インタビュー

2〜3台の気圧センサとマイコンで作れる家庭用簡易防犯システム〜ROHC2018 優秀作品インタービューVol.4〜

ROHM OPEN HACK CHALLENGE(ROHC)」 は、ローム製のセンサやマイコンボードを駆使してプロトタイプ作品を募集するコンテスト。2018年は6月から8月にかけて作品を募集し、優秀作品は、賞金がもらえると同時にCEATEC JAPANのロームブースにて展示。来場した多くの方に作品が紹介されました。

そのROHC2018で最優秀賞の一つを獲得したチーム「めごまこ」に、受賞作品となった「winOpen: 気圧利用防犯センサ」に対してのこだわりや、開発時に苦労した点などを伺ってみました。
「winOpen: 気圧利用防犯センサ」は、屋内外の気圧差、波形相関(時系列信号の相関)を利用し、窓開けを検出する防犯装置です。

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──どんなチームでこの作品を作ったのですか?
家族とか友人のゆるいネットワークです。実際に企画・開発したのは自分一人でしたが、家での検証は家族に手伝ってもらいました。友人には、実際にこの仕組で作ってもらって友人宅で試してもらい、「確かに簡単に作れるね」というところも含めて検証してもらいました。

──普段はどんなことをされているのでしょうか?
現在の職業は子供向けおもちゃの電子回路の設計です。以前は研究所の仕事や、大学の研究員の仕事をしていました。

──大学ではどんなことを研究されていたのですか?
計測系の研究です。視覚とかディスプレイとか錯覚とか。例えば、同じ長さの線があるけれど、矢印の方向で長さが違って見える錯覚ってありますよね?そういったものを研究していました。
研究をする中で、目で見ると「A」だけれど、本当は「B」だというものがたくさんあると思っていました。そして、センサを使うと数値になり、客観的に見えるので、いろいろなものが見えてくるなと、日頃から興味を持っていました。

──今回の作品はその際の研究とつながっているのですか?
今回の作品は、屋内ナビゲーションの研究がきっかけだったりします。家のいたるところに気圧センサをおくと、場所によって「気圧の波形」が違うことがわかります。その中で気圧センサをもって人が歩き、家のどの位置の「気圧の波形」と類似しているのか?を測定すると、その人が家の中のどこにいるのか推定できそうだという研究をしていました
また、センサとか身の回りのものが好きで、いろいろと作ったりもしています。

空気のこだわりから生まれた気圧利用防犯装置

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──今回ROHCで賞を獲得した作品について詳しく教えてください。
屋内外の気圧差、波形相関を利用し、窓開けを検出する防犯装置です。
従来、家庭用防犯システムというと、ドアや窓毎にセンサを付け、制御装置などを設置し、その間の配線も必要な大がかりのものでした。今回はそれを簡易化して、屋内、屋外に数個の気圧センサユニットを置くだけで家の窓やドアなどが開いていないか検出が可能な手法を考案しました。
取付も簡単なので、自分だけで設置できるシステムです。2~3台の気圧センサとマイコンがあれば作ることができます。

──具体的にはどんな仕組みなのでしょうか
気圧センサを屋内屋外の数カ所に置くことで、気圧変動の相関を取得し、防犯センサとしての役割を果たせると考えました。
最近の家屋は気密性が高く、24時間換気も一般的になっており、屋内と屋外は常時気圧差が生じています。その状態で家庭内のどこかの窓やドアが開くと、気密が崩れ気圧差がなくなります。また、気圧変動も屋内、屋外とも同じようになるため、両波形の相関が高くなります。これらの理由から、窓が開いたと認識することができます。
つまり、機密性が高く、部屋数も少ないマンションの個人所有部分であれば、センサを屋内、屋外に1つずつ置くだけで、マンションの個人所有部分のどこの窓が開いても、開いたことを検出できる可能性があるということです。
また、一戸建てにおいても、24時間換気が入っていて、屋内に結露がおこりにくい新しめの建物であれば、動作すると考えられます。

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──なぜこの作品を作ろうと思いついたのでしょうか?
一般的に、空気とは「軽い」の代名詞です。しかし、研究所で仕事していた頃、空気の「重さ」をとてもよく感じていました。人は水換算で10mの水深の所に住んでいるのと同じ圧力を常に受けている訳です。そのことをよく考えてみると、いろいろなものが異なって見えるようになりました。
開けると風が吹いているビルのドア、開けるのに力が必要なドア、これらを見ていると、この力をなにかに使えないか考えるようになりました。その一つとして、空気を使った防犯システムを思いつきました。これなら、大がかりな装置を付けること無く、家屋の窓があいているか測定することができると考えたわけです。

──「人は水換算で10mの水深のところに住んでいるのと同じ」とは?
真空から考えると、今生活しているこの世界は大気の1気圧と一緒です。ただ、真空から…と言われても実感がないと思います。なので、水中を10mもぐると1気圧あがるので、水の中で例えてみました。

──どんな点にこだわりましたか?
計測する気圧差がとても小さいので、何度も平均化処理をおこない、多数のデータを記録しその変化の様子を観察して、このシステムを作っていきました。そのため、pythonのinteractiveな環境であるJupyter Notebookというソフトを使ってみました。これはとても使いやすく、実験内容を可視化できたので、とても役に立ちました。

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──今後の展開について
気圧センサのキャリブレーションをしっかりおこない、より長期間安定して動作するシステムを作っていきたいと思っています。

ROHCに参加してみて

──ロームのどのデバイスを利用しましたか?
安価な割に高精度であるため、センサメダルを使用しました。
※センサメダルとは、加速度、気圧、地磁気、照度、磁気、温湿度の計6種のセンサを搭載した基板。今回開発に仕様したセンサメダルはすでに販売を終了していますが、後継機種(SensorMedal-EVK-002)が展開されています。

──ロームデバイスの特徴や今後使用される方にとって有益な情報があれば教えてください
デバイスの特徴としては温度によって値がとてもよく変化するので、温度補正は正しく行う必要があります。ドリフトや個体差がとても大きいので、それらをキャンセルすることが大事であること感じました。

──ROHCに参加したきっかけを教えてください
センサを中心に使って面白いシステムを作るにはどうしたら良いか思案してました。ROHCは一次審査を通過すると、デバイス提供とエンジニアによる開発サポートがあると聞き興味を持ちました。その中で、センサメダルを知り、良い題材が自分の中にあったので、作ってみようと思い立ちました。

──来年以降、ROHCに参加する方にメッセージをお願いします
日常的に変化するものは身の回りにとてもたくさんあります。しかし、計測できないとわかりません。センサを使ってそれを見えるようにして、いろいろ便利なモノを実現できると面白いと思います。

鈴木まなみ

2 歩先の未来について考える「TheWave湯川塾」の事務局や、オープンイノベーションを促進する日本最大級の開発コンテストである「MashupAwards」を運営する一般社団法人MAの理事などでコミュニティ運営を行いながら、最新のサービス動向や技術に接している。 また、シビックテックメディア「CivicWave」の主宰者でもあり、本の執筆やブログなど、ライターの仕事も行っている。

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