「賢くなるパズル」の考案者が語る、エンジニアが型破りな発想をするためのヒント

fig1

※この記事はDevicePlus.com(英語版)のこの記事を日本語訳したものです。

エンジニアリングの分野で持てるスキルの中で特に大切なスキルのひとつは、進歩的で型破りな発想のできることです。すでに多くのイノベーションが世に出回っている現代において、まったく新しいアイディアを次々に絞り出すのは大変なことです。では、進歩的な考え方をするためには必要なものと成功を収めるにふさわしい物の見方とは何なのでしょうか。どうすればイノベーションの成功者になれるのでしょうか。 

「賢くなるパズル」の考案者である算数教室主宰・宮本哲也先生がDevicePlus(デバプラ)のインタビューでご自身なりの考えを披露してくれました。「賢くなるパズル」とは、計算力、思考力、粘り強さを鍛えるパズルのこと。ニューヨークタイムズ紙にもKenKenという名前で連載されています。「賢くなるパズル」は、元々は小学生が足し算、引き算、掛け算、割り算の練習をするための楽しい算数パズルとして考案されたものです。目的は、創造性をはぐくむこと、論理的思考力・問題解決能力を向上させることにあります。2008年に発表するや、またたく間に大成功を収め、以来、世界中に広まりました。今では、あらゆる年齢層を対象とした脳トレとして世界でもトップクラスのひとつであると見なされ、世界中で200あまりの出版物に掲載されています。

fig2

イノベーションへの情熱を語る宮本哲也先生(「賢くなるパズル」の考案者)

賢くなるパズルとは

「賢くなるパズル」は子どもの想像力を解き放つために作ったものです。最初のヒントになったのは、数字を使ったクロスパズルの「カックロ」です。カックロは足し算だけで解きます。仕切られた空のマス目に1から9の数字を入れて、縦方向の合計を空マスの一番上に示された数字に一致させ、横方向の合計を空マスの一番左に示された数字に一致させるというパズルです。

小学3年生向けの算数教材を用意するよう依頼されたとき、子どもが夢中になって楽しめるようなものが作りたくなりました。そして、足し算だけでなく四則演算すべての練習ができる教材にしたかった。

こうして「賢くなるパズル」が誕生しました。最初の「賢くなるパズル」は5行×5列のパズルでした。今ではサイズも難易度もたくさんありますので、大人も高齢者も、だれでも挑戦できます。

 

DP: エンジニアリングとは、要は問題を見つけて解くことです。同じことが数学にもいえます。問題を解くということは、先生にとってどのような意味があるのでしょうか?

数学で一番大切なことは計算である、という人もいます。公式を覚え、計算して問題を解くということです。しかし、私の考えでは、計算だけに留まらないたくさんのことがあります。さまざまな問題に取り組み、何とかして自分の力で解法を導き出す、そのプロセスこそが、どんな問題であれ、解決することを楽しくし、解決することを意味あるものにしているのだと私は思います。だから私は、パズルを解く生徒に決して手を貸しません。貴重な学びの経験を奪いたくないからです。

私にとって、問題を解くということは単に計算して答を出すことではありませんし、数学は単に問題を解くことではありません。ほかでは得られないやりがいのある経験をもたらすのは、考えるというプロセスであり、問題を解いている最中に生まれる学びです。そしてこのことは、人生にも当てはまるという意味で大変重要です。人生は登山に似ています。目的は山頂に到達することです。困難の待ち受けていることもありますが、進み続けること、自分自身に挑戦し続けることが必要です。これは時に苦しみです。しかし、山頂にたどり着いたときに感じる最大の喜びはこの苦しみであると断言します。

問題が解けたときのことを、私は「アルキメデス的瞬間」と呼んでいます。ギリシャの数学者であり工学者であったアルキメデスは、浮力を発見したとき、うれしさのあまり裸のまま走り回ったといいます。私なら、裸で走り回るようなまねはしませんが、問題の解けた瞬間を大事にし、その余韻に浸ります。

 

進歩的に考える方法とは

DP: 型破りな発想をするためのコツはありますか?

型破りな発想をするためのコツはありません。型破りな発想とは、他人の持っているのと同じ情報を別の角度から見ることです。アドバイスをするとすれば、考え続けることです。

たとえば何か問題を解決するとしましょう。算数でも生活に関する問題でも構いません。頭を柔らかくし、解法がひとつ見つかったからといってそこで手を休めてはいけません。さまざまな可能性、解決方法を検討してください。

ハードルはどんどん高くしてください。そして、考え続けること、自分に挑戦し続けることです。これが、型破りな発想をするうえで欠かせないことです。

 

DP: エンジニアリングに失敗はつきものです。新しいことを始めようとするときには、思いどおりに進まないリスクが常に存在します。失敗することへのおそれに打ち克つためのアドバイスはありますか?

