インタビュー

独占インタビュー:「柴火創客空間(Chaihuo Maker Space)」代表がメイカー市場の現状と未来を語る

目次

  1. 「メイカー」の起源と現状
  2. 「柴火創客」の位置づけと目標
  3. 中国のメイカー市場の特徴と挑戦
  4. 柴火創客空間とローム

 

インタビューを受けた方:

柴火創客空間 代表者 ― 葉雨氏

Maker Faire Shenzhenの企画者。2013年にオープンソース・ハードウェア・エコシステムに参入。2015年には李克強総理の訪問の際、柴火創新創業訓練について紹介し、李克強総理に認められる。

現在は主に、イノベーション人材・スキル・ソリューションを駆使した産業技術革新やイノベーションプロジェクトを推進中。オープンソース文化に対して深い見識を持ち、市場への鋭い洞察力と優れた実行力で、メイカースペースの運営管理を行っている。

 

1. 「メイカー」の起源と現状

「メイカー」とは、「科学技術をこよなく愛し、熱中して実践する」人を指し、技術の共有、思想の交流をたのしみます。メイカーカルチャーは西洋のガレージカルチャーに由来しており、DIYでのモノづくりを提唱しています。デジタルツールの普及に伴い、オープンソースのソフトウェアとハードウェアのサポートにより、メイカーは大きく発展しました。

製造、エンジニアリング、工業設計、ハードウェアスキルと教育分野でのイノベーションを推進し、次第に世界中にイノベーション革命(革新的な理念の開放、文化的、科学的な発想力の育成、大衆のクリエイティブ活動の推奨) ― メイカームーブメント(Maker Movement)が広まっていきました。

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メイカームーブメントは、メイカースペースからスタートしています。メイカースペースとは、メイカーがクリエイティブ製作に集中したり、他人と協力して製作する空間です。メイカースペースは、欧州のハッカー(hacker)文化とハッカースペースに由来しています。

最も古いメイカースペースは、ドイツのプログラマーであるワウ・ホランド(Wau Holland)が1981年9月12日にドイツのハンブルクに設立したカオス・コンピューター・クラブ(Chaos Computer Club、略称CCC)で、現在では欧州最大のハッカー協会となっています。

1999年以来、CCCは4年に1度 カオス・コミュニケーション・キャンプ(Chaos Communication Camp)の屋外活動を開催。世界中のハッカーたちがキャンプ場でテントを張り、パソコンを見つめながらハッカースキルを研究します。

2007年に、ある米国のハッカーグループがカオス・コミュニケーション・キャンプに参加。その後、そのイベントを米国に導入しようと考えました。ドイツのメイカースペースの影響を受けて、米国の東海岸のメイカーが2007年にニューヨークで「ニューヨーク・レジスター(NYC Resistor)」を、ワシントンD.C.で「ハッカーDC(HacDC)」を立ち上げ、また西海岸のメイカーは2008年にサンフランシスコで「ノイズ・ブリッジ(Noisebridge)」を設立しました。

2009年~2011年に、中国国内で初めてとなるメイカースペースが深セン、上海および北京で相次いで設立されました。これらのスペースは欧米のメイカー文化の影響をいち早く受け、中国のメイカームーブメントを生み出すグループとなりました。

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メイカームーブメントが中国に伝わった後、中国国内のコミュニティの特徴と環境要因により、西洋とは異なる発展を遂げました。中国国内でのメイカームーブメントでは主に3つの段階があります。

第一段階の発展初期では、主な参加者は小グループのDIY愛好者であり、コミュニティでの交流、技術的検討が主な活動でした。

第二段階では、2015年に李克強総理が柴火創客空間を訪問した後、正式に「大衆創業、万衆創新」が政府工作報告に掲載され、イノベーションと起業活動を支援することが国家の一大戦略となりました。ビジネスに有利な政策により、メイカーをサポートするメイカースペース、シェアオフィス、ビジネスインキュベーター等のクリエイティブスペースが次々と誕生し、創新創業に関する展示会、競技会、イベントが熱く盛り上がり、メイカー文化の普及が大きな一歩を踏み出しました。

2016年~2017年頃に、中国国内のメイカームーブメントは第三段階に入ります。多くのメイカースペースは適切な商業モデルを見つけることができずに撤退を余儀なくされました。メイカーグループは創新創業に対して理性的な態度を持つようになり、創業プロジェクトを徐々に実務的な方向に焦点を絞っていきました。メイカーグループもまた、ただやみくもに起業することを追求するのではなく、自らの専門技能やイノベーション能力の向上に重点を置くようになりました。

メイカームーブメントの中国での発展は、中国国内の経済、教育、文化に対して大きな社会的影響を与える結果となります。経済分野では、イノベーション経済制度により生産データの大衆化が促進され、生産関係に変化をもたらしました。さらに、経済と科学の技術革新を推進します。

