スイッチングレギュレータを使ってみよう!DCDCコンバータを自分で設計する

スイッチングレギュレータを使うと、回路の発熱を大きく押さえて省エネにも繋がり、放熱器も小さくて済むので、回路のコンパクト化と低発熱な電源回路を作ることができます。

 

目次

 

スイッチングレギュレータでDCDCコンバータを作る

スイッチングレギュレータICとは、ある直流電圧から目的の電圧値を得る電源ICで、スイッチング方式のDCDCコンバータの制御に使用します。
高い電圧から目的の電圧(降圧)を作る方法にはツェナーダイオードや三端子レギュレータなどを使う回路もありますが、数Aもの大きな電流が必要な場合にはスイッチングレギュレータで降圧を行います。

 

思ったより使いやすい、スイッチングレギュレータIC

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今回使うスイッチングレギュレータIC ROHM BD9E301。SOP8パッケージで表面実装用だが、これくらいなら変換基板を使ってユニバーサル基板にも使用できる。

 

スイッチングレギュレータの良い所

電源回路にスイッチングレギュレータを使用する利点こそ「効率の良さ」です。
スイッチングレギュレータを使うにはいくつかの外付け部品が必要になります。三端子レギュレータのようにICとコンデンサだけでは動かないので、このあたりが少し取っつきにくい印象を与えているのかもしれません。

スイッチング方式の動作原理を知っている方は「発振器やコイルとか色々付けなきゃいけないんでしょ?」と先入観で嫌気してしまいますが、最近のスイッチングICはほとんどの機能がICの中に内蔵されているので、外付けの部品も少なく回路設計の手間も楽になっています。

電圧を下げる降圧回路の方式には色々な方式がありますが、スイッチングレギュレータを使う方式では80%~95%と高い変換効率が実現できます。ほかの方式では三端子レギュレータを使う方式などもありますが、効率は50%以下になることも多く無駄に消費電力が多くなって発熱量も膨大になってしまいます。
降圧回路に大きな負荷を接続する場合は、スイッチングレギュレータを使うことで発熱の少ない省エネな回路を作ることができます。

参考リンク:スイッチングレギュレータ|エレクトロニクス豆知識

 

DCDCコンバータ回路を作ってみる

早速スイッチングレギュレータICを使ってDCDCコンバータを作ってみます。

今回は12V電源の入力から5V/2Aを出力できるDCDCコンバータにします。この出力仕様ならUSB機器を動かすこともできるので、自作のデバイスにUSB充電器の機能を持たせるなんてこともできます。

スイッチングレギュレータICにはROHMのBD9E301を使用しています。このICはFETを内蔵しているので最大2.5Aの出力に対応し、広い入力電圧範囲(7~36V)と外付けの抵抗で出力電圧を自由に調整できる機能を搭載しています。

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BD9E301のデータシート。スイッチングレギュレータのデータシートには回路設計例が記載されているのでこれを参考に回路を作る。
出典:7.0V~36V 入力、2.5A MOSFET 内蔵 1ch 同期整流降圧 DC/DC コンバータ – BD9E301EFJ-LB(E2) | ローム株式会社

スイッチングレギュレータのデータシートは、基本的な仕様のほかに回路設計例やパターンの配置例なども記載されているので、データシートを参考にしながら回路を作っていきます

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スイッチングレギュレータICを変換基板に乗せてユニバーサル基板に実装したところ

 

BD9E301は表面実装のICなので、ユニバーサル基板用に変換基板を使用しています。変換基板を使うと放熱量が不足して動作不良の原因になる場合があるので、変換基板を使うときは電流量と発熱に注意します。

データシートのアプリケーション回路を見ながら電子部品を基板にはんだ付けしていきます。出力電圧はR1とR2の分圧抵抗の比率で決まるので、R1を12kΩ・R2を3kΩにして、ほかの部品はデータシートと同じ部品を使います。

スイッチング電源は高い周波数でON/OFFを繰り返す回路なので、部品同士は配線距離が長くならないように極力IC近くに実装していきます。ある意味スイッチングレギュレータで気を使うのは配置だったりします。
基本的なレイアウトの解説が乗っているので、部品の配置も参考にしながら回路を作っていきます。

