猫と触る教育版レゴ マインドストームEV3〜LEGOでロボットやプログラミングが学べる!?

LEGOといえば子供の頃、誰もが遊んで夢中になったあのブロックです。そのLEGOで楽しみながらサイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学の知識を体験的に学習することができる教育用ロボットプログラミング教材「レゴ マインドストーム」をご存じでしょうか。

LEGO社とマサチューセッツ工科大学(MIT)の共同開発による「レゴ マインドストーム」の誕生は15年前にさかのぼり、発売から15年、レゴ マインドストームRCX、NXTと続き2013年9月に新たにパワーアップしたモデルEV3が発売されました。

今回は家庭でも楽しみながらプログラミングの学習をすることのできる、「EV3 デスクロボ デビューセット」を教育版レゴ マインドストームの日本での販売代理店である株式会社アフレル様よりお借りする機会に恵まれましたので、触ってみたいと思います!

自己紹介が遅れました。ギークを愛するデザイナー、コエリと申します。ガジェットや写真が大好きです。最近一児の母になり、ギークマム目指して育児に奮闘中の毎日です。

猫も興味津々なEV3の中身

大学時代に、マインドストームRCXを授業で触ってみたことがあるものの、その記憶は遠く彼方(かなた)。当時はアセンブラの教材として触ったため、レゴが楽しいというよりもアセンブラって難しい…、という記憶の方が強いのですが、EV3ならきっと大丈夫に違いない!

早速お借りした「EV3デスクロボ デビューセット」を広げてみると、我が家の愛猫ロジィ(6歳・♀)さんも興味津々の様子。

01_ev3open

写真1

前作のNXTと比べると処理速度やメモリなど基本性能の大幅な向上と、角度を計測するジャイロセンサーの追加が大きなアップデートのようです。

さぁ、触ってみるぞ

これがEV3の心臓部となるコンピューター「インテリジェントブロック」です。

02_inteligentblock

写真2

上側に出力ポート、下側に入力ポートがそれぞれ4つ。

 

03_inteligentblock

写真3

04_inteligentblock

写真4

側面にはUSBポートとSDカードスロットがついています(写真3、4)。

センサーによって計測したデータをリアルタイムにファイルへ書き出すデータロギング機能が使えるようになったのもEV3での大きな目玉だそう。

このインテリジェントブロックにいろいろとセンサーやモーターを付け足して、ロボットを組み立てていきます。

入っていたセンサー&モーターは、インタラクティブサーボモーター(LとMの2サイズ)、超音波センサー、カラーセンサー、タッチセンサー、ジャイロセンサーの6種類。別売りで温度センサーもあるようです。

05_sensor

写真5

例えばEV3で新たに追加になったジャイロセンサーは、ゲームのコントローラーなどに使われているセンサーです。傾きを検知して傾き角度に応じて音を鳴らしたりバイブレーションしたりといったように、私たちの身の回りのいろいろな場所でセンサーが大活躍しています。

それこそ、火星探査機キュリオシティのような宇宙で活躍するロボットだって、つまりはセンサーの集まりだと思えば急に身近に思えてきませんか?

「EV3デスクロボ デビューセット」のワークブックに沿ってひととおり触ってみると、基本的な使い方と組み立てのコツが学べるようになっているようなので、まずはこの冊子に沿って作ってみることにしました。

06_workbook

写真6

字の書かれていない、この組立図、まさにレゴ!って感じです。

早速つくってみた

インテリジェントブロック単体だと無機質な四角いカタマリな感じですが、いろいろパーツをつけていくことで、ちょっとずつ愛嬌(あいきょう)がでてきます。

まずはカラーセンサーを使ってライントレース。

07_linetrace

写真7

ライントレースは電子工作といえば鉄板ネタですが、実際に組み立てて動く様子を見ると単純に楽しい!インテリジェントブロックの液晶に顔を表示したりもできて、レゴならではの愛らしさがこんなところに見え隠れします。

