ここが分かると面白くなる!エレクトロニクスの豆知識

第3回:はじめての抵抗器

第1回:はじめてのトランジスタ
第2回:はじめてのモータドライバ

 

エレクトロニクスに関する基礎知識やさまざまな豆知識を紹介する本シリーズ。今さらに人に聞けない、でも自信を持って理解しているかは怪しい、そんな方にぜひ参考にして頂くべく、基本的な内容から応用につながる部分まで、幅広く紹介していきたいと思います。

第3回では「抵抗器」について解説します。LEDなどを配線するときに「LEDには抵抗器を直列につなぎます」といった具合に、何のために使われているかわからないけど、“おまじない”のようにとりあえず抵抗器はつけるものなのだと認識している方もいらっしゃると思います。

今回の記事では、抵抗器の種類やカラーコードの見方など、抵抗器の基礎となる内容について紹介していきます。

 

目次

  1. 抵抗器とは
  2. オームの法則
  3. 抵抗器の種類
  4. カラーコード表示の読み方(リードタイプ)
  5. 数字表示の読み方(面実装タイプ)
  6. まとめ

 

1. 抵抗器とは

「抵抗器」は、回路に接続することで電流の大きさなどを調整する電気回路用部品のことで、単に「抵抗」と呼ばれることも多いです。用途としては、回路における電流の制限・電圧の分圧・フィルタ回路の周波数特性の設定などに用いられます。

一般的な抵抗器には2つの電極がついており、電池などの電源と接続することによって電流が流れます。

tidbits-of-electronics-03-01

電子工作でよく使われる「炭素皮膜抵抗」

 

回路図記号は下図(右)のように長方形の両端に計2つの端子がついている記号で表されます。ただし、JIS規格の新旧で抵抗器の回路図記号は変更されているため、インターネット上や書籍などでは下図(左)のようにギザギザの線で表される旧JISも混じっている場合があります。どちらも回路図上では同じ意味で使われている記号です。

tidbits-of-electronics-03-02

旧JIS規格の抵抗器(左)と新JIS規格の抵抗器(右)

 

2. オームの法則

中学・高校の理科や物理でも登場したことを覚えている方もいらっしゃると思います。「オームの法則」は抵抗器について考える上で欠かせないものです。考え方はとても簡単で、以下の式のように電圧・電流・抵抗の大きさが比例・反比例の関係を持っているというものです。

tidbits-of-electronics-03-03-2

オームの法則による電圧・電流・抵抗の関係

 

中学校の理科の問題では、抵抗は1~10[Ω](オーム)程度の抵抗値を取り扱うことが(計算が複雑にならない問題づくりを考慮するため)多いですが、実際の電子工作では、抵抗値は100[Ω]~100[kΩ]の範囲を取り扱うことが多く、それよりも小さいまたは大きい値は比較的使用頻度が低めです。

 

3. 抵抗器の種類

一言で抵抗器といっても、用途によって特性が異なる抵抗器を使い分けることがあります。一般利用に向いている安価なもの、大電力を許容できるもの、抵抗値の精度が高いものなど、用途別に抵抗器の種類をご紹介します。

最もよく使う「炭素皮膜抵抗」

電子工作で回路を作るときに最もよく使われるのがこの炭素皮膜抵抗(カーボン抵抗)です。抵抗器(または抵抗)と言ったときにはこれを指すことが多く、価格の安さと手頃な大きさであることが特徴です。
抵抗器は種類によって定格電力(消費ワット数の上限)が決められていますが、炭素皮膜抵抗は1/4W(0.25W)やその前後あたりの値が定格となっています。一般的なLEDの電流制限用抵抗や、マイコン周辺の回路などでは特に指定がない限りはこの炭素皮膜抵抗を使います。

抵抗値は炭素皮膜抵抗の表面にプリントされている色がついた帯によって読み取ることができ、この色がついた帯のことを「カラーコード」と呼びます。カラーコードの読み方については後述します。

tidbits-of-electronics-03-04

炭素皮膜抵抗は4本のカラーコードで抵抗値をあらわす

 

オーディオアンプでは高精度な「金属皮膜抵抗」

抵抗器は回路図や計算式上では、決められた抵抗値(ピッタリの値)が取り扱われますが、実際の製品となる抵抗器はその値に誤差を持ちます。例えば100Ωの炭素皮膜抵抗の場合は一般的に誤差が±5%以内となっているため、実際の値は95Ωから105Ωの範囲内の値となります。LEDの電流制限用抵抗であれば精度を必要としないためこれくらいの誤差は問題ないですが、オーディオアンプなどの電流値や増幅率が繊細な回路ではこの誤差が大きな問題になる場合があります。こんなときに使われるのが「金属皮膜抵抗」です。

炭素皮膜抵抗は誤差±5%であった一方、金属皮膜抵抗は誤差±1%となっており、100Ωの金属皮膜抵抗の場合は実際の値が99Ωから101Ωの範囲内となりますので、炭素皮膜抵抗よりも精度が高いことがわかります。さらに高精度なものは±0.1%や±0.05%といったものもあります。

また、金属皮膜抵抗は温度変化による抵抗値の変化や、経年変化が小さいという特徴もあるため、総合的に抵抗値の精度の高さと安定性がオーディオアンプなどの精度を必要とする回路に使われる要因となっています。

tidbits-of-electronics-03-05

金属皮膜抵抗はカラーコードの本数が5本(または6本)となっている

 

