若者の未来の働き方

世界初の技術開発に携わり「子どもの頃の夢が叶っているぞ」と感じた~エンジニアのリアルボイス

これから世に出るエンジニア候補生にとって、「ビジネスの現場」がどうなっているか、正確にイメージするのが難しいものだと思います。また、若手エンジニアにとっては、「どう成果を出すのか」、いまいち見えないものかもしれません。そこでデバプラが一計、今、現場で成果を残している人にお話をお伺いし、これからどう働いていくのが良いかを探っていくことにしました。

第2回は、半導体製造装置のトップメーカー・株式会社ディスコにて、画期的技術「KABRA」* の開発に携わるエンジニアにインタビュー。新しい技術を搭載した装置を生み出すという創造的な毎日に、「子供時代の夢が、今叶っている」と感じることがあるそうです。果たしてどんな業務なのか、聞いてきました。

※通常の半導体より電力損失が少ないパワー半導体の材料となるSiC(シリコンカーバイド)ウエハーを、レーザー照射により剥離してスライス化するというディスコの特許技術。1枚あたりの加工時間が、従来のワイヤーソーでスライスする方法であれば約3.6時間かかるところが25分に大幅短縮され、ウエハー表面のうねりを除去するラップ研削の工程も不要に。さらには素材ロスが大きく減り、ウエハー生産枚数が1.5倍となる。

DSC_0360

 

職場は大学の研究室みたいなイメージ

──学生時代はどんな勉強をされていましたか?

大学では機械工学科で機械系の勉強をしていました。何かを作る授業はとても好きだったので、そのような授業は積極的にとっていました。研究室にも入り、空中に文字を書いたらそれがパソコンに表示されるというハンドデバイスの研究・開発を行っていました。

──株式会社ディスコに入社された経緯は?

就職活動中に参加した合同説明会でたまたま入ったブースが弊社のものでした。他にも、半導体製造装置メーカーや映像・産業製品系メーカーも受けていました。その中でも、物理的に大きいものを作りたいという漠然とした思いがあり、ディスコではけっこう大きなものを作っているという話を聞き、いいなと思いエントリーし2011年に入社しました。

──会社に入ってから、どんな業務に携わってきましたか。

入社して以来、レーザー装置を設計する部署にいます。そこでレーザーの標準装置* の改善業務や、お客さまのオーダーに応じてレーザーの標準装置を特殊設計する業務、あとはトラブル対応や、特定機種のトータルサポートなどを行ってきました。

*顧客毎にカスタマイズする前の、土台となる工作機械

──おおまかな勤務形態を教えてください。

仕事は月曜から金曜までです。弊社はフレックス制で、私は10時に出社しています。まず初めにメールチェックをします。その後は設計業務やトラブル対応など、日によってさまざまな業務に就きます。終業時間も個人の裁量に任されているので、例えば飲み会がある日は早く帰りますし、開発業務の進行状況によっては遅くまで働くこともあります。

基本的にはデスクワークですが、自分が設計したり改造したものを社内の実験スペースで装置に取り付けて検証したりもします。その点では大学の研究室のようなイメージに近いのかも知れません。

創造の源は「本来の目的に立ち返る」こと

──KABRAに携わることになった経緯は?

まずは新しい技術を生み出すグループの人たちが、KABRAの大もととなる技術を開発しました。そして2016年に、その技術を活かすことのできる装置を作る業務に私が加わりました。

KABRAのプロセスにはレーザーを照射する装置と、剥離をする装置、グラインダーの装置の三つが必要ですが、そのうちのレーザーを照射する装置のメカ的な部分をすべて私が担当しました。途中から、剥離をする装置の開発業務の方も私が引き継ぎました。

──実際にどういったことをする業務なのでしょう?

根本的な原理というか、こう加工したらこうなる、というベースの技術は既にわかっていて、それを実現するための装置を一から作る仕事です。

とはいえ弊社に元々ある装置を応用したりもするので、全くのゼロから1を生み出すというより、1にがんばって肉付けするというケースが多いですね。会社のさまざまな先輩方にサポートしていただきながら、1を2とか4にするイメージです。

──KABRAのどんなところが画期的なのでしょう?