次は、サーボモーターを使って缶を持ち上げてみました。

08_lift-a-can

写真8

おおー、ちゃんと持ち上がってる!と動作させながらちょっと感動。

調子に乗って愛猫・ロジィさんを挟もうとしたらにらまれました。

09_lift-rogie

写真9

そして次は、超音波センサー使って障害物の認識。

10_ultrasonic

写真10

ロジィさんを見つけて見事止まってくれました。

そして、ジャイロセンサーを使ったふくろうロボット。なんだかすごい迫力。

11_owl

写真11

振り子のように徐々に振り幅が大きくなるタイミングをジャイロセンサーで見計らって、良いタイミングでキックするというロボットです。

こんな感じで、ワークブックに沿って組み立てたら普段はロボットとはあまり縁のない私でも、いろいろなタイプのロボットを組み立てることができました。

ロボットの動作制御はパソコン上のソフトウェアでプログラミングしてインテリジェントブロックに転送して行います。

12_software

写真12

アイコン化されたさまざまな処理をブロックのように視覚的に組み立てて行う、アイコンベースのプログラミングソフトウェアが付属しているので、直感的なドラック&ドロップ操作でプログラミング未経験の人にも分かりやすいインターフェースになっています。

数字をいじってどんな風にロボットの動き方が変わるのか、すぐに体感できて次々にいろいろなことを試したくなるあたり、さながら気分はエンジニア。

付属のワークブック「デスクロボ」では、なぜこういった制御が必要なのか1ステップずつ納得しながら学べるようになっており、小学生くらいの子どもでも保護者がサポートしながらであれば十分楽しめるのではないかと思います。

たくさん触って遊んだ後も、専用ケース付きなので片付けや収納がラクチンなのもうれしいところ。EV3は主に教育機関向けに販売されているものですが、個人で楽しみたい人でも購入できます。

猫が遊べるおもちゃロボットを作ってみる

さて基本の組み立て方を理解できたところで、せっかくなので今回はEV3でロジィさんのためのおもちゃを作ってみました!

こんなの。

13_toy-for-rogie

写真13

超音波センサーとサーボモーターを組み合わせて、ロジィさんに近づいたら停止し、猫じゃらしを振り回すというシンプルなものです。後方でロジィさんコチラの様子を伺っています。

プログラム全体像はこんな感じ。
左から右へと処理をつなげてプログラムをしていきます。

14_program

図1

細かく見ていきましょう。

まず、while文に相当するループアイコンの中に実行したい処理をいろいろと連ねていきます。液晶表示の初期化、超音波センサーで取得した値によって処理を分岐、分岐した先でさらに具体的な処理をプログラムしていきます。

15_program-detail

図2

ループアイコンがないと単純に、処理を1度だけ実行してプログラムを終了してしまいますので、今回のように常に障害物(猫)を探し続けて欲しいといった処理の場合は、ループアイコンを置くようにします。

液晶表示を初期化している緑のアイコンは、液晶表示に関する動作アイコンです。

16_program-detail

図3

このアイコンに限らず全てのアイコンはこのように動作をプルダウンで選ぶことができるようになっています。ここでは分岐によって画面表示を変えたいのでループするごとに「画面のリセット」で画面表示を初期化するようにしています。

普通のプログラミングでいうif文に相当する分岐アイコンも、動作をプルダウンで選んで処理を決定します。

 

17_program-detail

図4

図4では、障害物(猫)の存在を検知するために超音波センサーを使っているので「超音波センサー > 比較 > 距離」を選び「30」という数値を入力しました。これで、「30cmより近い距離で何か物体を検知したら上段の処理」、「何も検知しない場合は下段の処理」、という分岐ができました。

分岐後、上段は猫じゃらしを振る処理、下段は障害物を探して前進する、という動きになります。

18_program-detail

図5

単なる直線移動だとロジィさんが物足りないと思いますので、ランダムに数値を生成する赤の演算アイコンを使って、ちょっと動きに変化をつけてみました。

他にも、switch文や四則演算など、プログラミングにおける基本的な構文もアイコンとして準備されていますので、EV3で楽しみながらプログラミングの基礎を習得することができるようになっています。

さて、肝心のロジィさんの反応は…

19_rogie

写真14

くんくん。

20_rogie

写真15

何だコイツ?

