アメリカの高校ロボコンは超ド派手。バスケットボールやフットボールの大会のように盛り上がる。
ルールも規模も陽気さもノリも何もかも、さすがアメリカ!
そんな日本とはちょっと違うロボコンを世界に、これでもかというぐらい克明に追ったドキュメントだ。
「イケてない」という邦題がついているが、原題は「THE NEW COOL」。
この大会の発起人は、ロボコンを通して社会やアメリカを変えることを願っている。技術こそ社会を良くする最上の方法であり、アメリカの競争優位を保つ唯一の手法であるという信念が土台になっているという。
そしてそんな場でこの厳しいプロジェクトに取り組む学生達こそ、新しい世界の「COOL」な人なのだ。
……というのが普通の読み方かもしれないが、デバプラ的には技術的な面や参加者の苦闘ぶりにアツくなってしまう。
例えば具体的な部品の名前まではでてこないものの、技術的な難題や解決に至るまでの道筋、メンバーの喜び、葛藤、傷心、奮起等々が細かく細かく書かれており、ロボコンやモノづくりの現場にたつ人なら思わず引き込まれる。ニヤっとしたり「あるある」だったり、はたまた目頭を熱くしたり……。
もちろんそれを楽しむだけでもいいし、実際にロボコンに参加している人なら、戦略・戦術のヒントを得るためだったり、問題解決の事例集としても読めるかも。
心からの一言に奮い立つ
こちらは、体力的にも精神的にもボロボロになりながら、艱難辛苦(かんなんしんく)を乗り越えてロボットを完成させたメンバーの一言。
「いま、トロフィーをもらえないかな?」
「そうそう!」という人も多いのでは?
期限までにマシンを完成させたという自信。やりきったという自負。勝敗は二の次。
もちろん大会で勝つことが目的で、それが重要なのは当たり前だろう。しかし、この学生時代の取り組みそのものが、また自分達の力で何かを成し遂げる経験が、その後の人生を変える。社会だってより良く変えられるかもしれない。
……そんな力強いメッセージにあふれた、折れた心にもそうでない心にも火をつけてくれる一冊。
『ロボコン イケてない僕らのイカした特別授業』
ニール・バスコム 著 松本 剛史 訳 集英社 刊
http://www.amazon.co.jp/dp/4087734854