Scratch普及のリーダー・阿部和広さんインタビュー 後編

学びのこと、クリエイティビティのこと。そして”やってみる”こと。

普及のリーダー・阿部和広さんインタビュー 前編はこちら

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Scratch(iPadで動くPyonkee)のデモンストレーションをする阿部さん

 

学びに重要なこと、プログラミングの学びかた

現在は、青山学院大学や津田塾大学でも教える阿部さん。子どもではなく、僕たちオトナが学ぶのに重要なのは、どんなことだろうか。

 

「自分の好奇心というものを、もう少ししっかり深く考えたほうが良いのではないだろうか、と思いますね。自分は本当は何が好きなのか、ということです。世の中にいっぱい不思議なことがあると思います。だけれども、多分それをさらっと逃してしまっていると思うんです。例えばツイッターでおもしろいネタが流れてきたらリツイートしたりふぁぼ(お気に入り)するだけではなく、それってほんとはどうなんかねぇ、とか、これってもしかしたらもっとおもしろい話じゃないのとか……、そう思うところから、もう少し攻めていったらいいんじゃないか。

 

世の中、どんどんわたしたちが考えなくても良くなっていますよね。しかし、考えないということが、最終的には自分にとって不利益になるということをわかってもらいたい気がしています」

 

では、プログラムを学ぶ、という側面では?

 

「プログラムを学ぼう、というのは、わたしからするとやや的外れな気がするんです。解決すべき問題があって、そのための手段としてプログラミングを学ぶのであって、プログラムそのものを学ぶというのは本来あり得ない。さきほどの好奇心の話にもどれば、”じゃあ何を作りたいんですか” という話です。問題を解決する手段として学べばいいんです。逆に、手段のために手段を学ぶというのは、多分それほどおもしろくないでしょうし、結果としてもそれほどたいしたことができないのではないでしょうか」

 

デバプラ読者の場合は、作りたいモノがあるはず。これはとても幸せなことかもしれない。なぜしたいのか、何をしたいのか。それがあれば、道筋は自ずと明らかになってくる。勇気づけられる言葉だ。

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2014年8月29日、30日に青山学院大学で開催された「ワークショップコレクション10」の「手のひらサイズのコンピューター「ラズベリーパイ」で自分だけのゲーム機をつくろう!」の様子(阿部さんご提供)

そして創造性、クリエイティビティ

しかし、もし、作りたいものがイマイチ思いつかなかったら……。創造性、クリエイティビティのようなものが、自分にはないと感じていたら……。

 

「創造性というのは、高めるとか鍛えるとか、そういうものではないと思います。みんなが昔は持っていたものです。だから、取り戻すだけです。結局、何かが阻害しているだけなんですよね。その阻害しているものを取り除く。もし創造的でないように感じたとしても、潜在的にはみんなクリエイティビティを持っているのだと思います」

 

学びも創造性も、一番だいじなことは、自分に向き合う、自分を知る、ということだ。

 

「なんだか難しい話になっちゃっていますけど、でも本当はそれほどでもない。日々、機会があると思います。目玉焼きをやいていても、ひと工夫したらおいしくなるんじゃないかと考えたり、通勤通学の道を一本変えてみたり……、いや、これだと自己啓発セミナーみたいになってしまうな(笑)。

 

このテーマは、(Scratchを作った)MITのミッチェル・レズニックさんのラボが、なぜ “ライフロング・キンダーガーテン”と呼ばれているのか、ということにもつなががります」

 

“生涯幼稚園”。つまり、オトナでも、子どもたちのように、自由にモノを作ればいい。楽しめばいい。それが学びや創造的なことにつながっていくこともあるかもしれないが、それは結果。過程を十分に楽しむことが重要。……記者はそんなメッセージだと理解した。阿部さんの言葉は、構成主義的な暖かさにあふれている。

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年初の取材だったため、思わず「2014」と書いてしまった阿部さん。無理に、慌ただしくお願いしてしまった記者が悪い。しかしリカバリー方法が創造的だ 🙂

 

やってみる、手を動かすということ

最後に、デバプラ読者へのメッセージをたずねた。

 

「手を動かしたほうがいいんじゃないですかね。不思議なこととかやってみたいこととか、心に浮かんでは消えていってしまうので、そこですぐ作ってしまえばいい。そのための(Scratchのような)材料が身の回りにあれば、思いつきが消える前にカタチになる。

 

少し違いますが、例えば、LEDをつなぐときに、電流制限抵抗を入れなければ焼けますよ、といいますよね。しかし、一回焼いてみた方がいいですよ。ハンダゴテが熱いので注意といいますが、触ってみればいいですよ。……いや、それはダメか(笑)。でも、そういうことです。やってみること。

 

その一方で、付け加えなくてはならないことがあります。アランさんの有名な言葉、『未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ』には、対になる言葉があります。それは、『未来は既知の自然法則に反しない限り創ることができる』というものです。

 

つまり、物理法則を無視したものではいけない、トンデモではいけない、ということです。例えば今、Kickstarterを見ていると、どう考えても実現不可能なものがあったりします。そういうのは、違う。全てが構成主義的な学びで得られるわけではない。

 

いわゆる、”巨人の肩に乗る” ことも必要です。ひとりで見渡せる範囲には限りがある。だから、先人の知恵を活かさなければ前には進めません。それと同時に、自分の手でやってみることが重要なのではないでしょうか」

 

Scratch:http://scratch.mit.edu/

阿部さんTwitter:https://twitter.com/abee2

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2014年8月26日に津田塾大学で開催された「女子中高生のための情報・メディア工房2014」の「ともだちロボットでゴー」の様子(阿部さんご提供)

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上記と同じ

 

阿部さん著・監修書

20_09_wakuwaku
小学生からはじめるわくわくプログラミング
http://www.amazon.co.jp/dp/4822285154/

20_08_dokidoki
Raspberry Piではじめる どきどきプログラミング (はじめるプログラミング シリーズ)
http://www.amazon.co.jp/dp/4822297314/

20_07_sukusuku
5才からはじめる すくすくプログラミング
http://www.amazon.co.jp/dp/4822297616/

20_06_ukiuki
スタディーノではじめる うきうきロボットプログラミング
http://www.amazon.co.jp/dp/4822297691/

 

※取材協力:ベジタブルイタリアン(東京都目黒区八雲1-1-1 めぐろパーシモンホール1F)

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