失敗をおそれてはいけません。失敗を受け止め、失敗を尊重してください。失敗はいつでも、ためになる経験です。失敗は、エンジニアリングでも数学でも、よく理解していないことが原因で起きるのが常です。しかし、その失敗がなければ思いつきもしなかったような素晴らしい成果や製品をもたらしてくれることも、しばしばあります。

大事なことは、エンジニアリングでも数学でも、そして人生においても、失敗するリスクを完全に排除することはほぼ不可能であるということです。われわれにできる精一杯のことは、リスクの存在をある程度は受け止めて、そのリスクを極力小さくする努力をして前へ進むことです。

 

DP: にっちもさっちも行かなくなったときや、お手上げになったときは、どうすればよいのでしょうか?

実は、時にはあきらめて放っておくことも大切です。もう二度とその問題に取り組むなと言っているのではありません。生きていればおそらく、同じ問題、似たような問題に遭遇することがあるでしょう。一度にできることは限られているのですから、今はまだできなくても仕方ありません。大切なのは、そういう状況と自分とを受け止めることです。

私からのアドバイスは、その問題について考えるのをやめて眠ることです。眠っている間に面白いことが起きます。パズル作りでは、行き詰まることが何度もあります。そんなときは、あきらめて、ソファーに身を横たえて眠ってしまいます。そうして目覚めてみると、解決方法が頭に浮かんでいるのです。今はまだ解決できないことに悩まないでください。少し睡眠を取れば、目覚めたときには答が見つかっているでしょう。

 

DP: どうして先生は自分自身に挑戦し続けることができるのですか?

「したくないことリスト」というものを作って、その中から、絶対にしたくないことをひとつ選びます。それから、期限を決めて、やり遂げます。これが、自分自身に挑戦し続けること、自分の限界を押し広げることの自分なりのやり方です。挑戦しなければ楽しくありません。目標を達成し、夢を実現したいのなら、したくないことは避けて通れません。自分に挑戦することは、次のレベルへと進むために欠かせないことです。

もがき苦しみながら学ぶとき、挑戦は人を強い人間にしてくれます。私の最終的な目標は、成功者になることではなく、むしろ、自分自身に挑戦し続けること、学ぶこと、そして成長することです。これまで180冊あまりの本を書いてきましたが、前進はやめません。自分の能力を引き伸ばしてくれること、成長させてくれることに常に励んでいます。

fig3

「もっと上を目指せ、自分に挑戦し続けろ」

DP: 先生の次の目標は何ですか? 「賢くなるパズル」の次は何を考えていますか?

チェスの対局のように「賢くなるパズル」で対戦できるオンラインプラットフォームを作ることに興味があります。プレイヤー1人1人が自分のパズルを持ち寄って、それを互いに示し合って、生で対戦できるというものです。すごく面白いものになりますよ。

「賢くなるパズル」は現在、鬱病治療の一環として日本の病院のひとつで使われています。憂鬱な思考から気を紛らせるとともに自信と自尊心とを高めることで、鬱の症状が緩和できるんです。鬱病治療として「賢くなるパズル」がどれほど有効なのか、その研究にもっと貢献したいと考えています。

 

DP: 近年の技術的発展には目をみはるものがあります。そのことは、DevicePlus(英語版)のプロジェクトを見ればわかります。テクノロジーの進化については、どうお考えですか?

テクノロジーがいろいろな面で人の生活を良くしてくれたことは間違いありません。変わり続けるニーズに応えようとして編み出される新たなテクノロジーには本当に興奮します。しかし、昔も今も、人にしか生み出せないことがあります。たとえばモーツアルトの楽曲やシェイクスピアの戯曲、ソネットなどです。そうした作品の価値を認めること、人のそうした側面を失わないでいる努力をすることが必要です。

 

エンジニアへのアドバイス

DP: インスピレーションを積極的に求めるとともに次の大いなる変化を生み出そうとしている意欲的な起業技術者とスタートアップファウンダーに対して、成功した発明者としてのアドバイスはありますか?

できる限り視野を広く持つことです。そうして、心を突き動かされることを見つけ、人生で本当に成し遂げたいことについてじっくり考え抜くことです。「人生で成し遂げようとしていることは何か」を自問し続けてください。私は、見たこと、経験したことについて、多くの疑問をいつも自分に問うています。何かを成し遂げようとするなら、その前に自分自身のことをもっとよく知る機会を得ることがどうしても必要です。

人生には、一見大変な無駄に見えても、実は大切であり、無駄ではないことがたくさんあります。逆に、重要に見えていても、それほど重要でないこともたくさんあります。大切なことは、本当に自分の興味を引くことと、ときめきを感じられることとに集中することです。自分の興味をかき立てることを経験したら毎回それを書き留めておくことをお勧めします。

人生で成し遂げたいことが見つかったら、設定した目標を達成するための計画を立てることもすごく大切です。継続は成功の鍵です。自分の可能性を最大限に引き出してくれる努力目標を定めてください。一度言いましたが、もう一度言います。自分への挑戦を続け、成長の機会を探し続けてください。

 

「賢くなるパズル」を解いてみたくなりましたか?

fig4

宮本算数教室のマンハッタン教室の黒板に書かれた6行6列の「賢くなるパズル」

パズルとその説明については以下URLへアクセスしてください。

http://www.kenkenpuzzle.com/(英語版)

Yulhane-Jerez Koh

生物力学大好きエンジニア。はまっている分野は、生体模倣ロボティクス、機械学習、神経科学等。

電子工作マニュアル Vol.5