いよいよ明日に迫った高専ロボコン2015全国大会。
全国の高専124チームから選ばれた25チームは、すでに両国国技館に入り、びんつけ油の香りが残るピットで競技の準備を進めている。もちろん、地区大会から熱戦を追いかけてきたデバプラスタッフも同様で、「支度部屋」と呼びたくなるピットやテストランの様子を取材中だ。明日は、このデバプラ記事やTwitter、Facebookでお伝えしていく。
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2015年高専ロボコン 競技内容おさらい
競技の名前は、「輪花繚乱」。「わっかりょうらん」と読ませる。ポイントは「輪」。ロボットによる輪投げ合戦だ。
すでに地区大会の公式動画が上がっているので、これを見れば分かりやすいだろう。
高専ロボコン2015ライブストリーミング|NHK
http://www.nhk.or.jp/robocon/rbcn2015/kstream/
フィールドには9本のポール。対戦形式で、相手より先にこのポール全てに輪をかければ、「Vゴール」となり勝利。
3分の制限時間の中で決着がつかなければ、より多く輪をかけ、ポイントを稼いだチームが勝ちとなる。
各ポールはすべて1点だが、中央の3本のみ、1個の輪を2本のポールにかければ5点、3本にかければ10点と、大きな加点の機会が設けてある。
また、自陣側の3本、中央の3本は1度しか加算されないが、相手陣のポールには何度かけても良い。ただし、相手陣には入れないので、離れた場所から投げることになり、難易度はぐっと高くなる。
「輪」とは、ゴムホースをイメージしてもらうといいだろう。つまり、柔らかく自在に変形する。これを正確に、しかもそれなりの距離で投げるというのは、容易でないことは明白だ。人が投げても、そうそううまくはいかないのではないか。しかし、各チームとも工夫をこらし、かなりの精度を叩きだしている(地区大会を見た記者は、衝撃を覚えた)。その機構は要チェックだ。
しかし、輪を投げる精度やスピードだけでは決まらないことも、地区大会を通して見えてきた。投げることを攻撃とすれば、防御という要素もある。自陣側のポールに相手の輪がかからないようじゃまをする、ということだ。相手は、うまくかからなければ、ピットに戻って輪の補充、再装填という作業を行わざるを得ない。その隙に、Vゴールを狙う、あるいは中央ポールでの大幅な加点を狙う、といった戦略・戦術がありうる。
こういったルール設定の結果として、非常に見応えのある対戦になったように感じる。この絶妙なルールを設定したオフィシャル、そしてその想定を超えてきた(と記者には思われる)出場者たちに、拍手を送りたい。
一方で、高専ロボコンのサブタイトルには、「アイデア対決」という言葉も含まれている。ただ勝ち負けだけではなく、外装やコンセプトや設計思想のユニークさも大きな見所のひとつだ。
テストラン模様 1順目 前半
午前中の受付、ロボット組み立て、ブリーフィング、開会式リハーサルなどを終え、14:30頃からテストランが始まった。記者が見ることができた部分のみで恐縮だが、状況をお伝えする。
1番手は和歌山高専。あっけなく手前側ポールを決め、1分ほどでVゴール。連続発射が可能な機構で、相手側ポールでの連続ポイントが可能だ。クルーの挙動も落ち着いており、全てがマネジメントされている印象だった。
続いて奈良高専。中央ポールの3本掛けを狙うが、その輪があまりにも巨大なのがポイント。確実に相手陣にはみ出す仕様で、相手の移動の妨害も兼ねていそうな勢いだ。射出音が、カツンカツンと小気味いい。
産技高専(荒川キャンパス)の登場。驚異の12秒Vゴールが記憶に新しい。しかし……、1回目のスタートでは、フィールドの枠にぶつかり、輪を落としてしまう。その後のスローでも、率は高くない。これからの調整が見物だ。まちがいなく精度を高めてくるに違いない。
続いて一関高専。ロボット名は「百式砲」。ゴールドでまとまっている。ストック分の輪が、きれいにラックにかかって整理されている。こうした細かいところも、勝負の分かれ目になる可能性があるだろう。LED付きのユニフォームとヘルメットは、たんなる飾りではないようだ。
地区大会ではスポンサー各賞が取り合いになったと噂の群馬高専「上州カウボーイ」。ユニークな人型ロボットだ。「腕」が投げる男前っぷりに、テストランでも応援の声が聞こえてくるほど。ぜひ注目していただきたい。実は、本番用の隠し機能があるとの噂。
熊本高専(八代)は、なんと言ってもロボットが美しい! ビジュアルはもちろんだが、戦車のような、車体と砲台のバランスが、機能美を感じさせる仕上がりだ。基本的には1ポール1ポールを確実に収めるスタイル。相手陣でも、高い精度でかけていた。さすが前回覇者。しかしロボット名は「チャレンジャー」。イギリス軍の実在する戦車は関係あるのか?
