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Lチカを超えて電子工作をちゃんと知るための「n講」

第3回:温度センサの仕組み

しっかりとした正しい知識を基礎から学び、長く電子工作を楽しむことができるようになることを目的とした今回の連載。分かりやすく解説してくれるのは、金沢大学電子情報通信学類教授の秋田純一先生です。第1回ではToF距離センサ、第2回では加速度センサの仕組みを解説してもらいましたが、第3回となる今回は温度センサについて紹介頂きます。

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目次

  1. いろいろな温度センサ
  2. 温度センサの使い方
  3. まとめ

 

1. いろいろな温度センサ

マイコンを使って何か作るとき、温度を計測したことって、よくありますよね。例えば気温を計測したり、最近だと非接触で体温を計測したり…。こういうときは、いわゆる温度センサを使うことになるわけですが、これまたいろいろな種類があって、選ぶのに困ってしまいます。例えばスイッチサイエンスのサイトで「温度センサ」で検索すると200件近くの製品がヒットします。

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スイッチサイエンス商品ページのスクリーンショット

 

電子工作でよく使われる温度センサには、大まかに分けると、次の4種類があります。

  • サーミスタ
  • 半導体式
  • 熱電対
  • 赤外線放射型

それぞれに特徴があって、用途にあわせて使い分けたいところですが、まずはそれぞれどのような特徴があるのか、順に見ていきましょう。

サーミスタ

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サーミスタの例((株)村田製作所:NXFT15XH103FA1B025)

 

金属の酸化物には、電気抵抗が温度とともに変化する素材があり、そのような素材を使った温度センサを「サーミスタ」と呼びます。サーミスタには、素材によって、温度が上昇すると抵抗が大きくなるタイプ(PTC: Positive Temperature Coefficient)と、抵抗が小さくなるタイプ(NTC: Negative Temperature Coefficient)の2種類があります。小型で安価という特徴があり、特性をうまく使うと簡単な回路で温度を数値で読みやすいNTCサーミスタがよく使われるようです(NTCサーミスタの特性と計測方法の原理について詳しく知りたい方は、こちらのReferenceの情報が参考になるかと思います)。

  • 長所:小型・安価
  • 短所:計測値から温度への換算式が非線形

半導体式

ダイオードやトランジスタなどの半導体素子は、原理上、その特性が温度とともに大きく変わります。それは、半導体の中では電子とホールという2種類の電流の実体(キャリア)があり、その密度を決めるボルツマン分布が、温度を含む式であるためです。例えばダイオードのデータシートをみると、電圧-電流特性が温度によって大きく変わることがわかります。

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ダイオードの温度特性の例(ローム:RB550VAM-30のデータシートより)

 

その特性を使って、温度を計測する温度センサが半導体式です。半導体素子の特性上、計測できる温度の範囲が他より狭めではあるのですが、他の回路と同じ半導体チップに集積できるため、A/DコンバータやI2Cなどが載っていて、マイコンから制御しやすいものが多いのが特徴です。

  • 長所:マイコンから制御しやすい
  • 短所:やや高価、計測できる温度の範囲が狭い

熱電対

2種類の金属を接合したところには、微小な電圧が生じるという現象があるのですが、その電圧は、温度に比例して変化するという性質(ゼーベック効果)があります。その温度変化の割合は金属の種類によって正確に決まり、また非常に広い範囲で一定であるという性質があります。

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熱電対の例(https://www.switch-science.com/catalog/2976/ より。赤丸の部分が熱電対本体の金属接合部分)

 

この性質を使った温度センサを熱電対(ねつでんつい)と呼びます。例えばよく使われる「K型熱電対」は、ニッケル・クロム合金とニッケル・アルミニウム合金からなりますが、-200℃から+1200℃という非常に広い範囲の温度を計測できます。この2種類の金属線が接合されている先端部分を、温度を計測したいところにとりつけます。ただし電圧変化が非常に小さいため、それを増幅する専用のアンプ(熱電対の金属の材料ごとに、その温度係数にあわせた専用のものがある)と組み合わせて使うことが一般的です。

