ロボコン

「高専ロボコン2021全国大会」2年ぶりの国技館!【後編】

全ロボコニストのトライアンドエラーに最敬礼!


【お詫びと訂正】
「最終結果」の準優勝校を香川高等専門学校(詫間)と記載しておりましたが、正しくは呉工業高等専門学校でございます。
両校の皆さまにはご迷惑をおかけしましたこと、お詫び申し上げます。
今後このようなことの無いようチェックを徹底してまいります。


 

2021年11月28日、無事に高専ロボコン2021が開催された。
10月に「オフライン開催、オンライン観戦」となった学生ロボコン同様、ぎりぎりまでオンライン開催の可能性もあった。しかし感染状況の落ち着きから「開催、観戦ともにオフライン」が決定、一般観覧も開放された。デバプラ取材班も健康状況や移動記録の管理を受けた上で現地取材に参加したぞ!

前編の記事はこちら

 

目次

  1. 全チーム競技紹介、後半の13校!
  2. まとめ……得点競技の難しさ、圧巻の強豪チーム

 

後編では前編でお届けできなかった後半の13校について一気に紹介していきたい。どれも個性溢れる素晴らしいロボットばかり。ロボコンの聖地・国技館で開催された今年の高専ロボコンは最後まで目が離せない!

休憩時間では、ルール策定に関わった仙台高専名取の櫻庭先生から今回のテーマの趣旨が語られた。
「今回の自由度の高いルールは、コロナ対応のために苦し紛れで新設したものではなく、以前から持っていたものです。AIなどの先端技術の進化は著しく、技術そのものは飽和し始めています。そのような中で技術者に必要なのは、ハッピーや楽しいという気持ちだと思っていました。とはいえ『やっぱり対戦したい』という声があるのも分かります。まだまだ案はあります。来年以降も楽しみにしてください」

 

全チーム競技紹介、後半の13校!

⑭奈良工業高等専門学校:二ノ鹿跳

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ロボットと人間で回す大縄に、鹿ロボットが入って跳ぶ。地区大会よりも全体的に装飾が華やかで、光りモノが多いような気がする。

競技スタート。クリスマス風のBGMに合わせて牡鹿、続いて牝鹿がジャンプに成功。順序よくさまざまな角度から縄を跳ぶ。一部ロープがひっかかってしまうシーンもあったが、最後まで不具合なく安定感のあるパフォーマンスを披露しきった。82.0点を獲得。

⑮鈴鹿工業高等専門学校:プロジェクトS

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全自動で動く2台のゴミ捨てロボットだ。ペットボトルを回収してゴミ箱に捨てるロボットは10のレーザー距離計で自己位置を推定してペットボトルを回収、ゴミ箱に捨てる。ペットボトルを打ち出してゴミ箱に入れるロボットは、6.5m先にある11cmの穴に向かって直径7cmのペットボトルを射出する。すさまじい精度と速度で地区大会と変わらぬ圧巻の2分間を制し、93.0点を獲得。これぞ鈴鹿の技術力だ。

⑯長野工業高等専門学校:雨のミュージカル

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ご機嫌なミュージカルパフォーマンスロボット。曲に合わせてロボットが傘を投げ、キャッチする。正方形のフィールドを縦横無尽に駆け、ダンスを披露。チームメンバーが加わって、ロボットが人間に向かって傘を射出、キャッチにも成功!縦の空間も使った立体的なパフォーマンスが美しい。87.7点を獲得。世界観の完成度が高く評価された。

⑰熊本高等専門学校(八代)B:RUN ONE わん!

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地区大会では優勝は逃したものの完成度の高いパフォーマンスで全国出場権を手に入れた熊本八代B。ドッグラン競技を模した障害物を犬ロボットが飛び越え、その腹にあるARマーカーを自動機が追尾して落下地点を推定、キャッチする。

一回目のジャンプで落下するも、2代目の犬ロボットが登場して1.8mジャンプに成功、最大の見せ場「バク宙」でも着地に失敗してしまったが、難しい技術に挑戦した姿勢が高い評価を受け、87.3点を獲得した。

⑱苫小牧工業高等専門学校:ワンワンが来た!

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熊本に続くドッグショー。フィールドを元気に走り回る「だいず」と音声認識で人間の言葉に従って芸を見せる「あずき」だ。チームロゴの既視感も良い。
小さなミスはあったものの全体的に愛らしいパフォーマンスを完成させ、76.7点を獲得した。

特に高評価を得た「技術の達成度」は、あずき制御用のノーコード開発アプリだ。「あずき調整用ビジュアルプログラミングができるアプリを独自に開発した」もので、誰でもコーディングなしであずきが調整できるようになっている。

⑲熊本高等専門学校(熊本):ゴリラ3

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自動ロボット「ゴリラ・ゴリラ・ゴリラくん」がARマーカーを認識してボールを投げ、人間とのパス回しやシュートに挑戦する。パス回しには成功したが、一部のシュートでマーカーを見失ってしまった。

試合後のコメントでは「従来の高専ロボコンであれば4輪の安定するロボットでよかった。今回のルールではもっと挑戦すべきだと思った」という声も。中心の軸よりずれた位置からのシュートはバランスが取りにくくて難しい。挑戦する姿勢が評価されて79.0点を獲得した。

⑳一関工業高等専門学校:ロボウェイター

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テーブルクロス引きロボット。ペットボトルを回収してテーブルに立てた後にクロス引きを披露する。

競技スタート!まずはウェイターがペットボトルを優しく掴んで運ぶ。3本のペットボトルをテーブルに立てた状態でクロスを引く。成功!

