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トランスポーテーション変容:ひと・モノ・体験の移動が変わる。西村 真里子の未来予測〜CES 2015編

今回のEvent Plusは、CES 2015から見る「テクノロジー」「ものづくり」の未来予測! WIREDなどに多数寄稿している西村真理子さん独自の視点で「未来」を解説してもらいます!


毎年1月にラスベガスで開催されるCES、Consumer Electric Show 世界最大の家電ショーをご存知だろうか?「家電ショー」と聞くとDevicePlus読者の中には自分とは関係無い、と感じる方がいるかもしれない。PC、スマホ、テレビなど与えられたデバイス上のブラウザやアプリを通して広告コンテンツやプロモーション、サービスを提供している筆者も2012年まではそう考えていた。ただ3年連続してCESに訪問してみて、今ではテクノロジーとインダストリーの未来予測をするのに最高のイベントのひとつと位置付けている。
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インダストリーとテクノロジーの一歩先を読む場所、CES

オープン化が進むテクノロジーとインダストリーの進化の先にはエンジニアが活躍するフィールドも広がるので、CESはエンジニアが活躍すべき近未来を予測するカンファレンスとしてもふさわしいだろう。Internet of Things(IoT)、モノのインターネット化というキーワードを世界中に流布させたのは2014年のCESだ。
そして2015年今年はIoT動向、大企業とスタートアップ、ファブリケーションとテクノロジー、各産業の垣根を越えて世界中のデジタルデバイスがどのように進化していくのか?展示とセッションで紹介された。エンジニアに嬉しい発見としては、自動車メーカーのフォードはテクノロジーイノベーターを目指しデベロッパーカンファレンスを行うなど発表を行っている。
いままでクローズドな産業だった自動車産業に外部エンジニアが参画できるチャンスが開かれたワクワクする未来も発表されたのがCESである。既存のルールや価値観、産業構造が溶けて再構築される今、CESの動向を把握しておくことは、来たるべき21世紀型産業において、どこに活躍の場所を把握すれば良いかを知るためにも参考になるだろう。
この記事ではCES 2015の動向の一部と、そこから読み取れる次世代への指南書を筆者視点で読み解いてみたいと思う。

CES 2015動向

2015年1月6日〜9日、米国ラスベガスのコンベンションセンターおよび周辺ホテルを巻き込んで開催されたCES 2015は過去最大級の3600団体が展示をし、前年までの来場者数を超える17万6000人が来場した。うち5万人弱が米国外からの参加者である。
7,000近くのメディアやアナリストも訪れラスベガスの街は、最新のテクノロジーおよびインダストリー動向を作り上げる人々で溢れかえる。聞いた話では2015年会期中に来年2016年の出展希望者が殺到し、2016年はさらに拡大されたイベントになりそうで、世界中の産業関係者の注目を浴びていることが実感できる。
さて、なぜここまでCESが盛り上がりを見せているのか?それはIoT(Internet of Things:あらゆる製品がネットにつながる世界を指す、もののインターネット化とも)キーワードが浸透したのも昨年のCES 2014がキッカケだったが、単なる家電ショーではなく、次世代デバイスを発掘する場所としても注目を浴びているからである。

新しいデバイス・製品の出現は市場活性化にも繋がる。

2015年、アメリカ家庭用電化製品の売上げは$232.2 billion(日本円になおすと約27.6兆円)で、前年比前年比3%増との明るい見込みが、CES 2015会場にて報告されていた。
筆者個人の体験としても最近購入したものをリスト化してみると、Apple Watch、Parrot Drone Bebop、など新しいIoTデバイスが含まれている。筆者の周りでもヘルスケア向けウェアラブルデバイスを購入しておりPC、スマホ、タブレット以外の方法でインターネットとつながるデバイスを有し始めている方々が多くいる。現状では、アーリーアダプターの消費行動かもしれないが、マジョリティーへの普及を考えると、新規デバイスの登場および購買活動は未来の産業を作り上げるので、無視しては今も未来も語れない。

ひと・モノ・体験の変化

さて、それではCES 2015ではどのようなデバイスが注目されていたのか?
CESオフィシャル注目の製品群としては「ウェアラブル(スマートウォッチ、メガネ、フィットネス)」「ドローン」「コネクテッドカー」があげられていた。確かに会場の至る所でドローンが展示され、飛び、ウェアラブルデバイスの展示デモが行われていた。そして何よりも筆者が圧倒されたのはメルセデスベンツやアウディ、フォードなどが広大なエリアを確保し、彼らの次世代ソリューションを紹介していたことである。
アウディは、独自のタブレット「Audi Tablet」などを紹介していた。昨年までの展示はテレビメーカーという印象が大きかった東芝が、ウェアラブルグラス「Toshiba Glass」を前面に押し出していたり、メガネメーカーJINSが大きく出展していたり、産業を作り上げるデバイスがテレビからウェアラブル/IoTプロダクトにシフトしているのを感じた。

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中でも筆者が注目したのは、自動車産業のCES参画、ドローン躍進、Oculus RiftをはじめとするヘッドマウントディスプレイおよびVRへの注目度の高さである。車・ドローン・ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、全てに共通するのは「移動・トランスポーテーション」である。人々はいまいる場所から違う場所へ移動したいのだろうか?その表れがトランスポーテーションへの関心につながるのだろうか。
以下にトランスポーテーションの変容事例として、CESで見てきた車・ドローン・OculusRiftヘッドマウントディスプレイについて紹介したい。

