ブックレビュー「闘え!高専ロボコン ロボットにかける青春」

いよいよ「高専ロボコン」の全国大会が12月3日(日)に開催されますね!
デバプラ読者の皆さんの中には、毎年楽しみにしているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

さて、高専ロボコンは今年で第30回を迎えます。
この記念すべき年に、高専ロボコンの舞台裏に迫った「闘え!高専ロボコン: ロボットにかける青春」(KKベストセラーズ)が出版されたのはご存知でしょうか?

高専ロボコン2016の出場校に密着し、各校の予選から全国大会までの様子などの舞台裏に迫った一冊で、デバプラではおなじみの見ル野栄司さんのイラストによるロボット解説もあり、ロボコンファン必見の感動のドキュメントとなっています。

 

そんなロボコンの魅力がつまった本書を、自身も学生ロボコン出場者である谷 晃輔さんにレビューしていただきました。
谷さんは6月に行われたNHK学生ロボコンで優勝した、東京工業大学チーム「Maquinista(マキニスタ)」の操縦者として活躍されています。
谷さんへの過去のインタビュー記事はこちら
ロボコン出場者として共感できる部分も多かったようで、経験者ならではの目線でレビューしていただきました!

 

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「闘え!高専ロボコン ロボットにかける青春」レビュー

先日、高専ロボコンをテーマとして描かれた書籍である「闘え!高専ロボコン ロボットにかける青春」が発売されました。

闘え!高専ロボコン: ロボットにかける青春 萱原 正嗣

闘え!高専ロボコン: ロボットにかける青春(KKベストセラーズ)
取材・執筆:萱原 正嗣  イラスト:見ル野 栄司

本書はアイデアを実現するロボコニストの努力の過程、そしてロボコンを通しての苦労や喜びが描かれています。
今回は実際に読んで感じたことを、「学生ロボコン」出場者目線で述べたいと思います。

 

本書の魅力

この本の最も大きな魅力は高専ロボコン出場までの舞台裏を感じることができるという点だと思います。大会会場やテレビ放送で目にするロボットがどのように開発されてきたのか、その経緯を深く感じられます。読んでいる最中にはそのチームの雰囲気が伝わってくるほど鮮明に描かれているので、その挫折や喜びを共に感じることさえできるでしょう。例えば小山高専の吸盤でブロックを吸い上げる機構や「新大陸」にブロックを飛ばす機構などは、当初期待通りの性能が出ず微調整を重ねていたということが書かれていました。その機構が本番上手く機能したときの喜びはとても大きなものだったと思います。
私にも経験はありますが、上手くいくと思って設計していた箇所がなかなか思い通りに機能せず長期間行き詰ってしまうこともあります。しかし更に設計変更や改良を重ね、やっとの思いで上手くいった時はとても大きな喜び、楽しさを感じます。小山高専のそれも似たような想いだったのではないでしょうか。

 

短い製作期間でのロボット作り

高専ロボコンの舞台裏を読み、ルール発表から大会までの期間の差を強く感じました。
通常、学生ロボコンではロボットの製作期間が1年程あります。対して高専ロボコンはたった半年ほど。この本にはアイデア出しから様々な苦労を乗り越えて出場に至るまでの高専ロボコニストのドラマが細かく描かれており、半年という短期間でロボットを仕上げる、その活動には参考になることも多々ありました。

例えば予定通りに製作が終わらないと見込まれた場合には、設計を当初のアイデアから大幅変更し時間を短縮するという対処方法。私が関わってきたロボコン活動の中では、そこまで大きな変更を経験してきませんでした。しかし本書に登場したチームでは直前期にも関わらず、機構の動力を変更したりそもそもロボットの台数までも変更するなど驚くような内容もありました。具体的な例を引用すると、産技高専荒川では重量制限や製作期間の問題で2台作る予定だったロボットを1台に変更していました。このような変更には悔しさも伴うかと思いますが、時には大会出場のために目標としていたアイデアを諦め、より製作期間の短いコンセプトに変更する決断も大切だと感じました。

学生ロボコンではルール発表から約半年後に第一次ビデオ審査があります。しかしここでのロボットは、理想の状態から程遠いことも多いです。学生ロボコンでのこのような製作経験をしている私からすると、半年間でアイデアを形にし、大会に出場する高専ロボコン出場者に尊敬をも覚えました。

 

技術継承の大切さ

本書から改めて感じたことの一つに「技術継承の重要性」が挙げられます。
強豪校と呼ばれる高専には、やはりそれなりの理由があります。それは先輩から後輩への技術、そして想いの継承です。
これは学生ロボコンにも共通することだと思いますが、強い学校はチームのメンバーが変わっても強いです。この本では色々な高専での引き継ぎや技術開発についても知ることができます。
強いチームがなぜ強いか、その理由を感じることができるような内容でした。

 
他にもコラムの「ロボコン誕生秘話」や付録の「ロボコン年鑑」なども興味深い内容が多く、ロボコン好きであれば誰もが楽しめると思います。

ロボコンは今年で30周年を迎えました。本書は、これからのロボコンの進化がますます楽しみになる、そんな一冊だと思います。
ロボコンに興味がある人もそうでない人も、ぜひ一読してみてはいかがでしょうか。これからの高専ロボコンを見る目がきっと変わってくることと思います。

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いかがでしたでしょうか?
高専ロボコン2017の当日が楽しみですね。
デバプラでは本の著者、萱原氏ともコラボして高専ロボコン2017を熱くレポートしていきます!
乞うご期待!!

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高専ロボコン2018解剖計画