仕上げに4段、20本のペットボトルピラミッドのクロス引きを見事に成功させて88.7点を獲得。実はテストランでは失敗続きだったらしい。パフォーマンス成功おめでとう!

㉑明石工業高等専門学校:明石止水(メイセキシスイ)

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香川(高松)と同様の流鏑馬ロボット。「動きながら射る」という、難度の高い技に挑戦する。地区大会よりも馬ロボットがスリムになっている?

競技スタート!最初の「走りながらの射出」には失敗してしまうがリトライの後、5連続発射に挑戦し、1本を的に当てる。トラブルに負けず、競技時間中にしっかりと一部のパフォーマンスを成功させて80.7点を獲得した。

㉒香川高等専門学校(詫間):DBZ

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チームロゴ、紹介動画ともにとても既視感があるので、ぜひ動画で見てほしい。こじるりさんいわく「70点のモノマネ」。地区大会では1台だった中国ゴマ「ディアボロ」のロボットが2台に増えている。

人馬一体のパフォーマンスが見事だ。ボールの一斉打ち出しは、空中でボールが衝突しないよう軌道や打ち出し時間を制御しているらしい。94.7点、香川高専2校で同点一位となり、会場がざわめいた。

㉓熊本高等専門学校(八代)A:Aqua Marine

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香川(詫間)に続き、ジャグリングを取り入れたショーだ。3台のロボットの華やかさが印象的だが実は技術力も高く、地区大会では満点を獲得している。

競技スタート直後に1台が暴走してしまう。非常停止の後にリスタートするも、暴走した1台は離脱、自動で姿勢を制御する玉乗りロボットも落下してしまった。残る1台と人間で最後まで頑張ったが、地区大会のようなショーは見せられなかった。「全国大会に向けたアップデートの調整が間に合わなかった」とのコメントにも悔いがにじむ。75.7点。

㉔沼津工業高等専門学校:aider

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災害救助をイメージした遠隔操縦ロボットが暗室に閉じ込められたどーもくんを救出する。バランスボード上での体重移動で操作する足回りが面白い。

競技スタート!しかし「ドアノブを引いて、開ける」という動作に手こずり、暗室に入る前にタイムアップとなってしまった。獲得点数は73.3点。通信に不具合があったらしい。国技館の環境は厳しい……。

㉕呉工業高等専門学校:鼯鼠(ムササビ)物語

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地区大会で満点を獲得した、3台のロボットによるショーだ。階段昇降、滑空、パイプ登りを多彩な機構で再現する。フィールドのセットも豪華だ。

競技スタート!まずは「クローラー」が高い階段を登る。谷間には橋をかけて渡り、滑空ロボット、パイプ登りロボットへのバトンのつなぎも成功。パイプ登りの後にチーム名の垂れ幕展開も成功し、完璧な2分間を披露した。得点は……94.7点!!3校が最高得点で1位に並んだ。

㉖小山工業高等専門学校:クアッドアクセラー

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メインロボット「アクセル姉さん」がジャイロによる姿勢制御でフィギュアスケートを披露する。優雅な上半身の動きと鋭いモータ音のギャップがすごい。最後のハイジャンプはロボットへの負荷が高いため練習でもトライしておらず、全国大会本番の今回が最初で最後の挑戦になる。

ジャンプは……大成功!着地後も制動に大成功しており、壁にぶつかっても段差から落ちても転倒しない。素晴らしい。

2分間を終え、獲得点数は……なんと100点!!満点を獲得して文句なしの優勝を飾った。
対戦競技ではないため仕方ないが、金テープの「パパパン!」がほしい。

 

まとめ……得点競技の難しさ、圧巻の強豪チーム

今回は得点競技で、技術評価と芸術評価で採点者が別れた。評価の性質上、合計得点に納得しきれないチームもあったかもしれない。

1年開催が空いてしまったための苦戦も感じさせた。特に多くのチームが悩んだのが会場の強い照明によるセンサーの不具合だ。これは例年起きがちなトラブルで、今年実況席に座った小山OBの和田さんも現役時代に同じ課題にぶつかっている。通信環境や床材、湿度などの違いに苦しむチームも目立った。見せ場のパフォーマンスまで行き着けなかった悔しさは察するに余りある。

そのような中でもしっかりとパフォーマンスを完成させたチームが各賞を受賞した。これが「会場で、リアルタイムで」展開される対戦の凄みと言えるだろう。

少しずつ世界が再始動する中でロボコンの新しいあり方を感じさせる大会だったように思う。苦しい中で開発を続け、ロボットを完成させた全てのロボコニストに最敬礼をして、本稿を締める。

本当にお疲れ様でした、また来年ここで会えますように!

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【最終結果】

  • 優勝:小山工業高等専門学校
  • 準優勝:呉工業高等専門学校
  • アイデア賞:香川高等専門学校(詫間)
  • 技術賞:香川高等専門学校(高松)
  • デザイン賞:大分工業高等専門学校
  • アイデア倒れ賞:石川工業高等専門学校
  • ロボコン大賞:小山工業高等専門学校(優勝とのダブル受賞で完全制覇!)
高専ロボコン2017解剖計画
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