ショットキーバリアダイオードとダイオードの違い

ダイオードはさまざまな種類があり、用途や場所に応じて細かい使い分けが必要な電子部品です。特に電源回路では高効率・小型化が求められており、ショットキーバリアダイオードを使用するケースが多くなっています。
今回の記事では、「ショットキーバリアダイオードとは何か?」「どんな時に使うのか?」「類似するダイオードとの違い」などを解説します。

 

目次

 

  1. ショットキーバリアダイオードとは?
  2. ショットキーバリアダイオードは低圧スイッチング電源回路に使われる
  3. ショットキーバリアダイオードは万能ダイオード?
  4. ファストリカバリダイオード(FRD)との違いは?
  5. 電源回路上でのダイオードの使い分けまとめ

 

1. ショットキーバリアダイオードとは?

ショットキーバリアダイオードとは、ショットキー障壁と呼ばれる、半導体と金属を接合したときに電気が一方向にしか流れない現象を利用したダイオードです。一般的なダイオードのP型・N型半導体によるPN接合とは構造が異なるため、電気的な特性も一般的なダイオードと異なります。

ショットキーバリアダイオードは、PN接合で作られたダイオードと比較すると、オン状態からオフ状態になる時間 (逆回復時間trr) が短く、順方向電圧VFが低い特徴を持ちます。
この特性はスイッチング電源のような高い周波数で動かす上で非常に都合がよく、現在の電源回路の高効率化・小型化には欠かせない電子部品です。

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ショットキーバリアダイオードの構造(左)と電気特性図(右)。半導体とメタルの接合部にはショットキー障壁と呼ばれる電気を一方向にしか流さない電気的な壁がある。
参考:ショットキーバリアダイオード | ダイオードとは? | エレクトロニクス豆知識 | ローム株式会社

 

ショットキーバリアダイオードは、回路図上で明確に見分けられるように、独自の回路記号が割り当てられている電子部品です。アノードを左側に見てカソード部分の線がS字型に折り曲げられているのが特徴ですが、回路図エディタによっては曲線ではなく角ばったS字もあります。似ている電子部品にはツェナーダイオード(カソード部分がZ字型)があるので間違えないようにしましょう。

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ツェナーダイオードとショットキーバリアダイオードは回路図記号の形状が似ているので混同しないように注意。

 

2. ショットキーバリアダイオードは低圧のスイッチング電源回路に使う

ショットキーバリアダイオードの特性は「逆回復時間が速い」「順方向電圧が低い」と説明しましたが、この特性はスイッチング電源回路で活かすことができます。

スイッチング電源は、スイッチング周波数を高くするほど小型化できますが、その分高い周波数に対応できる電子部品を使用しなければなりません。ショットキーバリアダイオードは逆回復時間が早く、高速でのスイッチングに対応が可能です。

さらに、順方向電圧も低く整流時の損失も小さいので、小型・低発熱・高効率のスイッチング電源回路を構成できます。
ショットキーバリアダイオードはこれらの特徴から、ACDCコンバータの二次側や、低圧のDCDCコンバータなどに使われます。

 

3. ショットキーバリアダイオードはどこでもつかえる?

ここまでの説明だと、ショットキーバリアダイオードは高性能な万能ダイオードにも聞こえてしまいますが、全ての回路に使えるわけではないので注意が必要です。

まず、ショットキーバリアダイオードは耐圧の高い製品でも200V程度(40V程度までの製品が多い)が限界なので、高い電圧の制御には使えません。

さらに厄介なのが、熱暴走が起きやすい点です。ショットキーバリアダイオードはオフ時のリーク電流が大きく、熱の影響でリーク電流が増大する特性を持っています。

高い電圧の回路だと漏れ電流の影響を無視できません。熱設計が不十分だと、発熱によるリーク電流の増加によって、さらに温度を上昇させる悪循環が止まらなくなり熱暴走状態になります。この熱暴走は保証温度以下でも発生するので、注意が必要です。

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参考:ショットキーバリアダイオード | ダイオードとは? | エレクトロニクス豆知識 | ローム株式会社

 

高性能に見えるショットキーバリアダイオードですが、耐圧が低く、熱の影響を受けやすい電子部品なので、使用する場所や回路の電圧などを確認して適材適所で使用することを心がけましょう。

 

4. ファストリカバリダイオード(FRD)との違いは?

ショットキーバリアダイオードに似たダイオードには、ファストリカバリダイオード(FRD)と呼ばれる製品もあります。ファストリカバリダイオードも逆回復時間の早いダイオードですが、ショットキーバリアダイオードとの違いは何でしょうか。

 

ファストリカバリダイオードは、逆回復時間が早く耐圧も高いのですが、順方向電圧VFが高いという欠点があります。そのため、ショットキーバリアダイオードの使えない高い電圧が印可される回路に使用してください。

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TO220FNパッケージの10Aファストリカバリダイオードのデータシート。逆方向電圧が高く、逆方向電流(リーク電流)は低いが、順方向電圧VFが高い。
参考:ROHM スーパーファストリカバリダイオード RF1001T2DNZ

 

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同じくTO220FNパッケージの10Aショットキーバリアダイオードのデータシート。順方向電圧VFが低く、逆方向電圧が40Vと低く、逆方向電圧も大きい。FRDとは逆の特性を持つので使い分けが重要
参考:ROHM ショットキーバリアダイオード RB085T-40NZ

 

ちなみに、ファストリカバリダイオードの順方向電圧が高いという欠点は、次世代半導体のシリコンカーバイド (SiC)によって解決が進んでいます。SiCショットキーバリアダイオード (SiC-SBD)では1200Vもの耐圧と低い順方向電圧を両立しているため、今後の普及でファストリカバリダイオードに代わり、SiC-SBDの利用シーンがさらに増えるかもしれません。

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参考:SiC SBD | SiCパワーデバイスとは? | エレクトロニクス豆知識 | ローム株式会社 – ROHM Semiconductor

 

5. 電源回路上での各種ダイオードの使い分けまとめ

最後に、ショットキーバリアダイオードについてのまとめと、ほかのダイオードの紹介、電源回路での使い分けについて紹介します。

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ショットキーバリアダイオード(SBD)

  • 低圧のスイッチング電源などに用いられることが多い。DCDCコンバータやACDCコンバータの二次側で整流を行なうダイオードに使用する。
  • ショットキーダイオードは順方向電圧(VF)が低く、逆回復時間に優れる。
  • 大電流品でもVFは1V以下に収まるため、順方向損失が小さく変換効率が高くなる。
  • ただし逆電圧印可時のリークが大きく、熱の影響を受けやすいため条件によって熱暴走を起こしてしまう。

整流ダイオード

  • 一般的な商用電源の整流に使われるダイオード、ブリッジダイオードなども該当する。
  • VFは1V以下が一般的、逆回復時間は上記2つのダイオードと比較すれば劣るが、50Hz/60Hzの整流が主な用途になるため、スイッチング性能は求められていない。

ファストリカバリダイオード(FRD)

  • スイッチング特性に優れ耐圧が高いためACDCコンバータの一次側やインバータ回路などに使用する。
  • スイッチング特性に優れているが、VFが高い。大電流時のVFは2V程度になる。
  • 逆方向の耐圧が高く、800Vの高耐圧にも対応できる。

ツェナーダイオード

  • 電源回路では、ACDCコンバータの二次側のサージ保護や過電圧検知に使われる。
  • 電流が変化しても電圧が一定の特性を持ち、逆方向で使用するのが一般的。
  • ほかのダイオードは主に整流に使用するが、ツェナーダイオードは定電圧回路や保護デバイスとして使われる。
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