電流測定などに使う「シャント抵抗」

抵抗器は電流計測にも使われます。オームの法則より、電流と電圧が比例関係にあることから、抵抗に加わる電圧を測定することで(抵抗値を積算すると)電流値を算出できます。
モータ駆動回路やバッテリ保護回路など、大電流を扱う回路は回路素子が過電流によって壊れることを避けたいので、過電流が流れそうになったら安全に停止する機能を搭載します。それら機能の中で、電流を検出するために組み込んでいる抵抗器を総称して「シャント抵抗」と呼びます。

「シャント抵抗」という呼び方は、製品名をさす場合もあれば、電流検出という機能や役割をさす場合もあります。そのため、セメント抵抗やメタルクラッド抵抗といった種類の抵抗器をシャント抵抗(という機能)として使うこともあります。シャント抵抗として用いる抵抗器は、100μΩ(マイクロオーム)から数100mΩ(ミリオーム)あたりのとても小さな抵抗値となります。

シャント抵抗については下記の記事でも詳しく解説しています。

シャント抵抗で回路の電流を測定する方法

tidbits-of-electronics-03-06

セメント抵抗(写真下)とメタルクラッド抵抗(写真上)

 

tidbits-of-electronics-03-07

上から順に、チップ抵抗、炭素皮膜抵抗、金属皮膜抵抗、セメント抵抗、メタルクラッド抵抗

 

4. カラーコード表示の読み方(リードタイプ)

抵抗器はそれぞれ決められた抵抗値をもっていますが、同じ形の抵抗器でも抵抗値を判別できるよう、リードタイプ(抵抗の足がリード線の形状になっているもの)の抵抗器では、「カラーコード」と呼ばれる色がついた帯によって抵抗値が示されます。

炭素皮膜抵抗の場合、下図のように4本のカラーコードによって抵抗値が示されます。

tidbits-of-electronics-03-08

炭素皮膜抵抗(カーボン抵抗)のカラーコード早見表

 

カラーコードの1番目は第1数字、2番目は第2数字、3番目は乗数、4番目は誤差を表します。第1数字・第2数字は抵抗値の最初の2桁を表し、その数値に乗数を掛け算したものがその抵抗器の抵抗値となります。

誤差は、表示されている抵抗値に対する実際の値の誤差範囲を示します。炭素皮膜抵抗の場合、多くは±5%で金色のカラーコードで示されています。

例として、「黄・紫・橙・金」の4色の炭素皮膜抵抗の場合、「黄→4、紫→7、橙→×1k、金→±5%」となり、「47kΩ(±5%)」であることがカラーコードから読み取ることができます。

また、金属皮膜抵抗の場合、下図のように5本のカラーコード(6本の場合もある)によって抵抗値が示されます。カラーコードの1番目は第1数字、2番目は第2数字、3番目は第3数字、4番目は乗数、5番目は誤差を表します。

tidbits-of-electronics-03-09

金属皮膜抵抗のカラーコード早見表

 

5. 数字表示の読み方(面実装タイプ)

抵抗器の形にはリードタイプのほかに「面実装タイプ」というものもあります。面実装タイプは直方体の形状をしており、プリント基板などの表面に実装するときに使います。リードタイプよりも小さいサイズに収まっているため、基板上に高密度に部品を配置したいときや基板を量産するときに活躍します。面実装タイプの抵抗は特に「チップ抵抗」などのような呼び方もあります。

面実装タイプの抵抗器は、下図のように表面に印字されている3桁の数字(4桁の場合もある)で抵抗値が示されます。上位の桁から数えて1桁目が第1数字、2桁目が第2数字、3桁目が乗数を表します。考え方はリードタイプと同じで、第1数字・第2数字は抵抗値の最初の2桁を表し、その数値に乗数を掛け算したものがその抵抗器の抵抗値となります。

tidbits-of-electronics-03-10

面実装タイプ抵抗器の数字表示の読み方

 

6. まとめ

今回は抵抗器の種類やカラーコード・数字表示の読み方を学びました。抵抗器はLEDの電流制限用抵抗、プルアップ・プルダウン抵抗などをはじめ、あらゆる場所で使われます。回路図や配線図を見たときに抵抗が入っていたら、何のために使われている抵抗なのかを考えてみると面白い発見があるかもしれません。

 

 

今回の連載の流れ

第1回:はじめてのトランジスタ
第2回:はじめてのモータドライバ
第3回:はじめての抵抗器(今回)
第4回:論理回路の基礎
第5回:テスターの使い方

※ROHM「エレクトロニクス豆知識」の「抵抗器」はこちらから!

mamechisiki_bnr

 

アバター画像

1991年、福岡県北九州市生まれ。九州工業大学大学院を卒業後、電子工作キットの開発、ロボット競技会の運営、デジタルアート作品の制作などを手掛けてきた。現在はデジタルものづくりコミュニティ『薬院Make部』を運営し、福岡県福岡市内でものづくり活動にも取り組んでいる。ロボット競技会・作品コンテストに多数参加。代表作は『論文まもるくん』『アトゴフンダケ』など。

電子工作マニュアル Vol.3