Vol.1 祝・ロボマスター日本初参戦 高専・学生ロボコニストが目指す”世界”では、FUKUOKA NIWAKAが挑戦している、中国のロボコン “ロボマスター” について聴いた。Vol.2のテーマは、チームについて、そしてその志について。
世界に挑むチームは、どう組織されるのか
━━今回のチームは、「FUKUOKA NIWAKA」となっています。そしてその母体は、福岡にあるニワカソフト株式会社というIT企業と聞きました。なぜIT企業がロボットコンテストに参加することになったのでしょうか。
糸山:そもそも、出場しようと言い出したのは、ニワカソフト、弊社代表の古賀 聡です。2年ぐらい前に古賀が中国に行ったときに、「日本のロボットはつまらない」みたいなことを言われたらしく、それを根に持っていた(笑)。なんとかやり返したかったようです。2017年の大会が終わった後、県内のいろいろなつながりをたどってメンバーを集めていった、という経緯です。
━━メンバーは30名程度と聞いています。
河島:「ROBO-ONE」で優勝したクラフトハウス株式会社代表の栗元 一久さんや、工場のロボットを専門にしているオガワ機工株式会社の伊藤 慎二さん、先ほど言ったNext Technologyの滝本 隆さん、九州の大学でロボコンに出ている人……等々、ちょっと挙げきれないのですが、本当にいろいろな人が、それぞれの重要な役割をこなしています。
花守:そのオガワ機工の伊藤さんは、僕の中では「直属の上司」というイメージです。伊藤さんが僕の設計のチェックとか、部品の発注とか加工だとかを一切引き受けていただいていて、いろいろ勉強させていただいています。前だったら「これでいいか」みたいなノリで進めていたところの不備をきちんと指摘していただいて、「ああ、このカタログってこうやって読むんだな」と改めて理解したりしています。「ちゃんと設計するってこういうこと」を噛みしめています。
河島:僕がこのプロジェクトに参加するきっかけになったのは、栗元さんです。居酒屋でご一緒させていただいて、「自分もロボコンやってます」みたいな話をしたら、Youtubeのロボマスターの動画を見せられて。「参加します」って即答しました。
━━志を持つ人がいて、そしてそれが拡散していく。
糸山:その栗元さんが、弊社の古賀が一番初めに声を掛けた人です。
━━河島さんは制御・回路のリーダーということですね。
河島:はい。一応肩書きとしては回路班のリーダーということになります。それと同時に、チームとして活動するうえでの環境整備的なことも担当です。slackのようなツールでちゃんと情報を共有するとか、そういったレベルから。
━━花守さんはメカ班ですね。
花守:ヒラの社員です(笑)。いや、僕は高専ロボコンで設計をしてきたので、今回もメインで設計をさせてもらっている感じになります。河島さんが用意してくれた環境や、そのプロの方たちに設計を見てもらって、実際に作るのは誰かに任せて、ひたすら設計に没頭しています。
━━花守さんがチームリーダーをした2015年の高専ロボコン「輪花繚乱」の時も近くで見ていました。勝手なイメージだと、「勝利に貪欲」な印象を持っていたのですが。
花守:そうですかね!? でも、勝ちたい気持ちはもちろんあるので、経験と、今僕が出せる能力すべてを注ぎ込んでいます。それが僕なりの貪欲さかな、と。えーと、イメージを崩さないように頑張っています(笑)。
━━糸山さんの役割は?
糸山:僕はニワカソフトの社員で、ロボットはまったくの素人です。広報業務に徹しています。黒子です。
花守:でも、大事ですよね。広報をしてくれる人がいないと、ただのおっさんの集まりになっちゃいますから(笑)。僕のイメージですが、高専ロボコンでも学生ロボコンでも、強いチームは、外部に対しての情報発信がきちんとしていると思います。例えばそのロボットクラブのサイトの完成度と実際の強さは、多少なりとも関連があると思います。だから、中国のチームにFUKUOKA NIWAKAのサイトを見られたとして、それが充実していたらプレッシャーを掛けられるのではとか……。そういう意味では、糸山さんが作るNiwakaのサイトも、ロボットの一部だと思ってます!
河島:いいこと言うね!