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完成したDCDCコンバータの裏面。表面にDIP部品・はんだ面に表面実装のコイルを実装している。実装する部品は少なく、抵抗とコンデンサ数本・コイル1つでスイッチングレギュレータを使ったDCDCコンバータを作れる。

 

完成した回路に12Vを投入すると5Vが出力されます。フィードバックによって出力電圧が保たれるので、外部電圧が変動しても常に5Vが出力されています。このスイッチングレギュレータICは電源電圧×0.7Vまで出力できるので理論上7.2Vまで電圧が降下しても動作します。

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5V/2Aの電源回路を作ったので、出力部にUSB端子を装着してUSBデバイスへ給電出来るようにしてみましょう。

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自作した5V DCDCコンバータにUSB端子を付ければUSBデバイスも充電できる。写真はiPadを充電している。発熱は意外と少なく安定して充電できた。

 

こんな感じで、スイッチングICでも簡単に5V出力電源回路を作ることができます。回路を作ったときには付加機能としてUSB充電機能を追加するのも面白いかもしれません。

スイッチング電源を実際に製品化する時には、PCBレイアウトやEMI(電磁妨害)規制への適合など、この後にも色々と手間はありますが、回路設計自体はスイッチングレギュレータICを使えば簡単に作れることが分かればと思います。

 

3端子レギュレータとスイッチングICの使い分け

ここまで紹介した通り、最近のスイッチングICは外付け部品も少なく回路設計も資料が豊富なので、スイッチング方式の降圧回路を簡単に搭載することができます。

実際の電源回路の設計ではスイッチングレギュレータと三端子レギュレータのどちらを使えば良いのか悩んでしまう場合もあります。

スイッチングレギュレータは効率の高さが魅力ですが、回路の用途によってはそのメリットがあまり生かせない場合もあります。例えば、マイコンと数点のLEDしか使わず電流が数十mAの回路では効率が上がったとしても実用的なメリットは無くなってしまいます。

また、スイッチング方式の電源は負荷電流が少なくなるほど効率が下がり、逆に三端子レギュレータの方が効率が良かったり、部品点数の多さやノイズ・リップルといった欠点が目立ってしまいます。そのような場合なら三端子レギュレータを使った方がトータルコストとしてメリットが大きくなります。

一概に「スイッチングレギュレータの方が高効率だから良い!」と決めつけるのではなく、消費電力や回路サイズの事情なども加味して適切な方式を選択することが大切です。

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スイッチングレギュレータとリニアレギュレータの違い。どちらのレギュレータにも利点・欠点があり、採用する方式は適材適所で選ぶ必要がある。三端子レギュレータはリニアレギュレータに分類される。
出典:長所と短所、リニアレギュレータとの比較|Tech Web

 

まとめ

スイッチングレギュレータと聞くと「作るのが難しい」イメージが先行してしまいますが、実際に使ってみると思ったほど設計の手間も掛からず、わずかな手間で高効率な電源回路を作ることができます。
スイッチングレギュレータを気軽に使えるようになると、降圧以外にも昇圧・反転・昇降圧など、回路の電圧を自由自在に操作できるようになり回路設計の幅も広がります。

スイッチング電源の設計で本当に難しいのは、どのように部品を配置するのかを決めるパターンレイアウトだったり各国規制に適合させるEMI対策だったりするわけですが、試しに動かしてみるくらいならすぐに作れるようになっているので、電子工作でもスイッチングレギュレータを使うのは十分選択肢に入ります。

今回は表面実装タイプのスイッチングレギュレータICを使用しましたが、ユニバーサル基板に使用できるDIP形状のICやコイルを内蔵したスイッチングレギュレータなどもあるので、スイッチングICは電子工作でも使いやすくなっています。また最新の製品では内蔵のFETで7~8Aもの電流を出力できるタイプもあります。

3端子レギュレータと大型の放熱器で電源回路を作っている方やDCDCコンバータモジュールを繋げてガジェットを作っている方などは、一度スイッチングレギュレータICの回路設計に挑戦してみてはいかがでしょうか。

電子工作マニュアル Vol.5
Device Plus 編集部

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