インタビュー

エンジニアリング+ゲーミフィケーションで「エアコンのもったいない」を解決する高校生〜ROHC2018 優秀作品インタービューVol.3〜

ROHM OPEN HACK CHALLENGE(ROHC)」 は、ローム製のセンサやマイコンボードを駆使してプロトタイプ作品を募集するコンテスト。2018年は6月から8月にかけて作品を募集し、優秀作品は、賞金がもらえると同時にCEATEC JAPANのロームブースにて展示。来場した多くの方に作品が紹介されました。

そのROHC2018で優秀賞の一つを獲得したチーム「E=PCM2(イーイコールピーシーエムスクエア)」に、受賞作品となった「Cool Guardian(クールガーディアン)」に対してのこだわりや、開発時に苦労した点などを伺ってみました。
「Cool Guardian」は、ドアの開け閉めによる空調ロスを数値化し、視覚化されることで意識を高め、エネルギーロスを防ぐ作品です。
01_CoolGuardian

──どんなチームでこの作品を作ったのですか?
同じ高校(鎌倉市にある栄光学園)の物理研究部の高2(松田)、高1(椿)の先輩後輩で構成されたチームです。

──物理研究部は普段どんなことをしているのですか?
物理だけでなく、生物以外の理系の分野をやっている感じです。7つの分野にわかれて100名程度が活動しています。工学班などもあり、電子工作する人、二足歩行のロボットを作っている人もいれば、3Dプリンタで地形図を出力したりする人もいます。高価な機材でもみんなで使うようなものであれば部費で購入しています。

──今回の応募作品において、先生や親のアドバイスなどありましたか?
先生には、解決できないエラーが出たときに質問したり、プレゼンを通しで見てもらったりしました。わからないことがあれば、すべてググって解決していました。

──こういったコンテストにはよく応募しているのですか?
ロボコンには出ていますが、こういった企業主催のコンテストに参加するのははじめてです。まわりでも高校生向けのコンテストに参加している人は数名いますが、企業主催のコンテストに参加している人はいないと思います。
大人がメインのコンテストだと思いましたが、デバイスを貸してもらえたので、「ちゃんと作ろう!」というモチベーションをもって参加しました。デバイスを開発したロームのエンジニアから直接コメントがもらえるなど、高校生向けのコンテストでは得られない貴重な体験ができました。

モノを「作る」だけでなく、「使ってもらう」を意識した設計

02_CoolGuardian

──今回ROHCで賞を獲得した作品について詳しく教えてください。
「ドアの開けっぱなしのせいで教室が涼しくならない!」この問題を解決するための作品です。(教室の内側と外側の温度差)×(ドアの開閉に要する時間)=冷気のロスとし、「冷気のもったいない!!」を視覚化し、意識を高めてエネルギーロスを防ぎます。
ロスポイントは教室のみんなに「見える化」されるだけでなく、離れた場所にあるパソコンでも確認ができるので、複数教室での状況を職員室などで先生が確認することができます。

──なぜこの作品を作ろうと思いついたのでしょうか?
僕たちの学校は昨年の4月から、50年ほど使っていたコンクリートの3階建ての旧校舎を後にし、木造2階建ての新校舎に引っ越しました。神奈川県で唯一の冷房施設のない学校だったのですが、空調も完備され、これで暑さとは無縁の生活が始まるとみんな期待していました。しかし、空調を入れてあるということに慣れきれず、意識が低い男子高校生たちがドアを開けっぱなしにするといった不適切な行動もあり、思っていたほど涼しくなりません!そこで、みんなに注意喚起でき、快適な教室環境を長く保てるような作品を作ってみようと思いました。
03_CoolGuardian

──アイデアとコンテスト応募はどちらが先でしたか?
松田:コンテストに興味があり、ホームページでデバイスの機能をいろいろと調べたり、ROHCの一環で開催されたハンズオンにも参加しました。デバイスを使って、どんな身近な問題を解決できそうか?を部で話す中、椿くんがこの案をだしてくれ、一緒に作ろうとなりました。

