世界を変えるMEMSデバイス

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©Melanie Gonick/MIT

※この記事はDevicePlus.com(英語版)のこの記事を日本語訳したものです。

今、大きな話題を呼んでいる医療用カプセルロボット(MCR)。今回ご紹介するMCRは、患者の体内で自律的に作動し、疾患の診断、予防、監視、治療を行う能力を有する埋込式微小電気機械システム(MEMS)デバイスです。

MCRを患者の身体開口部から挿入し、手の届かない箇所(消化管など)へ送り込みます。そしてセンサ、アクチュエータ(駆動機構)、無線通信等の外部環境との相互作用によって、内視鏡検査、消化管手術等、様々な役割を、その場所で果たすことが可能です。

MCRの設計、開発は、まさにチャレンジそのもの。大きさ(生体を傷付けない大きさは最大1 cm)、動力源(バッテリー消費量が極少量であること)、フェイルセーフ機構(操作ミスや誤作動があってもなるべく安全である)等、多くの制約や制限があるためです。

現在開発中の最新MCR、3タイプ

1.経口折紙ロボット

飲み込むと、勝手にもぞもぞ動き出す?!MIT、シェフィールド大学、東京工業大学の共同研究によって開発されたこの経口折紙ロボットは、患者の胃の中でバッテリーを取り外し、胃内壁の患部の措置を行います。カプセルに入れて飲み込み、外部磁場を用いて操縦します。

飲み込んだロボットのバッテリーが取り外せなかった場合、胃内壁に重篤な損傷を引き起こしかねません。この折紙ロボットはその問題にも対応しています。

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©Tech Insider

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©Shuhei Miyashita et al./ICRA Proceedings

2.薬物送達カプセル(DDC)

薬物送達カプセル(DDC)というものがなぜ必要とされるのでしょうか?第一に、薬剤が大きいと吸収されにくいということです。第二に、薬物の内ある程度の分量は、吸収される前に胃中で分解されてしまうためです。ヴァンダービルト大学とミラノ工科大学との共同開発による最新薬物送達システム(DDS)は、コイル磁石ピストン運動を利用して、薬物を直接、消化管内壁に送達します。カプセルは外径16 mm、全長25 mm、最大201.06 mm3の薬物の送達が可能で、重量は12 g。やや重いようにも思われますが、薬物を一定時間の間、制御しつつ投与することが可能です。この最先端のMEMS薬物送達カプセルには、リアルタイムの局在診断機能や動作位置制御機能も搭載されています。

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(a)DDC最終試作品(外径16 mm、全長25 mm) (b)薬剤投与中
 (c)薬剤投与完了©Beccani et al., 2016/Elsevier

3.無線カプセル内視鏡(WCE)

消化管の病巣の診断や治療には通常、内視鏡および結腸鏡が使用されますが、このピルサイズの無線カプセル内視鏡(WCE)は、診断に必要な腸内壁の画像撮影を行う能力を有するMEMSデバイスです。蠕動運動(自律的な波状運動)によって消化管を移動し、胃、小腸、結腸内で使用できます。

WCEというコンセプトを発案したのはインペリアルカレッジロンドンの研究者らでした。その後機能を向上させ、治療を目的とした標的部位での投薬が可能となったのです。さらに、カブトムシやテントウムシ等の昆虫の生体模倣による保持機構を搭載することで、さらなる機能向上が実現されました。例えばテントウムシは、上羽をケーシングとしてその下に下羽を折り込み、保護します。カプセル内視鏡が腸の蠕動運動に抵抗して機体を保持する機能として、この、羽の折り畳み機構という最新のアプローチが採用されているのです。

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©Woods & Constandinou/PubMed
標的部位に1mlの投薬を行う保持機構のコンセプト図

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©Woods & Constandinou/PubMed

標的部位に1mlの投薬を行う保持機構のコンセプト図。投薬針が完全に伸び、投薬実行中。

Yulhane-Jerez Koh

生物力学大好きエンジニア。はまっている分野は、生体模倣ロボティクス、機械学習、神経科学等。

NHK学生ロボコン2016 出場ロボット解剖計画