教育分野では、ディープラーニングと教育の公平性を促進し、イノベーション型の人材育成環境を整えました。文化の分野においては、文化的教養を豊かにし、文化の形態を改善、さらには文化的観念を新しく創り出しました。

 

2. 「柴火創客」の位置づけと目標

「柴火創客空間」は2011年にSeeed Technology Co., Ltd.の創業者である潘昊(エリック・パン)氏によって設立しました。スペースの名前は「皆で薪(柴火)を焚べれば炎は高くなる」という寓話に由来し、深セン初のメイカースペースとなります。設立以来、メイカー文化の普及と創新創業を推進し、中国国内外のメイカーと、深センにおける産業や資源をつなぐ拠点となりました。

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柴火は「サービス業界の徹底的なイノベーションと、ワンランク上の国際化した大衆創業・万衆創新プラットフォーム」として自らを位置付けました。国際的なイノベーション人材を集めることに力を入れ、メイカーに対し自由で開放されたシェア環境と成熟したオープンソーススキルを提供、垣根を超えた交流を推進し、クリエイティブ的発想が生れ落ちる温床を整えました。

同時に、従来産業のイノベーション需要に耳を傾け、メイカーと産業が協力関係になれるように両社をつなげるプラットフォームを構築しました。世界中のメイカーコミュニティの成熟したイノベーションソリューションを、現地の産業チェーンに導入し、業界のニーズにマッチさせ、オープンテクノロジーを用いて産業の問題点を解決。そうすることにより、産業イノベーションのアップグレードを図ります。

現在、深セン本社以外に、柴火は河北省石家庄にも支社があり、「科学技術のエコシステム」をテーマに、国際的なイノベーションソリューションを導入し、現地企業の技術革新と進化のニーズに対して直接サポートを行っています。

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3. 中国のメイカー市場の特徴と挑戦

中国の創新創業は、国内の強大なサプライチェーン体系と製造のエコシステムに依存しています。中国のメイカーのコミュニティは、市場の需要とイノベーションプロジェクトとの間の関係を合理的に判断し、成熟したテクノロジーの応用とイノベーションに焦点を当て、より実用的で市場志向になります。

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現在、中国国内のメイカーとその創業プロジェクトの商業化への道のりは、主に3種に分類されます。

1つ目は、消費者レベルの製品のイノベーションを直接実行し、製品イノベーションの市場化を歩む道です。ただし、市場の需要は限られているため、このやり方で成功を収められるグループは非常に稀と言えるでしょう。

2つ目は、STEAM教育とセットにイノベーションとコースサービスをもあわせて、メイカーの教育サービス全体を提供することにより、そのグループの商業化運営を実現するやり方です。現在、このやり方を採用するグループは非常に多く、グループの教育エコシステムとリソースの蓄積を問われます。

3つ目は、産業段階での実際のイノベーション需要に対応し、業界に対してカスタマイズされたソリューションを提供するサービスで、商業化による稼働を実現します。このようなグループは一般的に、比較的に多くのエネルギーを投入し、市場の教育係の役割を担います。さらに、メイカーグループの各々の技術は多様ですが、全体としてのパワーは弱いので、どのような具体的な業界に焦点を当て、産業のニーズを満たすテクノロジーとイノベーションを適応させるのか、これもまた一つの挑戦となります。

 

4. 柴火創客空間とローム

2019年7月に、柴火創客空間とロームはコミュニティパートナーとして、友好的なパートナーシップを正式に確立しました。双方の利点を組み合わせ、国際的な半導体メーカーの最先端テクノロジーや設計技術情報提供やコミュニティ活動によって、コミュニティのイノベーションを促進しました。両社が友好的な提携関係を構築して以来、共同で「センサ」や「ステッピングモータドライバ」等をテーマとした複数のコミュニティ活動を行い、様々な専門性を持つ100名ものメイカーが交流しました。

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さらに、柴火のコミュニティプラットフォームを活用し、ロームは定期的に最先端の科学技術情報の提供を行っており、メイカー個人の専門スキルアップに貢献するプラットフォームをコミュニティに提供したことで、、ロームと柴火のつながりはさらに深まることとなりました。

人材はイノベーション活動において最もアクティブで大切な要素です。柴火は設立以来、国際的なオープンソーススキルコミュニティを構築し、専門的なイノベーションスキルを持つ国際的な人材を集め、育成してきました。私たちは、今後もロームのような国際的な半導体メーカーが柴火コミュニティにさらなる技術と製品を投入し、柴火コミュニティの多様な人材との化学反応によって新たなイノベーションが生み出され、実用化されることを期待しています。

Device Plus 編集部

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