯車工業さんの標準歯車を頂き、外板にはA2017(ジュラルミン)の5mm板を使ってフランジ付きベアリングをはめ込んでいます。

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機体のフレームには、エヌアイシ・オートテック製のアルミフレームを使用し、レールとアームの連結される昇降部分は、ベアリングでレールを挟み込むような形状にしています。アーム昇降でワイヤを巻き取るウインチの巻胴は、塩ビ管をカットして自作しました。肝心のコンテナを掴むアームは、簡略性を求めた結果ツメ状のものとサポーターに落ち着きました。

-ソフト

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今回の大会では、大会側から配布されているroboRIOというマイコンを使いました。roboRIOとはNational Instruments社が開発したマイコンであり、Linux OSを搭載しています。CPUも667MHzと他のマイコンに比べて高性能であり、カメラ画像の転送や並列処理などの一般的なマイコンには、難しい処理もこなしてくれます。そういう点では、Raspberry Piなどに比べれば、パワフルなマイコンと言えると思います。

今回のプログラムはEclipseという統合開発環境(IDE)で開発しました。Eclipseで記述したプログラムをを大会側から配布されたroboRIO用のコンパイラで実行可能ファイルにし、それをネットワーク経由でroboRIOに転送して、プログラムを実行するという方式で、プログラムを動かします。

ロボットのプログラミングをする上で、利用した言語はC++です。C++をプログラミング言語として選択した理由は、メンバーが、C++を書いたことがある人が多く、私たちにとって使いやすい言語だと判断したからです。

日本のロボコンとの違い

日本で行われているロボコンとは違い、このFRCは、いろいろな場所で予選大会が行われます。そこで平等を期すため、ロボットの製作期間に期限が設けられています。

期間は、大会ルールが発表されてから6週間。私たちは、その短い期間に作戦の構想、ロボットの設計、製作、ソフトの完成をしないといけないのです。

また、この大会では技術力だけでなく、エンジニアとして必要なコミュニケーション能力・マネジメント力などを成長させる目的もあります。そのため、先述した資金集めのルールや、プレゼンテーショもあります。また、大会のゲーム自体がチーム制であり、協力という大きな要素が追加されます。他の大会にはないさまざまな要素があります。日本のロボコンとはまた違った面白さや厳しさがあります。しかし、製作期間が短いことなどからも、マイコンの指定などの制限があり、自由度としてはもしかしたら日本のロボコンのほうが高いかもしれません。

苦労の連続だった製作過程

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ハード(大塚)

ハード面で苦労した点として第一に挙がるのは、やはり設備の問題でした。卓上ボール盤やバンドソー、シャーリングマシンなど、学校で使い慣れた工作機械は使えませんでした。と言うのも、今回の挑戦は完全に有志であったために学校の協力は得られなかったからです。

今回ギアボックスに使った、A2017の板材にベアリングを埋め込むレベルの精度で穴あけ加工できる環境などあるはずもなく、東京墨田区にある、浜野製作所さんの協力なしには成立しませんでした。板材は大型のレーザー加工機で加工して頂き、それ以外の部分の加工は金鋸と電動ドリルとど根性で、アルミでもステンレスでもお構いなしに切断しました。その他にも、ギアボックス外板のわずかなズレから生まれる異音に対応したり、なめてしまったねじを外したりと、ハード面での苦労は数えきれません。

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日暮里の事務所にて、組み立て作業中のメンバー

メインの作業場所には日暮里の空き事務所をお借りしましたが、やはり試走するスペースが足りないなどで苦労することもしばしばありました。皆で知恵を絞りながら安全に作業を進められるように工夫をしましたが、来年チームを継ぐメンバーにはより作業に向いた場所を早い段階から確保して欲しいところです。

ソフト(笠井)

今回の大会は、まさに時間との戦いでした。ハードの部品の調達、組み立てなどハードが完成してからプログラムを書く手順を踏んだので、実質、10日間程度しかないという状況でした。それだけでなく、今回使ったroboRIOというマイコンは初めて使うものであり、また大会側から配布されているライブラリも初めて使うもののため、今まで使ったことがあるマイコンとは違う点も多く、作ったことがあるようなプログラムや使ったことのあるセンサーなどでもうまく動かない、センサーの値が読み取れないなどのトラブルに追われました。

電気(原田)

製作するロボットは、大きさや重さが大きいのが特徴です。モータードライバやモーターの配線の太さ、配電盤のヒューズの定格などは、今まで電子回路で使用していたものよりもとても大きいものでした。足回りのモーターなどには、40Aのヒューズを使用します。アメリカの大会本部から送られてきたヒューズが足りず、また、予備を用意するために、いろいろなお店やネット販売を探し、手配しました。ヒューズは自動車用のもので、改めて、今回製作するロボットの規模の大きさを実感しました。

挑戦者たちの気持ち

初めての巨大ロボット、初めての海外大会、初めての日本からの参加は、今回の大会は初めてなことだらけでした。何もわからない状況ですから、何も見えない状態から、手探りで進んでいきました。もちろん順調にすべて進んだわけではありません。言葉の壁、大きさの壁、経験の壁、知識の壁….私たちはさまざまな壁を乗り越えて、ロボットを製作していきました。これは私たちにとって大きな力になっていると思います。

ロボットの製作は終了しましたが、大会本番はこれからです。私たちは精一杯、悔いのないように闘って楽しんでいきたいと思います。

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デバプラ読者へのメッセージ

今回の大会のように、初めてのことに挑むことはとても難しいですし、怖いことです。ですが、そこを乗り越え、挑戦をすることはとても素晴らしいことだと思います。

次回は大会のレポートをお送りしたいと思っています。お楽しみに!

 

First Robotics Competition 大会日程
2015年3月27〜28日 予選・決勝
場所:ハワイ大学

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