エンジニアが目指す産業としての「自動車産業」

CES 2015ではコネクテッドカー、セルフドライビングを目玉にメルセデスベンツやアウディ、フォードなどの車メーカーが大々的に展示を行っていた。翌週に控えた1月12日開催のデトロイトモーターショーより先に、CESにて新車の発表を行っていた。車メーカーは、従来のモーターショーより家電ショーを重視している。
その理由はなぜか?スピードや操作性重視の移動手段としての車から、センサー技術や、スマートフォンとの連携により家電の延長上にある車へと、存在意義を再定義しているからだろう。CESの基調講演でもメルセデスベンツ、ダイムラーのディータ・ツェッチェ会長がステージに立ち、「車は家庭、オフィスの次の人々が集うサードプレイスになる」と発表していたこともその現れだろう。
ベンツが展示した未来型自動車Mercedes Benz F015はコンセプトカーではあるが、車が家電化していることと自動車産業が真剣にサードプレイスを奪いに乗り出してきている真剣度を感じる。

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フォードはテクノロジーイノベーターを目指すとし、シリコンバレーにオープンラボ開設を発表し、自動車業界初のデベロッパーカンファレンスを行うなど、開発者向けに開かれた自動車メーカーというブランディングを行い始めている。
車産業は、いままで車メーカーと関連パーツを提供する企業により成り立っていた産業だったが、CES 2015ではアウディやフォードはGoogle Android AutoやApple CarPlayとの連携を大々的に謳っていた。
アウディは2018年までに$30 billion(日本円になおすと約3.6兆円)を新しいテクノロジー等に投資すると発表しているが、APIやSDKの提供、Google Android Auto、Apple CarPlay経由の外部開発者や、デザイナーを巻き込んだ新たなクリエイティブエコシステムを構築する車メーカーの登場も近いかもしれない。
エンジニアである読者のみなさんも、自分ごととして自動車メーカーのエンジニアアプローチ動向をぜひとも追ってもらいたい。

エンジニアのプロトタイプも紹介されたドローン動向

日本においては、首相官邸事件などを含め、東京都内の公園もドローン飛行を制約する自粛ムードであるドローンであるが、ファントムなどで有名な中国のDJIが米国ベンチャーキャピタリストから90億円程を調達するなど、世界的に見るとドローンビジネスは勢いを増す一方である。
CES 2015でもドローンメーカーの展示が多く見られた。Parrot や DJIなど大手メーカーの展示はもちろん、セルフィー撮影ができる小型ドローンスタートアップの展示なども見られた。
中でも注目されたのが、Intelが昨年行ったデベロッパー向けウェアラブルコンテストで優勝したウェアラブルセルフィードローン「nixie」だ。リストバンドとして手首に装着し、セルフィー自撮りしたいタイミングでドローンとして飛行させ撮影するものである。
Intelの基調講演でも紹介されたが、展示ブースでもメディアが殺到する注目のプロダクトであった。まだプロトタイプ段階でプロダクトのクオリティとしては美しいものではなかったが、筆者が関心を寄せたのは、Intelの姿勢である。
最近IntelはMakers Fairなどでも積極的に展示をしている。IoTムーブメントの中で、エンジニア向けに開かれたIoT制作環境をコンテストや、ワークショップなどで行っていることは有名だ。
その一貫であるコンテストで優勝したプロトタイプ段階の製品を基調講演で紹介し、展示もする姿勢に、エンジニアおよび次世代プロダクトを応援する企業の姿が見えた。Intel以外でもIoTプロダクトを構成するテクノロジー、パーツを有する企業は、ぜひエンジニアに開かれた環境を提供し、産業全体を盛り上げるよう期待する。
さて、ドローンはAmazon Airのニュースでも話題になったが、物流の変革にも影響する。最近ではシリコンバレーのMatternetが、ドローンによる薬配達などのニュースもあった。物流革命も予感させるドローンの産業への影響も注目したい。

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VRへの期待

CES 2015では行列ができていたブースが二つあった。
一つはSONYの次世代ライフスペースを提案する「Life Space UX」。4K単焦点プロジェクターや、LED電球スピーカーなどで人々の生活空間を豊かに高精細電脳化するブースは行列ができていた。
もう一つはOculus Riftブースである。Oculus Rift以外でもSONY、ゲームメーカーやスタートアップのヘッドマウントディスプレイも参加者の行列ができておりバーチャルリアリティー体験への期待が高まっていることがわかる。
話はラスベガスから日本に飛ぶが、ニコニコ超会議2015でもOculus Riftを利用した体験ができる「東京オッキューランド」は、待ち時間1時間以上のコンテンツが複数あった。現世では、体験できないリアルな体験を求める人々が、世界中に存在することを感じる。
Samsungなどは、HMDアップストアを立ち上げVRコンテンツの流通ができるように仕掛けている。いままで体験できなかった世界へ連れて行ってくれるVRコンテンツは、エンターテインメントや、ゲームの活用以外でも、体が自由に効かない方が視線だけで操作できるコンテンツとして、そして教育現場での活用も期待できる。NASAなどはOculus Riftを活用して火星の映像を紹介し、火星体験を教育用コンテンツとして紹介している。

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テクノロジーとインダストリーの動向を知ろう

CESが面白いのは、フォードがエンジニア向けプログラムを紹介し、Intelが上述nixieを紹介するなど、大企業の外部エンジニア向け支援プロジェクトが学べることや、大企業展示の横でスタートアップが展示されており、既存の産業構造の壁を越えて、フラットにテクノロジーと、インダストリーの動向を一気に勉強できるところだ。オープンなエンジニアリングを心がけているエンジニアの方には、ぜひインダストリーの動向も意識していただきたい。企業や時代が求めるオープンインダストリーをエンジニアの皆さんが作り上げるのが、21世紀型エンジニアリングではないだろうか。

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ハートキャッチな「未来をつくる」デジタル/テクノロジー活用事例のプランニング&プロデュース。WIRED、宣伝会議、WebDesigning連載など記事寄稿先多数。

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