松江高専は「Tri Shoooter」。その名の通り、「3本」にこだわった仕様(Triとooo)……と思いきや、1本1本ねらうことも、3本を同時に射出することもできる仕様だ。現状では相手陣ポールの成功率は5割程度か。
大分高専。中央ポールに向かっては、大きな輪をぐるぐると回転させ、遠心力で放つ。途中で機体にからまってしまうケースがあったが、高確率で3本がけを狙える仕様だ。
続いて小山高専。ロボットが機械として美しい。整然としている。さすが強豪校だ。射出の仕組みが特徴的で、たたまれた布を開く勢いで投げる。相手側へも難なく届き、精度も高い。中央への3本同時がけも可能だ。
鈴鹿高専は、カメ型機体。機能一辺倒でないロボットは、メンバーも観客も愛着が湧くだろう。若干移動、ポジショニングに苦労していたように見えた。ホイールの動作が完璧でないのか? 射出に関しては、各ポールにかなりの精度で迫っていた。
明石高専は、射出時の音がすばらしい。射出に関する微妙な調整を時間のある限り繰り返し、中央ポールへの2本がけを成功させていた。
福島高専のロボットは、移動しながら射出する。テストラン時点ではポールにかかることが少なかったが、1本1本投げるタイプではトップクラスのスピードだ。本番までの短い時間で、どこまで精度を高められるか? さらに、「ぐる輪」という名の通り、大回転投法も用意しているようだが、1回目のテストランでは時間切れとなってしまい、その威力は確認できなかった。
香川高専(高松キャンパス)は、装填時のクルーのきびきびとした動作が印象的。よく練られている、と感じた。ロボット自体もクイックに動作し、かなりの精度で輪をかけていた。相手側への射出は高い弧を描き、ブロックがし辛いようになっている。さらには防御も考慮されていることが一目でわかる機体で、総合的にかなりの力を備えていると言っていいだろう。
長野高専は、ムダが無いロボット。中央への3本がけはなんなく成功させていたが、1本がけが決まらず、苦労する姿も見られた。しかし、装填数がもともと多く、ロスなくチャレンジすることができる仕様なので、これも作戦のうち、ということかもしれない。
テストラン中、思わぬアクシデント。まさかのポール位置ずれ
……と、ここまで進んだところで、ポールの位置が当初の予定と違ったことが発覚。フィールドの調整が入る。これまでに1回目のテストランを済ませたチームには、再度の調整のタイミングが与えられることが約束された。テストラン済みのチームにとっては思わぬ事態かもしれないが、「これもゲームのうち」と捉えられるタフなチームが、本当の勝者にふさわしいかもしれない。
香川高専(詫間キャンパス)は、ものものしい機体とごつい2台のコントローラー(ラジコンのプロポ)が目立つ。近寄れば、射出アームにソロバンの玉を使い、ローラーにしているのも印象的だ。射出の精度も高いが、左右のアームのうち右のみを使っていたように見えた。マシントラブルでないと良いが。
呉高専。マンタの口から輪が飛び出すという、なんともキュートなギミック。敵陣ポールにも5割程度はかけている印象だった。
金沢高専は、その姿だけで楽しい。馬に乗ったカウボーイの人形だけではなく、輪のストッカーが、西部劇風の方向指示看板。そしてクルーはコスプレ! 射出は腕をぐるぐると回す回転式で、相手陣にもかけることができる。実力もあなどれない。