──どんな点にこだわりましたか?
みんなに注意喚起し、快適な教室環境を長く保てるような仕組み(ゲーミフィケーション)を取り入れたことです。目的を達成するには、みんなの行動を変えさせるモチベーション設計が必要でした。
そこで、リアルタイムにロスポイントを表示させ、その累計ポイントをクラス単位で集計しました。クラス対抗で競うことで、エネルギーロスに対する意識を更に高めるという狙いです。
04_CoolGuardian

──開発にあたり、苦労した点はありましたか?
実際に教室でCoolGuardianを使用し、データを別棟の指導部長PCにLazurite Sub-GHz(ラズライト サブギガヘルツ)で送信したのですが、動作確認のための指示を出すにも伝令が走らなければならなかったことです。生徒は校内で携帯電話が使用禁止なので…。電波がきちんと届いて教室のドアの開閉状況がリアルタイムに表示されたときは感動しました。

また、Arduino用のデバイス(SDシールド)をLazurite Sub-GHzで使用するために、ライブラリをC++からCへの書き換えも苦労しました。そして、Lazurite Sub-GHzで通信するためには3.3vで動作させなければならないのですが、その場合入力信号のレベルも3.3vに落とさなければならないことになかなか気づかず、そのことが原因で接続するデバイスの数を増やすと動作が安定しなくなる現象に悩まされました。

ROHCに参加してみて

──ロームのどのデバイスを利用しましたか?
Lazurite Sub-GHzセンサシールドを使用しました。
教室の温度とドアの状態把握に、センサシールド(温度センサとホールセンサ)を使用しました。そして、Lazurite Sub-GHzの長い通信距離のおかげで、職員室で教室の状態をリアルタイムで把握することができました。

──ロームデバイスの特徴や今後使用される方にとって有益な情報があれば教えてください
Lazurite Sub-GHzで通信する際は3.3Vで動作しているため、5Vで動作しているArduinoと同じように周辺デバイスを接続すると動作が不安定になるので、Lazurite Sub-GHzへの入力信号のレベルを3.3Vに落とす必要があります。そこで、通常は5VのArduinoと低圧のセンサデバイス間を調整しているセンサシールドのLEVEL SHIFTERを逆向きに使うことで、5VのデバイスのLazurite Sub-GHzに対する入力信号を降圧しています。
また、複数のPINに対してanalogReadを行う際、対象PINを変えた1度目の測定値が安定しないので、2度測定し1度目は読み捨てるようにするとうまくいきます。

──ROHCに参加したきっかけを教えください
学校で先生からROHCのことを教えてもらい、コンテストに興味をもち、やってみようと思いました。過去に電子工作で加速度センサを利用して地震感知装置を作ったことがあるのですが、ROHCの一環で行われたハンズオンでロームのセンサを知り、精度のいいセンサを試してみたいという興味もわきました。

──ROHCに参加していかがでしたか?
最終審査会の発表後の一般観覧者も交えた懇親会では、息子さんが男子高校生だったという女性の方に「絶対実用化すべきです」と力強い言葉をいただいたり、一般観覧者、最終審査会参加者などいろいろな方とのやりとりは驚くことばかりでした。その席で、Lazuriteの開発者のお1人にお会いすることができ、「シンプルだけれど機能を有効に使っている」と認めていただけたことは嬉しかったです。
開発した方、それを利用させてもらった自分たち、そのプロトタイプを見て使いたいと思ってくれた方、このつながりを感じられ、トライしてよかったと思いました。

──来年以降、ROHCに参加する方にメッセージをお願いします
「こうしたい」、というものを形にし、実際に動かせるものにする所にはおもしろさと大変さがあります。高校生は参加しにくいかもしれませんが、デバイスも申請が通れば貸してくれますし、とても貴重な体験ができたので、チャレンジすることをおすすめします。

鈴木まなみ

2 歩先の未来について考える「TheWave湯川塾」の事務局や、オープンイノベーションを促進する日本最大級の開発コンテストである「MashupAwards」を運営する一般社団法人MAの理事などでコミュニティ運営を行いながら、最新のサービス動向や技術に接している。 また、シビックテックメディア「CivicWave」の主宰者でもあり、本の執筆やブログなど、ライターの仕事も行っている。

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