2019年11月23日、外はあいにく冷たい雨が降っているが、ロボコン「らん♪RUN Laundry」は室内干しなので問題ない。国技館のピットはアツいぞ!
本記事では、前日速報としてピットを中心としたレポートをお届けする。各チーム慌ただしい準備の合間をぬっての取材だったため、限られたチームのピットのみになってしまうことはご容赦願いたい。
チームの強さを感じさせる「整然」
関東地区予選の決勝で同校対決を制して優勝した小山高専Bと、競技委員会推薦で全国大会に駒を進めた小山高専A。ピットも隣同士のため、境界線に共通の機材を置いて共有している。
小山高専Aの手動機のロボットアームは、ロボコン30周年のときにお祝いメッセージを書いた「SUPERザウルス君」(2008年)の腕をそのまま使ったそう。11年越しの全国出場だ。一方小山Bは、「ずっと小山は布を扱ってきた。今年は得意なテーマだと思う。優勝とロボコン大賞の両取り狙っています」 と勝つ気強め。
香川高専は高松キャンパス・詫間キャンパス両校が出場している。ピットの境界線上に、両チームとも棚を置いて壁としており、整然として見える。戦い慣れているチームどうしの信頼関係を醸し出す。
詫間キャンパスの自動機は、直交した足を切り替えながら進む。足まわりの壁ガイドがソロバンの玉だ(久しぶりに見た)。高松の手動機が古代の翼竜・ケツァルコアトルスを思い出すフォルム。
「美しさ」へのさまざまなアプローチ
今回は「美しさ」が求められるルールのもと、布という不定形のものを扱う。外装は、ルールによって何からしらの装飾を施すことになっているが、さらにそれに加え、巻き込み防止のためのパーツ・構造が見られた。
大阪府大高専は、手動機「オカン」の「圧が強い」。口紅がツヤッツヤでアクセサリーはギラギラ。カラビナフックのハンガーは、Tシャツの向きを美しく揃えるそうだ。
都城高専は自動機「ポッポちゃん」が興味深い。モータが直接タイヤの軸になっている。今年はエアタンクを使わず、ペットボトルにしたそう。去年は計量上の優遇措置があったが今年はないため、「エアタンクを使うメリットが無い」とのこと。ハンガーがとてもごついと思ったら、ゼンマイとバネで自走するらしい。装飾性と機能美がマッチしている。
岐阜高専は3Dプリンタをモリモリに使っており、部品の独自性がとても高い。洗濯ばさみも3Dプリンタ製か、ロック機構の入ったハイテンション仕様。機体全体が危険色のイエローで、ヘルメットのイエローライトも目立つ(重そう)、本当に現場に置いてある重機のような装飾だ。
大分高専は、美しく加工されたいつものプラダンボディだ。校内にウォータージェットがあるため、複雑な加工が内製できる(羨ましい……)。ただし今回は機体が軽いぶん展開するときに重心が高くなりそう。安定感はどうだろうか?
内部の電装が素晴らしかったのが旭川高専の自動機「モモンガ」だ。ケーブルの取りまとめが美しく、ケーブルキャリアはプラダン手作り。軽量化を狙ったとのこと。手動機の「狼」は、3本の牙でハンガーをかける。
「備え」の良さが勝敗を分けるか?
鈴鹿高専は2台とも自動機。ピットに3Dプリンタを持ち込んでいた。「部品が破損したときに備えて、いつでも作れるように持ってきた」とのこと。実際に地区大会の際、直動機構が破損してその場で作ったそうだ。また、地区大会中には、他校を助けるために稼働させたという。「万が一」なので稼働しないのが一番なのだが……実際に稼働するシーンが来たら、ちょっとアツい。
佐世保高専は、ロボット台下の工具置きがターンテーブルになっている。ロボットのそばに座って、人間が動かずに機材にアクセスできる仕組みでとても合理的だ。一昨年の大分高専のプラダンロボット台を思い出す。
まだまだあるぞ、個性豊かなマシンたち
一関高専は自動機の高さ制御にメジャー(巻尺)使っている。メジャーにローラを押し当てて繰り出し量をエンコーダで読んでいるそうだ。巻取量で高さ制御すると、昇降量と一致しないのだそう。
仙台高専広瀬は、計量で手動機がサイズオーバー。ピットで角のスポンジを取り外して再計量し、クリア。
米子高専はかなり長い時間、マシンの調整をしていた。メカと電気系統はどうにかテストランに間に合ったが、プログラムに不備があったという。ギリギリまで作り込む様子だが、ピットの雰囲気はかなり切羽詰まっている。残り時間は少ない。