僕がロボマスターの活動をしていくうえで、「こうありたい」みたいな欲望があります。例えばオリンピックなら、日本人が日本代表として出場して、その頑張っている人を応援するという文化というかスタイルが、ロボコンの界隈でも広まって欲しい、と思っているんです。
━━もう少し詳しく教えてください。
河島:スポーツと比べると、ロボットの活動って目立たないですよね。しかし、スポーツと同じように頑張っているし、海外の人たちとも競い合っている。マイナーではあるんだけれども、多くの人に知ってもらって、小学生が将来プロスポーツ選手になりたいっていうのと同じように、ロボットの世界を目指してもらいたい。……そんな世の中になって欲しいという欲望があります。そういう意味では、広報はとても重要だと思っています。
花守・糸山:スケールでけえ……。
ロボマスターに挑む、それぞれの理由
━━現実的なことをお聞きしてしまいますが、今回の活動資金はどこから? 下世話ですが、読者の役に立つと思うのでお聞きしてしまいます。
糸山:製作の基本的なところは、ニワカソフトが出しています。古賀の思いというか……細かいことは気にせずというか……。
━━志、ですね。開発場所の確保は?
糸山:北九州高専か、福岡市内だったらこのニワカソフトが作ったラボです。大きな部屋を借りて、その中に実際のフィールドのような耐久ガラスや仮想フィールドを作っています。
━━おおごと、という印象が増してきました。日本から初参戦、お金もかかる、関わる人もたくさんいます。
花守:日の丸、背負ってるんですかね……。でも、全力で挑戦するのは当たり前ですし、実際に頑張って、中国行って戦って、見てくれた人が「楽しそう!」と思ってくれれば、日本にもロボマスターが浸透したり、さっき河島さんが言った、みんなが応援するスポーツのようになる、というのが近づいてくると思います。
糸山:日本にロボマスターが広がると、日本国内の予選をしようかということになったりするかもしれません。その時に、「日本で初めてやったのはFUKUOKA NIWAKAだ!」と言えるのは、後々うれしいかもしれませんね。
━━そんなみなさんを応援しようと思ったら、どうすればよいでしょうか。
花守:製作資金を……というのは冗談ですが(笑)、でも、汚い話ではなく、お金も重要だと思っています。僕らのお金ということではありません。今回、大会そのものにも優勝賞金にもお金が掛かっていると思います。そこで僕らや中国の学生に活躍の機会が与えられているということは、最終的にはその人たちの技術力につながっていくと思います。
河島:そうですね。大会にお金をかけるってことは、教育にお金をかけるということなんだと思うんですよね。お金をかけたらかけた分だけ熱中する学生がいて、世間に注目されるようになります。もちろんそれだけではないのですが、お金をかけた分だけ、クオリティが上がります。それをDJIが実行に移しているというのは、非常に重要なことだと思っています。
━━河島さん、今のお仕事も科学教育方面ですよね。
河島:はい。ほとんどの学校にサッカー部があるように、自然にサイエンス要素に触れられるような機会があるといいと思っています。そのためには自分も成長しなくちゃならないし、周りを引っ張っていけるようになる必要があると思います。そういうチャレンジ精神はずっと大事にしたい。そう考えています。今回のロボマスタープロジェクトも、その一環です。
━━わかりました。ありがとうございます。では我らは、これからみなさんを応援しつつ、活躍を楽しみにしていようと思います。
糸山:はい、やはり、まずは見ていただいて楽しんでいただいたら。それが、ロボマスターが広がることにつながると思います。前にあったように、非常にエンターテインメント性に優れた内容です。ロボット同士の連携がすごかったり、強いチームを見て「え!そんなふうに妨害するんだ!」と感心したり、いろいろあると思います。やはり、ひとつのスポーツのように、新しい競技として完成されているのではないでしょうか。
河島:付け加えるなら、試合時間の長さもあります。7分3ラウンドですから、その長い時間ずっと集中する必要があります。そして競技の実際も、まず同じパターンが再現されないような内容だと思います。毎回毎回、臨機応変に対応しなくてはならない。そうした人間側の要素も大きいと思います。見所のひとつじゃないでしょうか。
花守:ロボマスター、いろいろな意味ですごいと思っています。競技の内容も演出もすばらしいですし、規模は大きく、技術的なレベルも高い。見て損はないと思います。ぜひ注目してください!
今回の連載の流れ
第1回:祝・ロボマスター日本初参戦 高専・学生ロボコニストが目指す “世界” FUKUOKA NIWAKA インタビューVol.1
第2回:ロボマスターに挑む理由、応援する理由 FUKUOKA NIWAKA インタビューVol.2(今回)
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