第4回 東海北陸ロボコン交流会レポート/前半戦 ~東と西をつなぐ疾風怒濤の八丁味噌(?)交流会、完レポ!

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風が強く肌寒いものの、快晴に恵まれた2019年3月23日、24日の2日間。愛知県岡崎市にある「愛知県青年の家」で、東海北陸ロボコン交流会が開催された。参加したのは岐阜、沼津、石川、福井、富山など地区内の高専はじめ、遠くは一関、沖縄から集まった、合計108名の高専ロボコニストたち。
今回はローム株式会社から、モータドライバの開発担当者も講義をさせていただき、技術情報の解説を行った。東西日本に挟まれて、濃口でもない薄口でもない八丁味噌のような濃厚な2日間をレポートしよう。

1日目 3月23日(土) 13:00 開会式

「愛知県青年の家」のロビーには、続々と高専生が集まってくる。記者と顔見知りになった高専生やOBの面々が、「こんにちは!」「ご無沙汰しています!」とあたたかく迎えてくれた。これが結構、うれしい。この会場には「多目的ホール」があり、今日はそちらで開会式。階段状の座席には、既に高専生たちが集まり始めていた。
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受付時、田光太郎幹事代表(富山高専射水3年)たちは「まだ食べないで」と言いながら、高専生たちにパインアメを1個ずつ、手渡していた。その理由は、開会式が始まって、すぐにわかった。
代表の田光太郎さんが、冒頭いきなり・・・
「隣りの人と向かい合って、パインアメについて1分間話してくださ~い」と宣言した。この奇想天外なスタート、面識のない人同士を打ち解けさせながら、自分のコミュ力を高めるための工夫だったようだ。なかなか面白い手を考えたものだ。

田光さんは「東海北陸交流会って、東日本と西日本の間にあって、ちょうど東と西を結ぶ役割を持っているんです」と、東海北陸エリアの特性につい述べた。そう言われれば、東日本、西日本問わず、他地区の高専の参加も多いのが、この交流会の特長なのかもしれない。

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ユニークな開会式が終わり、そのまま講義に突入!

13:30 講義

トップバッターを務めたのは、このDevice Plusを運営しているローム株式会社。今回は3名の社員が参加した。

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最初に、宣伝やブランディングを担当する「メディア企画部」の久保田から、ロームとデバプラについて説明。ロームの成り立ち、社名の由来や製品、ロボコンでの取り組み、Device Plusでの活動などを紹介。最後に「ロームとデバプラは徹底的にロボコンを応援します!ぜひ、要望やアイデアがあれば寄せて欲しい」と熱く締めた。

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次にモータドライバ開発に携わる大和と小林という若手コンビで、「DCブラシ付モータ、ドライバIC基礎講座」を行った。
大和からはモータの回転原理、モータの種類と分類、構造など基礎的な技術解説を。小林からは高専ロボコン専用Hブリッジモータドライバの基板構成など技術解説を、それぞれ説明。

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プロジェクターを使っているため、会場は非常に暗かった。しかしそれにも拘わらず、熱心にメモを取りながら二人の話を聞いている高専生もいて、少しでも多くの情報を吸収しようとする姿勢は、心を打つものがあった。

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講義の最後にジャンケン大会。勝った3人に高専ロボコン専用モータドライバをプレゼントしてロームの講義は終了した。

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ロームに続いては、3次元CADで大きなシェアを持つソリッドワークスの講義。ソリッドワークス・ジャパンの柿沼直樹氏が、デモをしながら操作を解説。さらに同社の水野哲氏が、ソリッドワークスPCBについての解説を行った。こちらは関東地区、中国地区に続く3回目の講座となるが、高度なCAD技術を駆使する内容で、相変わらず高専生たちの注目を集めていた。

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「取材してあげて!」の声の先に、注目のメカが

16:00 展示

当初15時に終了予定の講義が、活発な質疑応答などで、終わってみれば15時40分!そのため本日のミニロボコンは取り敢えず前半戦を行い、後半戦は翌日の開催となった。と言う訳で、ミニロボの詳細は、後編にて。

