第1回:PWMの基本とTL494
プラズマスピーカの制作を紹介する本連載。執筆頂くのは、日本で唯一の「テスラコイル実演サービス」をおこなっている、つくば科学株式会社代表取締役で、これまでもさまざまな工作記事を発表されてきた菊地秀人さんです。連載第2回となる今回は、制御回路の組み立てを見ていきたいと思います。
目次
1. 部品の調達
前回に引き続き、実際の製作作業に入っていきます。以下にMOSFETの候補と必要な部品をリストアップしました。
候補となるMOSFET
型番 | 個数 | 購入先 |
IRFP260 | 1 | https://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-12568/ |
R6018JNXC7G | 1 | https://www.digikey.jp/product-detail/ja/rohm-semiconductor/R6018JNXC7G/R6018JNXC7G-ND/9998441 |
TK15J50D | 1 | https://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-15027/ |
SCT2120AF(SiCではこの型番のみ動作確認済み) | 1 | https://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-09315/ |
その他の部品一覧表
RD25S 10Kカーボン抵抗(10kΩ)1https://akizukidenshi.com/catalog/g/gR-25103/電源LED用(任意)
また、今回は使用しませんが、次回の組み立てで使用するレベルメータの材料も以下にリストアップしました。同時に調達しておくと良いと思います。
部品の一覧表
型番 | 概要 | 個数 | 購入先 | 備考 |
LA2284AG-G09-T | レベルメータIC | 1 | https://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-12470/ | オーディオのレベル表示に使用 |
CF25J1KB | カーボン抵抗(1kΩ) | 1 | https://akizukidenshi.com/catalog/g/gR-25102/ | LEDの電流制限用 |
RD25S 10K | カーボン抵抗(10kΩ) | 1 | https://akizukidenshi.com/catalog/g/gR-25103/ | ベルメータの定数用 |
GF063P B103K | 半固定抵抗(10kΩ) | 1 | https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-14905/ | レベルメータ入力調整 |
RDER72A104K1K1H03B | 積層セラミックコンデンサ(0.1μF) | 2 | https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-15927/ | パスコン他、同等品可能 |
RDEC71H106K3K1H03B | 積層セラミックコンデンサ(10μF) | 1 | https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-08155/ | レベルメータの定数用 |
OSG8HA3Z74A | 3mmLED | 5 | https://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-11637/ | レベルメータ用LED |
2. 回路図について
以下が今回組み立てる制御回路の回路図です。
電源電圧は12Vとなっています。通常、エラーアンプを使用することが多いのですが、今回はDTCピンにオーディオを入力することにします。
TL494のデータシートを見てもらうとわかるのですが、DTCピンはデッドタイムコントロールのピンとなっています。エラーアンプで制御した場合、PWM波形を間欠動作する形になりますが、DTCで制御した場合はON/OFFの比率を制御することが可能になります。DTCピンに入る電圧によってON/OFFのデューティー比が変化することになり、最終的に音として聞こえるということになります。
TL494の電源電圧は7Vから40Vまでと幅広い電圧に対応し、なおかつ5Vレギュレータを内部に持っています。そのため、どの電源電圧の場合でも基準となるリファレンス電源として5V出力が利用可能です。
エラーアンプを使用する際にリファレンス電源を使用することが多いですが、今回はDTCピンに入れるオーディオ入力のバイアス調整でリファレンス電源を使用しています。
PWMのキャリア周波数はCTピンとRTピンに接続したコンデンサ、抵抗の値で変化させることができます。コンデンサは固定とし、抵抗値を変化させることによって周波数調整も可能になっています。
MOSFETの駆動にはTL494内蔵トランジスタを使用することにしました。回路的には単純になりますが、MOSFETに負担がかかりやすくなります。MOSFETのゲートの駆動にはゲートドライバを使用することが望ましいです。今回は簡易版ということで単純な回路になっていますが、その分、MOSFETの発熱が多くなっています。そのため、MOSFETは必ず大型の放熱器に取り付ける必要があります。
先程の部品リストに掲載した放熱器では、電流が多い場合に長時間駆動は不可能です。回路調整によって電流値を変更することは可能ですが、発熱が多いと感じられる場合は大型の放熱器を使用しましょう。パソコン用のCPUクーラーなどが流用できますが、MOSFET固定穴が無いため、自分でM3ネジのタップを切る必要があります。
フライバックトランスとの接続については、簡単に取り外しできるようにターミナルブロックを使用することにしました。ターミナルブロックに銅線を接続する場合、本来であればフェルール端子を使用します。銅線をそのまま差し込んで固定しようとしてもフェルール端子を使用していなければ抜けてしまうことが多くなります。ハンダメッキするというのも一つの手です。
3. 基板の組み立て
回路図を参考にユニバーサル基板に組み立てていきましょう。
組み立て例がこちらになります。1ヶ所、1/4Wカーボン抵抗器が入らずにチップ抵抗器を基板裏面に実装している場所があるので、そのまま真似をする場合は注意してください。
レベルメータ回路を横に組み立てる予定ですので、オーディオ入力と電源を分岐できるように配線しておきます。また、MOSFET周辺は太く短く配線しておくと良いでしょう。
次回は動作確認とレベルメータ回路の製作に入っていきたいと思います。お楽しみに!
今回の連載の流れ
第1回:PWMの基本とTL494
第2回:制御回路の組み立て(今回)
第3回:レベルメータの取り付け
第4回:放電の動作確認