フライバックトランスを利用したプラズマスピーカの制作

第4回:放電の動作確認

第1回:PWMの基本とTL494
第2回:制御回路の組み立て
第3回:レベルメータの取り付け

 

プラズマスピーカの制作を紹介する本連載。執筆頂くのは、日本で唯一の「テスラコイル実演サービス」をおこなっている、つくば科学株式会社代表取締役で、これまでもさまざまな工作記事を発表されてきた菊地秀人さんです。最終回となる第4回では、放電の動作確認を紹介していきます。

 

目次

  1. フライバックトランスの準備
  2. 制御回路との接続
  3. フライバックトランスと放電電極の接続
  4. オーディオプレーヤーを接続して最終確認

 

1. フライバックトランスの準備

前回に引き続き動作確認をしていきましょう。フライバックトランスの1次コイルとしてコアに銅線を巻いていきます。

plasma-speaker-with-flyback-transformer-04-01

 

コアの隙間にAWG24程度の銅線を巻きつけていきます。巻数は約10回程度にします。巻数を少なくすれば流れる電流が多くなり、相対的に2次コイルの巻数も多くなるため放電距離は伸びると思われます。

しかし、電流が多くなる分、MOSFETや電源も強化しないといけないですし、発熱も多くなります。巻数を多くすれば電流は少なくなり、また相対的に2次コイルの巻数は少なくなるため、放電距離は短くなっていくものと予想されます。試行錯誤しながら最適な条件を探ってみるのも良いでしょう。

 

2. 制御回路との接続

フライバックトランスに巻きつけた銅線を制御回路と接続します。

plasma-speaker-with-flyback-transformer-04-02

 

このような端子台は本来「フェルール端子」という圧着端子と共に使用するものです。銅線をそのまま差し込んだ場合、抜けてしまうことがあるので注意しましょう。

plasma-speaker-with-flyback-transformer-04-03

plasma-speaker-with-flyback-transformer-04-04

 

フェルール端子を実際に使用する際には、指定の長さだけ銅線を剥き、端子を差し込みます。そして専用の圧着工具で圧着して取り付けが完了します。最近、秋月電子でも取り扱いが始まりましたが、圧着工具が少し高価です。Amazon等で安価な中国製のフェルール工具セットを購入することができるので、そちらを利用するのも一つの手です。フェルール端子を使用しない場合は、ハンダメッキをすることで少しは良い状態にはなります。

 

3. フライバックトランスと放電電極の接続

ここからの作業は高電圧を扱うことになるので、細心の注意を払い作業することを心がけてください。

第1回目の記事にて紹介した「BSC25-T1010A」というフライバックトランスを使用しますが、それ以外のフライバックトランスを使用することもあるかと思います。

plasma-speaker-with-flyback-transformer-04-05

plasma-speaker-with-flyback-transformer-04-06

 

内部回路図とピンアサインの情報がわかっていれば扱いやすいですが、型番が不明な場合など内部回路が不明な場合があるでしょう。その場合、一番放電距離が長くなり、他の場所で放電しないピンの場所が2次コイルとしての巻数が多い場所となります。実際にピンアサインを探るところから作業してみましょう。

plasma-speaker-with-flyback-transformer-04-07

 

フライバックトランスを観察するとこのように一番太い電線が1本上部より出ていることがわかります。その他の電線は今回の用途には必要ありませんので、切断してしまっても大丈夫です。

plasma-speaker-with-flyback-transformer-04-08

 

太い電線は被膜がとても厚く、高耐圧電線ということがわかります。しかし、フライバックトランスの規格外使用となりますので、安全のため高電圧用の手袋をするか、割り箸等で電線を保持するなど人体に放電することの無いように作業をしたほうが安全かと思われます。

plasma-speaker-with-flyback-transformer-04-09

plasma-speaker-with-flyback-transformer-04-10

 

制御回路の電源を入れると音声入力がなくても放電が始まります。その状態で、電線をフライバックトランス下部のピンに近づけていきます。このときに一番長い距離放電し、なおかつ他の場所で放電が起こらないピンを対の端子として使用します。

適当な電線等で両方の端子を延長し、釘など適当な金属片を取り付けておくと放電の熱に耐えられるようになります。電線同士で単純に近づける場合は電流を多くしないように注意しましょう。電流が多い場合、発熱し、電線の被膜が溶け、炎上する場合があります。

派手な音が出ずに常に放電が繋がっている状態(間隔5mm程度)で電極をセッティングします。

 

4. オーディオプレーヤーを接続して最終確認

前回の記事にて圧電スピーカで動作確認をしたと思います。フライバックトランスに変更したため実際の放電音を聞いて、VR1, VR2の半固定抵抗を調整してみましょう。放電の色が赤くなるにつれて火花放電からアーク放電に移行するため流れる電流が増えて発熱も増えていきます。そのため放電が青い状態が長時間稼働させやすいです。できるだけ放電が青い状態で、音質良く調整することが望ましいです。

plasma-speaker-with-flyback-transformer-04-11

 

 

調整次第にはなりますが、結構良い音質で音楽が聞こえると思います。

プラスマスピーカの製作記事としては今回で最後となりますが、この記事をきっかけに高電圧に少しでも興味を持っていただければ幸いです。

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

今回の連載の流れ

第1回:PWMの基本とTL494
第2回:制御回路の組み立て
第3回:レベルメータの取り付け
第4回:放電の動作確認(今回)

アバター画像

つくば科学株式会社代表。回路設計からプログラミングまで幅広く取り扱っています。趣味は工作で、稲妻を発生させるテスラコイルや、レーザープロジェクタ、ジェットエンジンなど見た目が派手なものをよく作ります。

http://pc-jp.net/

出場ロボット解剖計画