観客席を収納して、みんなで広いスペースをつくり、展示がスタート。

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L字型に並べた長机に、次々とメカが並べられていく。今回は「足回り」のメカが多いように感じる。明日開催の「足軽ロボコン」の影響か?いくつか目についたものを紹介しよう。

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一関高専4年の阿部洋樹さんは、自作の小型ロボットを持ち込んでいた。「モノづくりが好きで趣味でもやろうと思ったときに、安くて簡単なものを製作しました。小さいものをつくると、後輩の育成用のキットにもなるので、そういうことも踏まえて簡単で小さいものにしました」。後輩を思う気持ちに、ちょっと感動である。

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タイヤの中にモータを入れたユニークな「インホイールモータ」と、2018年のロボコンで自ら開発したペットボトル発射機構を持ち込んでいたのは、舞鶴高専の中山拓海さんだ。舞鶴から一人だけの参加である。

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多目的ホールをうろついていたら突然、「デバプラさん!ちょっとこれスゴイですよ!取材してあげてください!」という興奮した声が聞こえた。行ってみると、一関高専が展示していた「無限回転ステアリング」だった。ステア設計担当の谷本智哉さん(2年)が今回の交流会には参加していないので、代わって門下裕樹さん(3年)が解説してくれた。

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「歯車が2段構成になっています。下がステアリング用で、回すと向きを変える仕組みになっています。上の歯車がホイールを回すようになっています。東工大の無現回転ステアリングと東大のステアリングをモデルにしてつくりました。」
その解説を聞いて、みんな「へ~!」と言いながら、メカを食い入るように見つめていた。

無限回転ステアリングの写真を、スマートフォンで熱心に撮っていた豊田高専OBの池戸さくらさんに感想を聞くと「いや~、彼の解説を聞くとスゴさがわかりますね。でも元のメカがあって、それを上手く改良していくというのは、情報収集がしっかりしているなと思います」と、ひとしきり感心しながら話してくれた。

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さらに進んで行くと女子2人連れに出くわしたので、少し話を聞いてみた。
仙台高専名取キャンパス2年の伊藤結菜さん(左)と、一関高専3年の正木杏佳さん(右)だ。
正木さん「一関高専って先輩方が凄いんですが、3年以下は先輩の技術を割と漫然と使っているところがあって、他の高専さんの意見を聞いたりしながら、自分なりにその理由をハッキリさせたかったんです。いろんなやり方や、その理由などを聞いて回るのはとても面白いですね」。正木さんに理由が見つかったか、また明日聞いてみよう。

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みんな並んで楽しくお食事。行儀のよさにも注目!

18:00 夕食

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大急ぎで展示、ミニロボコン前半戦を終了した後は、夕食へ。「青年の家」の大食堂に、順番に整然と入っていく。交流会でいつも感心するのは、こういうときの行儀の良さだ。みんなちゃんと並んで順番を待っている。できるようで、なかなかできない。こういうところは、我々も見習う必要があるだろう。

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整然としているけど、楽しそうでもある。和気藹々とした雰囲気が、交流会の楽しさを表しているようだ。

技術論から組織論、おまけに笑いまで

19:00 プレゼン

夜の7時からは、プレゼン。15~20分程度のプレゼンを3つの会場に分かれて、何と15名のプレゼンテーターが行うという、バラエティたっぷりの内容。これだけの講座をこなす交流会も、なかなかないのではないだろうか。
会場のひとつは、多目的ホール。入口側と奥側の2か所に分かれて、こんな↓ふうに、同時にプレゼンを行っていた(画像はパノラマ写真)。

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プレゼンのトップをきったのは、田光幹事代表の「モタドラバーストストリーム」。モータドライバについてのプレゼンなので、ロームのモータドライバ担当の2人も興味津々。
いろんな高専のモータドライバを、田光さんが独自の評価で解説、最後は自作ドライバの炎上(?)動画を見せて、大いに笑いをさそっていたのが印象的だった。

