決勝の前に、デモ。2017年には高専ロボコンが30年を迎えるということで、さまざまな企画が用意されているようだ。
その1は、誰でも参加できるロボコン。ロボットで「ROBOCON 30th」を描くことが課題。
その2。なんとあの『鉄腕アトム』がスペシャルアニメになる旨。アトムが誕生するまでのストーリーとのことだ。
その3。ニコニコ動画とのコラボが決定。超会議2017にロボコンが参戦。……おっとキタコレ。しかし何をするのかは未発表。
勢いか、確実性か? 決勝 香川高松vs大分高専
2016年、高専ロボコン最後の試合。香川高松と大分は、いずれも240cmの記録。ワイルドカードから勝ち上がり、徐々に記録を伸ばす大分。一方、これまで盤石の試合運びをしてきた香川高松。……とここまで書いたところで、閣下が同じコメントをされていたので、自粛。
両校の機体が搬入される。少しインターバルが長かったが、大分のロボットの「修理」という風の噂も聞こえてきた。準決勝で砦が崩れた時、フレームに影響があったとの未確認情報もある。チームメンバーの表情からは、何もうかがえない。
アナウンサーによる決勝戦のコール。香川高松から入場。二年連続の決勝進出だ。続いて青・大分高専の入場。初の決勝の舞台。
大分の「烈」機、建築ロボットのフレーム上部に見える青い部分は、樹脂製の自作ボールネジ。軽量化をはかった結果。その他も青い箇所は、自作の樹脂パーツと思われる。
香川高松のメイン機には、その名「八機八構」ではなく、「魑魅魍魎」とある。百鬼夜行のもじりかもしれないが、国技館の魔物を食ってやる、という意気込みのようにも見える。シンボルのモチーフになっている屋島合戦における、那須与一の弓矢で魔物を落とすのかもしれない。
最後のセッティングタイムへ。かけ声とともにセッティングに入る大分。香川高松は、ブロックの配置も念入りにチェック。実況アナウンサーの熱い煽り文句が会場を盛り上げる。
最後のスタートコール。スタート。
両者、良い開幕。積み込みは順調。新大陸へ先に向かったのは、香川高松。残り2分。すぐさま砦を築いていく。1分半、大分も積み上げ開始。先にシンボルが乗っているのは、大分。残り1分。先に確定させたのは……、大分。4段。香川高松は、6段240cmを完成、残り20秒。大分、させるか。残り5秒、大分も6段240cmを確定。
まさかの決勝審査員判定。これは……、審査員も難しい判断。
結果、再試合!
(まさかの)決勝再試合
最後のセッティングタイム、と書いたが、もう一度。今の選手の気持ちはどんなものか。おそらく2回分のキメの煽り文句を用意しているはずのない実況アナウンサーの気持ちは?(しかし、さすがプロ。バチっと決めていた)
2度目の、最後のスタートコール。
リードしたのは香川高松。ひたすら240cmを目指す。毎回変わらない光景。
大分、ブロックが機体に挟まり、リトライ。このミスは大きい。その後も、スムーズに動かない。
残り2分、香川高松は積み上げ始める。そして35秒を残し240cmを完成!
大分、積み上がらない。新大陸の台座の上にブロックが上がらないままタイムアップ。無念。
決勝戦、勝ったのは香川高松。まさに盤石の試合運び、大会運びだった、と言っていいだろう。その武器は、安定感。6段までしか積めない。しかし、代わりに確実に砦を作ることができるシステムにした。これが良い方に転がったということだろう。
香川高松は、2015年の決勝戦で、相手のために打ち上げられた紙吹雪を経験した。今回は自分たちのための紙吹雪(正確には金銀テープ)を総身に受けることができた。完璧な「2年間」のフィナーレだったのではないか。
負けた大分は、インタビューでは気持ちの良い言葉を残した。ワイルドカードからの勢いは潰えたが、素晴らしい結果だったといえるのではないか。もちろん悔しいこととは思う。しかし、会場を大きく盛り上げたことは間違いない。
2016年高専ロボコン結果
ロボコン大賞:奈良高専
優勝:香川高専・高松キャンパス
準優勝:大分高専
アイデア賞:富山高専・本郷キャンパス
技術賞:仙台高専・名取キャンパス
デザイン賞:明石高専
アイデア倒れ賞:木更津高専
特別賞
本田技研工業:明石高専
マブチモーター:富山高専・本郷キャンパス
安川電機:佐世保高専
東京エレクトロン:都城高専
田中貴金属グループ:苫小牧高専
ローム:米子高専
ロボコン大賞は、文句なく奈良。誰もが認める、最も栄誉ある賞だろう。受賞後のインタビューは悔し涙だった。確かに、よくわかる、とひと言で言ってしまうのも軽いと思うが、記者は春に行われた東北地区交流会でも、奈良の勝負にかける強い思いに触れていた。その悔しさの一部でも理解できていると思いたい。
高専ロボコンは30年へ。来年は、祭り。
こうして2016年の高専ロボコンは幕を下ろした。来年、2017年は、前述のように高専ロボコン30年。そして学生ロボコンは、ABU大会が日本開催。その他にも、ロボットコンテストの世界大会が日本で開かれると聞いている。例年以上のロボコン祭りな1年になることだろう。デバプラも、乗るしかないこのビッグウェーブに、というつもりでできる限りサポートしていく。
最後になるが、全国大会だけでなく、地方大会も含めて、この高専ロボコン「ロボット・ニューフロンティア」に参加したみなさんに、感謝したい。素晴らしいゲームを見せていただいただけでなく驚かされ、感心させられ、楽しませていただいた。何かのドラマを見せられているように感じた。同時に、今季限りで引退される方には、お疲れ様でした、と心から伝えたい。そして次年度もこの大会に参加される方には、引き続きよろしくお願いします!とシャウトしたい。