ローム株式会社主催のアイデアコンテスト「ROHM OPEN HACK CHALLENGE」に登場する4つのキットに焦点を当てた、ロームグループのエンジニアインタビューシリーズ。第3回目の本記事に登場するのは、マイコンボードLazuriteを開発した、ラピスセミコンダクタの齋藤さんです。
──はじめに、どういう着眼点でLazuriteを開発されたのかをお聞かせください。
IoTとMakersの流れの中で、すごく多くの人が、身近なアイデアで電子回路を触りながらものづくりに挑戦するようになりました。しかし作ってはみたものの、まともに使えなくて「ガッカリした人」がけっこういます。
ガッカリの理由は「電力問題」と「無線問題」の2つです。Arduinoを使って一生懸命作り上げたのに電池が一日程度しかもたなかったり、広い展示会で披露しようとすると無線が繋がらなかったりするんですよ。
ラピスの半導体のなかには、太陽電池でも動く非常に低消費電力のマイコンや、スマートメーターや火災報知器に使用されている920MHzの無線があります。この二つの半導体を用いて、誰もがガッカリせずにものづくりができるマイコンボードを作ってみよう、と。Lazuriteの消費電力はArduinoの約10分の1(待機時)に抑えましたし、920MHz帯の電波は4〜500mの長距離通信を実現しました。
──Lazuriteを開発するうえで、特に工夫されたことはありますか?
2年前、新規事業開拓プロジェクトに配属されてからは、週末ごとにいろんな展示会やモノづくりのコミュニティに参加しましたね。さきほど挙げた、“2大ガッカリ”もユーザーとの交流のなかで見出すことができました。
──「ユーザーの課題を解決する」ということを、開発の軸にされたのはどうしてだったのでしょう?
中学生たちの声を直接聞いたことが大きかったです。僕らが子どもの頃は、パソコンも高価で「おこづかいでマイコンボードを買って遊ぶ」なんて無理でした。今は、中学生がネットでいろいろ調べながら面白いモノを作ることができるのに、「苦労して作り上げたモノが使えない」なんて大問題です。子どもたちの問題は、大人が解決しなきゃいけないだろう!と思いました。
Lazuriteには、今の子どもたちに、僕らにはできなかった自由なモノづくりをしてほしいという願いもこめられています。
──Lazuriteを「こんな風に使ってほしい」と想定している用途はありますか?
Lazuriteの特徴をうまく活用して、長時間の遠隔モニタリングが必要ないろんなモノづくりをしてもらいたいです。
たとえば、大学生が作ってくれたプロトタイプに、冷蔵庫の牛乳残量をモニタリングするというものがありました。僕はそのアイデアを聞いて、いろんな食品や消耗品に応用できる可能性があると思いました。あと、面白かったのはLazuriteを使ってイノシシの罠を作った人がいたこと。設置した罠に動物が捕まると通知がくるので、毎日罠を見に行く必要がなくなるわけです。
──今後の開発予定について教えてください。
身につけられるくらいに小型化する予定です。また、昨年のCEATECではLazurite Sub-GHzをベースに、無線通信IC、センサ、モータドライバをSDカードサイズに凝縮したモジュールLazurite Flyを搭載した折り鶴を飛ばしたのですが、Lazurite Flyもいずれはみなさんにお届けしたいと考えています。
「Lazurite Fly」が実現する折り鶴飛行体 – 飛行デモンストレーション – (CEATEC JAPAN 2015)
──最後に、ROHM OPEN HACK CHALLENGEで生まれるアイデアに対する期待を聞かせてください。
どんなアイデアが出るかドキドキしています。暮らしに密着した何か、あるいは「ドローン作っちゃいました!」とか、いろんなアイデアが出てくるといいなと思っています。
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