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その他のみなさんのプレゼンは、紙面の都合で講座名とお名前だけにさせてください。申し訳ありません!
●MRXについて(富山高専射水キャンパス4年・山田和輝さん)
●やりたい事、やりたくない事、できる事(一関高専4年・阿部洋樹さん)
●アウトプットのススメ(茨城高専5年・古川洸大さん)
●学生ロボコンの少人数、小予算での挑戦(三重大学4年・西村祐樹さん)
●電気班黙らせ隊 機械班の変革(富山高専本郷キャンパス3年・水上裕太さん)
●鶴THE刀から学ぶ練習の大切さ(舞鶴高専4年・中山拓海さん)
●今年導入してよかったもの(仙台高専名取3年小林聡太さん)
●自動車の信頼性設計~制御編~(一関高専OB・佐藤洸太さん)
●モノづくりの壁、伝えればわかる、の嘘(一関高専OB・中津川壮さん)
●留める技術(仙台高専広瀬OB・青木祐人さん)
●MDってどうやってつくるの?入門編(岐阜高専OB・問山 匡さん)
●超高速・7つの習慣(豊田高専OB・池戸さくらさん)
●日々の作業の進め方(サレジオ高専OB・小林進之輔さん)
●人に物を伝えるときに意識していること(OB・谷島康伸さん)
・・・凄い充実ぶり!

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夜は更ける。しかし交流会は眠らない

初日の最後に、交流会に初めて参加したローム株式会社の大和(写真左)と小林(写真右)の2人に、感想を聞いてみた。
大和「面白かった。まだ10代後半にも拘わらず、これだけの技術と知識を持っていることに、正直、驚きました。自分の同年代のときとは、比べものになりません」
小林「将来が楽しみですね。展示のときも、実際にモータドライバを使って問題になっていることなどを、ぐいぐい聞いてきます。そして本当に、ロボコンが好きなんだなぁと感じました」

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さらにロボコンがチームプレーである点について・・・
大和「電気やメカ、設計、プログラムなどいろんな分野に分かれていますが、他の担当の技術に触れるなどした経験は、非常に大きいと思います」
小林「会社で一緒に働くとしたら、きっととても頼もしい存在になってくれると思います。私たちも、うかうかできないですね!」

また、ロボコンの良い点のひとつとして「失敗を繰り返すことの大切さ」を挙げた。
大和「失敗経験が少ない人が社会人になって失敗して怒られると、『あ~、もうダメだ~』と思いがちです。その点、ロボコンで失敗経験を積んでいる彼らは、おそらく失敗をプラスにできています。しかも失敗したとき、相談する相手が先生よりも周囲の仲間、つまり自分たちで解決するという姿勢が、いいですね!」

2人に高専ロボコニストたちに、メッセージをお願いしてみた。
大和「青春を、ロボットづくりという自分の好きなことにかけていると思いますが、それはロボットに限らず、自分の将来に必ず生きてきます。その熱意を自分の好きな分野で、引き続き発揮し、やがては日本を背負って欲しいです」
小林「会社に入ると、やはり制限があります。本当に自分の好きなことができるのは、学生時代ならではだと思います。『どうしたらできるのだろう』ということをいろいろ想像しながら、ロボコンに取り組んでもらえたらいいですね」
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丸くなってモタドラ談義(?)を繰り広げる田光幹事代表たちとローム社員。

申し訳ないながら、時間の都合上、デバプラ記者たちもここで失礼させていただいた。しかし、翌日聞くと、みんな夜遅くまで部屋で技術談義を戦わせたとか。高専ロボコニストにとっては、眠気よりも技術的な知識の吸収欲が勝っているようだ。そして、それは二日目も続くのであった。「後半戦」も、乞うご期待!

東海北陸ロボコン交流会ブログ
https://toukai-hokuriku-robocon.blogspot.com/

東海北陸ロボコンツイッター
https://twitter.com/toriku_robocon」

 

 

今回の連載の流れ

前半:東と西をつなぐ疾風怒濤の八丁味噌(?)交流会、完レポ!(今回)
後半:ロボコンはアイデア対決!そのヒントと出会えるのが交流会

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