警戒しながらも近づくロジィさん。

21_toy-for-rogie

写真16

でも警戒しっぱなしでくいつきがイマイチなので、長い猫じゃらしもつけてパワーアップ!

22_rogie

写真17

あ、これは!

23_rogie

写真18

やあっ。やあっ。

くいつき10倍アップ! しかし、テーブルの上にロボットを置いて、単純に左右に振り回しているだけなら超音波センサーの意味があまりないような。あれれ。

まぁそんな感じで、ワークブックに載っていたサンプルを少し応用するだけでこのように、オリジナルのロボットをすぐに組み立てることができるのは、とても楽しいですね。

最後に並んで、ツーショット。

24_2shot

写真19

若干物足りない感じのロジィさん。

もう少し勉強して今度もっとすごいの作ってあげるからねー!

EV3のスゴイところ、イマイチなところ

いろいろ触ってみたところで私なりに感じたEV3について。

スゴイところ:インテリジェントブロックがセンサー類の自動認識

インテリジェントブロックにモーターやセンサーを接続すると、自動でどこのポートに何のセンサーが挿さったのかを自動認識します。

一見当たり前のように思えるこの機能も、このセンサーは何のセンサーで、どこのポートに挿しますよ、というのを普通の電子工作ではきちんと自分で記述する必要があります。そこを自動化してくれているので、初心者にはとても嬉しい作りとなっています。

スゴイところ:プログラムが視覚的に理解できる

プログラミングが苦手と思っている初心者の方の中には、ごく単純なプログラムでもコードで書いてあるだけでアレルギー反応が起こる人もいるかもしれません。

EV3ではアイコンのドラッグアンドドロップでブロックを組み立てるようにしてプログラミングできるので、視覚的に理解しやすいです。ロボットの動作制御で入力した数値(動作速度や方向など)も、アイコンに小さく表示されますし、入力した数値によってアイコンが変わったりするので、この数値でどんな動きをするのかアイコンを見ただけでイメージしやすいインターフェースとなっています。

また、ソフトウェア内にワークブックのような機能が内蔵されており、基本パソコンさえあればソフトウェア内のテキストを見ながら組み上げることが可能です。そういったところも教育ツールならではですね。

スゴイところ:少しぐらい雑でも大丈夫

さすがLEGO、少しぐらい雑に扱っても丈夫なので安心です。ちょっとした段差や小さなテーブルから落ちたりするくらいではびくともしません。壊れた!と思っても、おそらくそれはパーツが外れただけです。また組み立て直せば良いのです。このあたりは、ワンボード・マイコンのArduinoやRaspberry Piに比べ楽ちんです。

スゴイところ:収納性も考えられた作り

片付けやすさも家で楽しむなら意外と重要なところではないでしょうか。色々広げて楽しんだ後も、専用のケースにしまってさっと片付けられます。普通の電子工作の場合、繊細な部品が壊れないように気を使ったり、ハンダの熱が冷めるのを待ったりなど、特に子どもやペットがいる家庭では気を使う場合も多いのではないでしょうか。

25_case1

写真20

26_case2

写真21

27_case3

写真22

蓋を開けてすぐに見えるパッケージの裏面にどのパーツをどこにしまえば良いかが図で示してある心遣い。細かいパーツを整理できる赤いトレイ、そしてその下の黒いケースにはセンサーや作りかけの大きなパーツをしまえるようになっています。

イマイチなところ:モーターの回転速度が「もっさり」

これはLEGOとしてコントロールしやすいモーターパーツになっている都合上、モーターにギアを挟んだりしてあるので仕方のないことですが、組み上がったロボットの動きは少し「もっさり」しています。

例えば今回つくった猫じゃらしのおもちゃも、もっと早く振り回したいと思ってモーターのパワーを一番動作が速くなるはずの数値で設定しても、ちょっと物足りない速さでした。

イマイチなところ:値段がお財布に優しくない

今回お借りした「EV3デスクロボ デビューセット」はサイトを確認すると定価71,820円(税込)!(編集部注:現在3/25までの特価で64,260円(税込))、子どもに買い与えてみよう!と思うにはちょっと高いお値段です。

ソフトウェアなどの分かりやすさ対して、値段の高さにちょっとと感じる人もいるはず。
とはいえ、間違いなくそれ以上の価値があると思います!

