高専時代、仲間と共にロボットづくりに没頭した2名のローム社員にインタビューしました!ロボコンに捧げた“青春”は、仕事にどのように生かされているのでしょうか。
プロフィール
Tさん
ローム株式会社 ものづくり革新部所属 半導体製造装置の設計担当。
茨城工業高等専門学校 電子制御工学科出身。
2013〜15年は主要メンバーとして、2016年はサポートメンバーとして高専ロボコンに参加。
Sさん
ローム株式会社 LSI事業本部所属 ICの開発担当。
大分工業高等専門学校 電気電子工学科出身。
2013〜17年の5年間高専ロボコンに参加、5年次には部長を務める。
2016年地区大会優勝、全国大会準優勝、2017年地区大会優勝、全国大会ロボコン大賞を受賞。
―まずはお二人が現在関わっている業務について簡単に教えてください。
S:製品開発業務です。 内容としては、回路チップの回路設計とシミュレーション、レイアウト、発注作業、設計したICの評価まで実施しています。
お客様のニーズに合った製品を作るためには、一度で成功するのは難しく、回路設計から評価まで何度もやり直しています。自身の設計した通りにICが動いたときは達成感を感じます。
T:私は現在、半導体製造装置の電気設計・ソフトウェア作成を主業務として担当しています。具体的には、製造プロセスを実現させるためのアイデアを出し、アイデアを図面に起こしてレビュー、製作・デバッグといったことを行っています。
関係者間で決めた製造プロセスや製造スピードに応えられるよう、日々スキルアップに精進しています。
――Tさんは2013〜16年、Sさんは2013〜17年と同時期に高専ロボコンに参加していたそうですね。思い出深いテーマや試合はありますか。
T:一番思い出に残っているのは、メインで関わった3年生のときです。「輪花繚乱」という輪投げがテーマで、いかに輪を投げるかを考えるのが一番の課題でした。全員でアイデア出しをして、「これは難しそうだ」「こういう機構だったらできそうだ」と検討を重ねて、最終的にはバネで力を貯めて発射する機構を採用しました。
いざ関東北信越大会へ行ってみると、群馬高専のカウボーイのようにくるくると回して輪投げをするものなど、「こんな発射方法があるのか」と想像のはるかに上をいくロボットが数多くあって驚きました。3年生になると、ロボットに対する解像度が上がってきて、「この学校の、この機構はすごい」という深い部分まで見えるようになってくるので、非常に興味深い年でした。
S:群馬高専の「上州カウボーイ」は全国大会のときに実物を見ましたが、すごく印象に残っています。
僕は2016年に全国大会で準優勝したこともうれしかったですが、最後の出場となった5年生の「大江戸ロボット忍法帳」のときが一番の自信作でした。ロボットがチャンバラをして相手チームの風船を全て割ったら「Vゴール」というルールだったので、ぶつかっても押し負けない、仮に倒れてもすぐに起き上がれるように対策をした上で、ヤスリを当てて風船を割るロボットをつくりました。
「絶対に勝てる」と自信を持って全国大会に臨んだのですが、地区大会では勝利していた北九州高専にリベンジされてしまいました。全国大会で優勝できなかった悔しさとロボコン大賞を受賞できたうれしさと、両方の気持ちが混じり合って一番思い出に残っています。
―お二人とも電子部品や半導体を用いて回路設計する「回路班」を担当されていたと聞きました。どんなところに面白さややりがいを感じていましたか。
S:自分たちで基板をつくって回路を設計して、人が触れていないのにロボットが動くことが魔法みたいでワクワクします。僕はセンサが大好きで、ローム入社後も加速度センサの評価ボードの開発などを行ってきました。
T:僕も似ていますが、回路を使うことによって、電気という「見えない力」がモータやLEDという「見える力」に変わるところに面白さを感じます。ちなみに、僕が好きな部品はLEDです(笑)。
―「回路班」での技術的なスキルは現在の仕事にも直接的につながるところも多いと思います。それ以外でロボコンの経験はどのように仕事に生かされていますか。
T:4年生のときにサポートメンバーとして1年生への技術指導を行っていたのですが、意識していたのは相手が理解できない言葉を使わないこと。1年生は少し前までは中学生だったので、技術的な専門用語に触れる機会も多くない。伝える時には何かに例えることを心がけていました。教える技術を身につけたいと、4年生からは塾講師のアルバイトをしていました。
そのときの経験を生かし、今は部署内の新入社員の教育担当を任されています。きっと上司からも「Tは教えるのがうまい」と評価されているのではないかと感じています。
S:私はチームリーダーとロボコン部の部長もしていたので、トラブルがあったときなどに臨機応変に対応できるように常に手を空けておくこと。そして、40名弱の部員が悩んだり困ったりしていないか、常に気を配ることを意識していました。
そうしたコミュニケーション能力は仕事にも生かされていると感じます。ものづくりをする上で「回路」「機械」「デザイン」の各班の認識合わせは不可欠ですし、初対面の他高専の人と交流をする機会もあります。細かいところでは、体育館の使用許可を取るために他の部活と交渉することも多いので。今仕事をする上で、社内だけでなく、外部のパートナー企業とのコミュニケーションで困らないのは、高専時代の経験が大きいと思います。
T:ロボコン部は学生が主体的に動く機会が多く、例えば関東甲信越ではオフの期間に学生が主催の交流会が行われます。僕も4年生のときには交流会の運営に携わってかなり忙しかったのですが、会場の準備など主催者側の大変さを感じられるよい経験になりました。大会まではライバルですが、交流会ではみんなで資料を持ち寄って、「あの機構はどうなっていたの?」と意見交換をしたりして、とても楽しかったです。
――終わったら、包み隠さず技術面の情報交換されるんですね。
T:毎年テーマが全く違うので、大会が終われば話せるのがロボコンのいいところです。
S:学生がレベルアップできるように考えられているのだと思います。うちの大分高専でもオフシーズンは他の高専との交流を深めていました。優勝校を招いて、どういう技術を使っているのか話を聞いた上で、1、2年生を主体に優勝ロボットを再現して自分たちの技術のレベルアップを図っていました。
―最後に、これから始まる今年の大会についてお伺いします。今年のルール「ロボたちの帰還」ではどんなところがポイントになりそうでしょうか。
T:ロボットがロボットを投げるというルールは前例がないので、投げられたロボットが着地して動くというだけでもかなり盛り上がる大会になるんじゃないでしょうか。
S:投げられたロボットがボールとボックスを持ってどのように元のエリアまで戻ってくるかもポイントですね。
T:何試合かするとロボットが衝突で変形しそうなので、予備が必要になるかもしれない。テーマが難しい分、楽しみです。今年も盛り上がる大会になることを期待しています!