「あの時のピットvol.11」
学生ロボコン2024 ローム賞受賞校に聞く 金沢工業大学【後編】

「NHK学生ロボコン2024」でローム賞を受賞した金沢工業大学「鷹蓮(オウレン)」のメンバーとともに、前後編で大会を振り返る。

完全自動制御、画像識別、機体のサイズ制限……。厳しいルールに立ち向かい、機体を完成させたメンバーたちは、いよいよ大会を迎える。後編では試合の様子をお届けする!

 

前編:「あの時のピットvol.11」 学生ロボコン2024 ローム賞受賞校に聞く 金沢工業大学【前編】

 

■相次いだ直前のトラブル

画像識別の開発に時間がかかり、大幅に遅れていたロボットの調整作業を続けるなか、大会に向けた発送の1時間前にR2の自己位置を算出するための機構が破損するというトラブルに見舞われた。大慌てで修復したものの、学校で動作確認ができないままの状態でロボットを発送。大会前日に正常に動作することを確認するまで、不安な時間が続いた。

さらに、大会前日の最後のテストラン直前には、R1に搭載されていたモータ制御基板が2枚故障していることが判明し、急遽交換することに。原因がわからず、他の基板や配線の確認も必要と判断。テストランの合間に急いで基板の交換をし、何とか次のテストランまでに作業を終えた。

回路班の渡会さんは「今年は基盤の不良が多く、ずっと手に汗握っていた。動け、と願いながら修理を見守っていた」と話す。高い目標に向けた挑戦にはトラブルはつきもの。とはいえ、時間は刻々と迫ってくる……。そんな不安な状態を切り抜けられたのは、密なコミュニケーションで培っていたチームワークと、メンバーの「ロボコンが好き」という思いがあったから。心配と楽しみ、半々の気持ちで、チームは当日を迎えた。

大会前日のピットの様子

■あの時のピット

九州大との第一試合は、試合開始の合図とともに、R1が自慢の機構を駆使し、まず8つの苗を回収してプラント。その後さらに4つの苗もテンポよく植え、エリア2に移動してハーベストを開始した。途中、ミスで強制的にリトライとなるも、堅実にハーベストを重ねて得点し、勢いづいた。しかし、R2が動かないトラブルが発生。完全自動のため、リカバリーが難しく、再起動をしても動かなかったが、R1の手堅い動きのおかげで終了間際に逆転し、110対130で勝利を収めた。

 

R2のログにはプロセスが強制終了していた痕跡があり、想定外の挙動からイレギュラーな処理が行われ、動かなくなってしまったと判断。しかし、短時間での原因の特定は難しく、そのまま第二試合に突入した。

第二試合の相手は東京工科大。今回も試合序盤に順調なプラントでリズムをつかみ、リトライをしながらも、ハーベストを9回成功させた。やはりR2は試合を通じて動かず、R1が健闘したものの、260対200で敗北し、悔しい予選敗退となった。

■大会を振り返って

実は、試合中に、R1操縦者から「ロボットの挙動に遅延などの違和感がある」と、通信が不安定な場合に起こる症状が報告されていた。R2が動かなかったのは、操縦機とロボットに搭載されているPC間の通信がうまくいかず、PC側で動作の開始命令が正常に受信できなかったから――。気づいたのは試合が終わった後だった。

今大会で得るものは多かった。R1、R2ともに配線を担当した渡会さんは「ずっとエラーが出て修理、調整をし続けたけど、試合でロボットを動かすことができた」、機械班の田中さんは「これまでできなかった制御回路に合わせた開発ができた」と手ごたえを感じていた。残念ながら本番で活躍する姿を見せられなかったR2も、学校ではうまく動き、新しい技術をつかむ確かな一歩となった。

※金沢工業大学のR2が動く様子はこちら。この動きを本番でも見たかった。

大学に残ったメンバーも、奮闘するピットとともに戦った。試合前に相手陣地の2色のボールをお互いに並べるゾーン2は、色の配置にもこだわった。相手ロボットの特長を分析し、ボールを取るのになるべく時間がかかるよう、対戦相手によって並びを変えた。山﨑さんは、「ぎりぎりまでロボットの調整をしつつ、同時に対戦相手の分析をして戦略を練るというチームワークで乗り切りました」と話す。

■世界一を目指して

「ABUロボコンで優勝したい」。金沢工業大学が最後に優勝した2013年のABUロボコンの開催国・ベトナムで行われる今大会に、特別な想いがあった。先輩たちが日の丸を背負い、優勝して世界一に輝いた記録を塗り替えようと、チーム一丸となって1年間取り組んできた。

日々夢中で開発に取り組むなか、2024年元日には、地元を能登半島地震が襲った。「こんな時だからこそ、優勝した姿を見せて、地元の人に元気を届けたい」という気持ちで臨んだ大会。予選敗退という結果に、「先輩たちからのバトンをつなぐことができなかった」と肩を落とすが、「来年の大会で後輩達に頑張ってもらうためにも、技術力を高めてしっかりとサポートしていきたい」と話す。いくつもの困難を乗り越えてきたメンバーは、次のスタートに向けて、もう前を向いている。

表彰式で「ローム賞」を授与されたメンバー

1年間、チーム一丸となりロボコンに取り組んだ

 

金沢工業大学 夢考房ロボットプロジェクト

 

今回の連載の流れ

「あの時のピットvol.11」 学生ロボコン2024 ローム賞受賞校に聞く 金沢工業大学【前編】

「あの時のピットvol.11」 学生ロボコン2024 ローム賞受賞校に聞く 金沢工業大学【後編】(今回)

アバター画像

エレクトロニクスやメカトロニクスを愛するみなさんに、深く愛されるサイトを目指してDevice Plusを運営中。

https://deviceplus.jp

高専ロボコン2018解剖計画