今回はちょっと趣向を変えて、Arduinoの電源を電池やUSBからの給電ではなく、自然エネルギーとして注目されているソーラーパネルを利用して動かしてみます。
どれくらいソーラーパネルが大きければArduinoが動くのか、継続的に安定して動かすにはどうすればよいのかなどを勉強しながら取り組んでみたいと思います。Arduinoで作ったガジェットがコンセントから遠かったり、PCにつなぎっぱなしにできない(したくない)場合にも、環境にもやさしいArduinoライフを送ることを目標に頑張ります!
今回の電子工作レシピ
完成までの時間目安:60分
必要なパーツ
- Arduino本体(Arduino Pro Mini)https://www.switch-science.com/catalog/876/
- ブレッドボード https://www.sengoku.co.jp/mod/sgk_cart/detail.php?code=EEHD-4D6P
- 携帯機器用ソーラーモジュール 300mW http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-06564/
- LDO3端子電圧レギュレータ(出力3.3V)【BA33DD0T】 http://www.marutsu.co.jp/pc/i/127889/
- 電解コンデンサ 33μF~100μF 16V~35V http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-03122/
- 積層セラミックコンデンサ 0.1μF 50V http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-00090/
- LED
- 抵抗器(220Ω)
Arduinoの動作電圧とソーラーパネルの電圧
Arduinoを動作させるために必要な電圧を供給する必要があることは第14回で触れました。今回利用するArduino Pro Mini互換機は3.3Vなので、ソーラーパネルからは安定して3.3Vを供給する必要があります。一方今回利用するソーラーパネルの仕様を確認すると、最大出力電力:300mW / 開放電圧:5.7V / 最大出力時電圧:4.5V / 短絡電流:74mA / 最大負荷時電流:65mAとあります。最大出力電力(300mW) = 最大出力時電圧(4.5V) × 最大負荷時電流(65mA)となっていますので、今回利用するArduino3.3Vに対してソーラーパネルの電圧(最大4.5V)が少し高くなってしまいます。電圧が高いままArduinoに電気を流し込むとArduinoを壊してしまう可能性があるので、電圧を制御する必要がありますね。
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写真1.Arduino UNO(5V)とArduino Pro Mini互換機(3.3V)
下の写真では、快晴時に電圧を測った結果(最大出力4.5Vが観測できています)と、屋内照明で電圧を測った結果(2.5V程度)です。晴れている日は問題ないですが、屋内照明の場合だと、Arduinoを動かすための3.3Vに届いていないため、ソーラーパネル1枚だと動かすことが難しそうです。ソーラーパネルを2枚直列でつなぐと、8.8~9V出力されましたので、天気が悪い日などを考慮するとArduinoを動かすのに2枚程度つなぐとよさそうですね。ちなみにソーラーパネルを並列で接続すると、電圧は変わりませんが、計測される電流の量が増えました(これは電池と同じしくみですね)。
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写真2.快晴時にソーラーパネルの電圧を測る
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写真3.屋内照明下で電圧を測った結果
Arduinoにつなぐ前にソーラーパネルでLEDを光らせてみる
Arduinoにソーラーパネルをつなぐ前に、先にLEDをつなげて光らせてみましょう。今回利用した緑色LEDは準電圧が2.0Vなので、ソーラーパネルから2V以上計測できていればLEDが光ります。先ほどの屋内照明で計測した場合、約2.5Vあったので、ソーラーパネルをつないでみるとLEDが光ります。さらにこの状態で屋内照明に近づけたり、遠ざけたりすると明るさが変わりました。
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写真5.ソーラーパネルにLEDを接続

図1.ソーラーパネルとLED回路
ソーラーパネルが無事発電していることを確認できたので、Arduino側の準備をしていきます。
Arduinoに必要な電圧を用意する 3端子電圧レギュレータの使い方
太陽光の強さによって上下するソーラーパネルからの電圧をArduinoの3.3Vに安定的に流し込むために、3端子電圧レギュレータというものを今回使います。「3端子電圧レギュレータ」と文字でみるとなにやら難しそうな部品と思ってしまいますが、簡単に説明すると、入力された電圧がどんなものであろうと仕様に沿って一定の電圧を出力してくれる部品です。なので今回のような入力の電圧が安定していない場合などにもってこいの部品になります。
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写真6.3端子電圧レギュレータ
今回利用する3端子電圧レギュレータ(ROHM LDOレギュレータ – BA33DD0T)の仕様を確認すると、低損失用とあり、入力の電圧が3~4.0Vなどと低くても動作すると書かれています。また、入力電圧は最大25Vとありますので、ソーラーパネルを最大5枚(4.5V×5枚=22.5V)、直列につないでも利用ができますね。
LDOレギュレータ – BA33DD0T データシート
http://www.rohm.co.jp/web/japan/products/-/product/BA33DD0T
3端子電圧レギュレータの使い方は簡単です。3つある端子にはそれぞれIN / GND / OUTがありますので、INは入力側(ソーラーパネルの+端子)、OUTは出力側(ArduinoのVcc)に接続するだけでソーラーパネルから発電された電気が3端子電圧レギュレータを通じて、一定の電圧になってArduinoに送られます。
ただし、3端子電圧レギュレータを使うときに注意することがあります。3端子レギュレータはそのまま利用すると出力する電圧が波のように上下する「発振」状態となってしまいます。その発振を防ぐために、コンデンサを一緒に回路に組み込む必要があります。3端子電圧レギュレータを部品屋さんで買うとコンデンサもついてくることが多いです。回路は図3のようになります。コンデンサを2つ入れて発振を防ぎ、OUTから安定した電圧を取り出すことができます。
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図2.3端子電圧レギュレータ

図3.3端子電圧レギュレータとコンデンサ
これで、Arduinoを動かす準備が整いました。
いざArduinoにつないで動作!
3端子電圧レギュレータの使い方がわかったところで、Arduinoに接続します。回路は下記のとおりです。今回ArduinoのプログラムはサンプルにあるBlinkなどの簡単なプログラムを使いました。屋内で起動させるには照明に近づけないと起動しないのがわかりますね。太陽のエネルギーの強さを実感します……。
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図4.ソーラーパネルでArduinoを起動

写真7.ソーラーパネルでArduinoが起動しました!
まとめ
今回はソーラーパネルを利用して、最小限の部品でArduinoを起動することができました。次回は、このソーラーパネル電源をもう少し追求して電池に充電して太陽が雲に隠れてしまったときも充電された電池から電力を補う仕組みを実装してみたいと思います。充電池やバッテリーへの充電が可能になれば、日中ためた電気で夜Arduinoを動かす、なんてことも可能になっちゃいます!
■関連リンク
この記事の応用編として、見ル野栄司先生が世紀の大発明しちゃいました!
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