  • 長所:非常に幅広い範囲の温度を計測できる
  • 短所:専用のアンプと組み合わせて使うのが現実的

赤外線放射型

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物体から放射される電磁波と物体温度との関係

 

物体からは温度に応じたスペクトルの電磁波が放射されるという性質があるのですが、室温付近では赤外線が多く放出されることが知られています。つまり赤外線の波長ごとの強さを計測すれば、物体の温度を計測することができることになります。このタイプの温度センサ(赤外線放射型)は、他の温度センサと違い、計測対象の物体から離れたところから温度を計測できる、という大きな特徴があります。

  • 長所:非接触で温度を計測できる
  • 短所:高価、精度が低め

 

2. 温度センサの使い方

サーミスタ

例えばこちらのGrove温度センサは、NTCサーミスタに、バッファ用のオペアンプをつないだ構成になっています。

https://www.switch-science.com/catalog/806/

使い方のプログラムの例はこちらに載っています。

https://wiki.seeedstudio.com/Grove-Temperature_Sensor_V1.2/

アナログ電圧の計測値から温度への換算式は、プログラム中のこの部分です。

float temperature = 1.0/(log(R/R0)/B+1/298.15)-273.15; 

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analogRead()値と温度の関係を求めたグラフ

 

一見複雑そうですが、プログラム中にB=4275、R0=100000と定義されていて、これをグラフにしてみると、この図のように、10℃から35℃ぐらいの範囲であればほぼ直線とみなせそうなので、もっと簡単な1次関数の式で温度へ換算しても、それほど大きな誤差にはならなさそうです。

半導体式

半導体式のものは、温度センサ単体のものから、最近だと湿度・気圧のセンサもセットになったものなど、いろいろなバリエーションがあります。例えばこちらの製品は精度が高めで、精密な測定に向いていそうです。使い方は、他のI2C接続のセンサとだいたい同じで、Arduinoであればライブラリのインストールのあと、サンプルスケッチへ進めばOKです。

https://www.switch-science.com/catalog/3986/

熱電対

熱電対の専用アンプも、いろいろな製品があります。例えばこちらの製品は、I2C接続で普通の温度センサのように使えます。セットになる熱電対(この製品ではK型熱電対)もお忘れなく。なお、温度計測対象の物体が非常に高温になる場合は、熱電対の先端を接触させるのにボンドやセロテープでは溶けてしまいますので、高温にも耐えられる耐熱テープ(カプトンテープ)を使うようにしましょう。

https://www.switch-science.com/catalog/5345/
https://www.switch-science.com/catalog/2976/

赤外線放射型

赤外線放射型の温度センサは、2020年初旬から、新型コロナ感染症の流行拡大に伴って体温計測のニーズが高まったことから、品薄状態が続いているようです。多くの製品はI2C接続して、普通の温度センサのように使えるものが多いようです。
https://www.switch-science.com/catalog/5220/

また、赤外線放射型温度センサをカメラの画素のようにアレイ状に並べたタイプの製品もあり、簡易のサーモカメラとして使えます。

https://www.switch-science.com/catalog/1297/
https://www.switch-science.com/catalog/4056/

 

3. まとめ

センサの仕組みを解説していく本連載。第3回は温度センサについて紹介していきましたが、いかがでしたでしょうか?センサを紹介する本シリーズここでいったん終了しまして、次回からは新シリーズが始まります。こちらもご期待ください!

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Arduinoでスマートウォッチを作ろう
秋田純一

金沢大学 電子情報通信学類 教授。子どもの頃から半田の煙で育ち、集積回路の研究の道へ。ホビーとしての電子工作とのつながりとして、集積回路がMakerの道具となる世界を目指して、LチカLSI動画なども研究テーマにおいている。無駄な抵抗コースターなどMakerとしても活動。好きな半田はPb:Sn=37:63、好きなプロセスはCMOS0.35um。