その他、拡張やカスタマイズについて

今回触ってみたのはEV3の基本キットですが、AndroidやKinectを外部センサーとして連携できる拡張ツールも用意されているので、EV3だけでは物足りない動きも拡張していくことで出来ることが拡がります。

そのうちLeap Motionなんかとも連携してくれたら、指の動きをそのまま真似してくれるレゴとかも作れたりして。外部センサーとして連携できるモノがもっと増えると良いですね。

またAndroidやiPadで専用アプリをダウンロードすることで、スマートフォンやタブレットをリモコン代わりに遊べるようです。ただし、スマートフォン上でプログラムを組めるわけではないようで、そのうちそういう遊び方にも対応してほしいですね。

公式に用意されているカスタマイズや拡張では飽き足らず、インテリジェントブロックの代わりにRaspberry Pi など別のコンピューターを組み込んで、楽しんでいる強者ユーザーもいるようです。

例えば、マインドストームのセンサーとモーターをRaspberry Pi で制御可能にしたモジュール「BrickPi」というものがあります。

他にも、アメリカのクラウドファウンディングサイト「Kickstarter」でEV3のインテリジェントブロックをシングルボードコンピューター「BeagleBone」で置き換えるプロジェクトが立ち上がっていたりします。

 

動画1

このような動向を見ると、バリバリと電子工作できる人にとってEV3は特にセンサーの使い勝手が魅力のようで、いろいろとカスタマイズしがいがありそうです。

どこで触れるの?

現在レゴマインドストームは世界60カ国で200万台以上が販売されていて、小学校でも教育ツールとして導入されている国もあるほどメジャーな教育ツールです。

日本では高等専門学校(高専)や大学の工学部など高等教育機関への導入は進んできているものの、小学校や中学校など全ての子どもがこういったツールを触れる機会というのはまだ少ない状況です。

アフレルさんによると「普及には先生など教える側へのサポートも必要。先生への講習やサポートの機会を今後さらに充実させていきたい」とのこと。

私立の小学校などでは導入検討するところもでてきているとのことなので、今後の普及に期待したいところです。

EV3に興味が沸いたら、まずはイベントへ参加するのがいいですね!関東では、つくばや横浜などで子供向けイベントも開催されています。また、全国開催しているロボットコンテスト、WROETロボコンへ見学に行くのも楽しいです。

工業高校や高専の学生の皆さんならば、学校で導入されていることが多いので、担当の先生へ聞いてみると案外近くにあるかもしれません。

子どもはもちろん大人も猫も楽しめるEV3

電子工作やロボットに興味を持つきっかけとして最適なEV3。プログラミングの基礎を学ぶ教材、例えばCやJavaなどの言語を学ぶ企業向けの教材としても展開されています。

気軽に電子工作に親しめるものとして、近年は Arduino などのワンボード・マイコンがメジャーですが、EV3 はレゴとしてパッケージされたとっつきやすさや、電子回路などの専門知識なしで扱える壁の低さも魅力のひとつです。

世の中のいろいろな仕組みに興味を持ち始める小学低学年くらいの年齢からEV3に触れることで、ロボットの仕組みやプログラミングの基礎を手軽に楽しみながら学ぶことができ、これからのIT社会を生き抜く子どもの将来を豊かにしてくれることでしょう。

子どもの教育ツールとしてはもちろん、大人の知的な趣味としても、そして猫のためのインテリジェントなおもちゃを作るのにも最適です!

ぜひEV3で自分だけのロボット作りに挑戦してみてください!

 

※取材協力:株式会社アフレル
※レゴ、レゴのロゴマーク、レゴ マインドストームは、レゴグループの登録商標です。
LEGO, the LEGO logo and MINDSTORMS are trademarks of the LEGO Group.
©2015 The LEGO Group.

 

アバター画像

ギークを愛するデザイナー。ガジェットや写真が大好きです。最近一児の母になり、ギークマム目指して育児奮闘中。

http://tande.jp/lab/

ラズパイと液晶画面で、顔を判別してぴったりの動画を流すデジタルサイネージをつくろう!