今までSiCのインゴットは、ワイヤーソーというノコギリのようなもので切っていました。ただSiCのインゴットはとても硬く、そのため1枚スライスするのに何時間もかかっていました。それを特殊なレーザー照射を施すことで、切るのではなく「剥離」させられるようになったんです。つまり、これまでとはまったく違う考え方の加工方式を成立させた、ということです。これにより1枚の加工時間は数十分に短縮されました。

──特にどんなところに苦労しましたか?

検証で行っていた要素を一つの装置にまとめあげる事だと思います。検証の際には理想的な環境でやれていた事も装置にした場合は同じ状況で出来るとは限らないので、実機では結果が変わることもありました。
それ以外にも、操作性・メンテナンス性・耐久性・各種規格に適合しているか、なども考慮して設計をするため、土台の技術が確立していても、一筋縄ではいかないことが多くありました。

また、現在進行系なのですが、今「KABRA!zen®」というKABRAをフルオート化した装置を開発しています。今までは人の手でやっていた一連の動きを機械で再現するのですが、それがとても難しいです。まずは装置に入れるためにインゴットを吸着させて、装置にセッティングし、ウエハーが剥離される。そこからインゴットを取り出して洗浄後、汚いところは拭き、ウエハーも洗浄して乾燥させるという、これまで人の目で見てやっていたことを装置化するのに苦労しています。

──時には開発が行き詰まってしまうことも?

ありますね。もうどうしたものかと悩んでしまう場面も時にはあります。

そんな時は、今ある形ありきで考えるのではなく、ものの本来の目的に立ち返るようにしています。たとえば冷蔵庫なら、本来の目的はあくまでも「冷やすこと」や「保存すること」だよな、と。そんなふうに、そのものがもともと何を実現するものなのかというところに立ち戻り、そこから逆算して考えていくことで、今ある形とは全く違う新しい形を考えられたりするんです。

──問題を解決する際の社内共通のメソッドやポリシーみたいなものはありますか?

弊社には何か困った時には相談し合える文化があります。「この機構で悩んでいるんですが、どうしたらいいでしょう?」とか、「こんなことを実現したいのですが、何かいいアイデアはありませんか?」と上司や先輩に聞き、そこから何かしらの気付きや種をもらうということがよくあります。

他部署や初対面の人であっても話を聞きに行くことが普通によくありますし、逆に自分が聞きにこられることもあります。

DSC_0309

 

学びとは、自分から取りにいくもの

──この仕事で特に熱くなる瞬間は?

課題に対して、何かひらめいた時です。設計していて行き詰まった時に、前述のようにいったん原点に立ち返ってから、じゃあどうしたらいいんだろうというのを考える。そうした末に何か新しいことをひらめいた時は、本当に嬉しいですね。

──社会人になって驚いたことは何ですか。

自分から学ぼうと行動しないと学べないことです。

学生の頃は、講義なり勉強なり、向こうから教えてもらえることがあたりまえでした。でも社会人になってからは、相手の方から何かを教えてくれるというのはまずありません。特に弊社が自由主義というか、そういう傾向が強いのかもしれませんが。

もちろん聞けば教えてもらえるのですが、基本的にはこちらからアクションを起こさないと、何も教えてもらえない。それがすごく衝撃的で、初めはわからないことだらけでどうしようという感じでしたが、徐々にそういう文化なんだなとシフトしていきました。

──エンジニアを目指す人は、どんなことを心がけたらいいでしょう?

自分も普段から大事にしているのですが、何かの構造でも技術でも身近なものでもなんでもいいのですが、「これってどういうふうに成り立っているんだろう?」「どういう技術が使われているんだろう?」とすぐに疑問に思うことが、この仕事では特に重要だと思います。疑問を持てば必然的に「じゃあ調べてみよう」とか「聞いてみよう」となるので。

──今の自分の立場から、学生時代の自分にどんなことを言いたいですか?

「おい、夢は叶っているぞ」と言いたいですね。

私は小さい頃からものを作るのが好きで、よく当時流行っていたミニ四駆を分解して、これとこれをくっつけたらどうなるんだろうと改造をしていました。その頃から、将来は自分の思うようにものづくりがしたいなという想いがずっとありました。

そして今、仕事で自分の好きなように設計し、自分の思いをそのまま装置に反映できています。そこがすごく楽しいですね。

 
ロボコニストが伝授!ぼくらの就職活動

Device Plus 編集部

エレクトロニクスやメカトロニクスを愛するみなさんに、深く愛されるサイトを目指してDevice Plusを運営中。

https://deviceplus.jp

電子工作マニュアル Vol.4