徳山高専は、ぜひその機体を目に焼き付けて欲しい。木製フレームに、ガトリングガンを思わせる装填方式。キビキビと位置を決め、自陣ポール、中央ポールへと、次々にかけていた。難点は、輪の再装填に時間がかかるところか。しかしそれも、この機体の美しさならばしかたが無い、という気にさせる。
都城高専はユニークなデザイン。フレームがリング状になっており、そこに輪が装填されている。このギミックは、ぜひご覧いただきたい。さらには輪にゴム風船(?)がセットされており、パンパンと小気味良い音をたてる。相手陣ポールにもかなりの精度でかけており、見かけだけではない。これも、ある種の美しさを持ったロボットと言えるだろう。タイムアップ寸前には、残り時間が少ないケースのシミュレーションを行っていた。
福井高専。イカがモチーフの機体。自陣側ポールに若干手こずるような姿も見られたが、中央を難なく決め、相手陣に迫っていた。
北九州高専は、何度かデバプラ紙面にその名が出た「あばうたぁ〜ず」。天頂で輪が回り続けるが、これは防御用。そしてその実力はかなりのもので、1分半ほどでVゴール(正確には、自陣側を1本スキップしたが)。赤ツナギはダテではない。
旭川高専。1本目を投げた後、ロボットを停止してしまったが、その後は順調に進む。砲塔(と呼びたくなる射出機構)が、ぐるりと向きを変えるさまがクールだ。砲塔はふたつあり、操縦者もふたり。中央ポールと相手陣ポール同時にを狙える仕様になっている。
苫小牧高専は、とにかく低く構えたロボット。その分専有面積が大きく、若干、フィールドで動きづらそうにも見える。装填数が少ないが、それは了解済みだろう。落ち着いて再装填を繰り返していた。
岐阜高専。ゆらゆらと揺れる防御用ポールが面白い動き。アルミホイル状のスクリーンを付けているが、相手チームのセンサー対策、戦闘機で言うところのチャフ(!?)だろうか。コントローラーが、専用の台車の上に乗ったモニタ付きで、いわゆるアーケードゲームのスティックが付いている。記者個人的には期待したが、マシントラブルか、フィールドで十分にテストしないまま、テストランの時間を終えてしまった。
1回目テストランの最後は、秋田高専。(チャフの流れで)レーダーをイメージしてしまうスクリーンは、輪がセットされているものの、防御用だ。回転射出で、若干苦戦する様子が見られたが、中央、相手陣ともにクリーンにかけていた。
……以上で、テストラン1順目が終了した。ほとんどのチームで、あきらかなマシントラブルや大きな問題を抱えているようすは見受けられなかった。明日は、各校とも間違い無く良い対戦を見せてくれるだろう。
フィールドでは、引き続き2順目、対戦形式のテストランが行われている。明日はライブストリーミングやデバプラTwitter、そして本記事で「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト2015」を十分に堪能していただきたい。
出場校一覧
- 旭川高専
- 苫小牧高専
- 一関高専
- 秋田高専
- 福島高専
- 長野高専
- 都立産技高専(荒川キャンパス)
- 小山高専
- 群馬高専
- 鈴鹿高専
- 福井高専
- 岐阜高専
- 金沢高専
- 明石高専
- 奈良高専
- 和歌山高専
- 松江高専
- 呉高専
- 徳山高専
- 香川高専(詫間キャンパス)
- 香川高専(高松キャンパス)
- 北九州高専
- 熊本高専(八代キャンパス)
- 大分高専
- 都城高専