休憩時間のアトラクションで少し涼しくなった会場内だったが、準々決勝・準決勝で再び熱気に包まれた。
実は試合中、試合結果に関わるような空気の流れをつくらないために空調が切られているとのこと。
決勝戦の前に、次回開催国への引き継ぎが行われた(エアコンが入って涼しくなる……)。次回開催国はベトナム・ニンビンとのこと。競技テーマはベトナムのトラディショナルなゲーム 。
もみ殻を入れた布のボールに、虹を表す飾りリボンと、投擲用の紐を着ける。紐を持ってボールを投げる。マトは高い位置に設置された「輪」と、輪をくぐった先にある「スポット」だ。開発するロボットは2機、「ボール回収用」と「回収用ロボットからボールを受け取って投擲する」マシンとなる。
※今年3月に工学院大学で開催された「関東春ロボコン」のテーマに少し似ている……!
本日時点で、すでにいくつかの海外サイトでは、動画やルールが配布されているようだ。
テーマとルール発表の後、それぞれのチームの応援団が何事か相談する光景が見られた。もう照準を来年に合わせ始めたようだ。
決勝!
青:マレーシア
赤:ベトナム
準決勝でAPPARE!自己ベストを更新したディフェンディング・チャンピオンのマレーシア。準決勝でAPPARE!までに使ったディスクは、なんと28枚だったそうだ。チームの雰囲気は良い。応援も盛り上がっている。応援席からは「絶対勝ちます!」とのコメント。
ベトナムは次回の開催国だ。34秒と爆速でのAPPARE!を達成している。やはり30秒程度で全てのスポットを獲得している。チームリーダーは少し緊張気味と思われるコメントだが、応援チームはなごやか。士気は高く「優勝を目指します」とのこと。
勝負の駆け引きを考えているうちに決着がついてしまいそうな気がする決勝戦。マレーシアが二連覇を決めるか、次回ホスト国がロボコン開催旗とともに優勝を持ち帰るか?
1分間のセッティングタイムが始まると、先程までのにこやかな雰囲気から一転、バリっとした空気がチームに走る。マレーシアとベトナムの応援団は隣同士。互いへの敬意を感じる、熱くも温かい応援だ。
セッティングタイムの後、試合スタート!
ベトナムが10秒で投射開始、数秒遅れてマレーシアもディスクを打ち出し始める。この数秒の差が勝敗をわけるのだろうか。
まずはベトナムが1分たらずで全てのスポットにディスクを乗せる。しかしスポットにボールが残っている! 精度が高すぎて、ディスクがボールを避けたまま、スポットに乗ってしまっていたのだ(すごい……)。ベトナムはボール落としに向かった。
ベトナムがボールを落とした瞬間にAPPARE!が確定するため、マレーシアはその他のスポット制覇を進める。まさか再びの同時APPARE!、と会場が盛り上がったが、一足早くベトナムが、最後のボールを落とした。
優勝はベトナム・ラクホン大学。勝利を祝うリボンが舞う。
フィールドに、赤字に星のベトナム国旗がたなびいた。記者が2014年の夏にインド・プネで見た光景と同じ、ベトナムのウィニング・ラン。スイッチを切られることがなかったロボットが、ディスク射出を続けていた。
優勝:ベトナム(1分20秒)
閉会式・表彰式
各賞は下記の通り。
優勝 ベトナム・ラクホン大学(ABUロボコン優勝6回目)
準優勝 マレーシア・マレーシア工科大学
敢闘賞 日本・東京工業大学
敢闘賞 タイ・タートゥーム社会教育産業カレッジ
アイディア賞 カンボジア・カンボジア国立ポリテク大学
技術賞 中国・東北大学
デザイン賞 香港・香港科技大学
特別賞は6校。
タイ・タートゥーム社会教育産業カレッジ
モンゴル・モンゴル国立大学
香港・香港科技大学
インド・プネ工科大学
インドネシア・アカプリンド科学技術大学
カンボジア・カンボジア国立ポリテク大学
そしてABUロボコン大賞は、ベトナム・ラクホン大学。文句なしのダブル受賞だろう。
ベトナム・ラクホン大学はコメントを求められ、「とても嬉しい、とても興奮しています。ラクホン大学設立20周年に優勝ができて嬉しい」とのこと。会場から何度目かの祝福の拍手。
◆
第16回目のABUロボコンは、ベトナム・ラクホン大学の優勝で幕を下ろした。強豪校の安定した強さはもちろん、テストランや予選では初出場チームの健闘で会場を魅せる光景もあった。
日本チームの結果としては、東京工業大学がベスト4(敢闘賞)、東京大学がベスト8。
東工大はABU初出場だったが、そうとは思えない冷静さとデータの積み上げによる成長が目立った。さすがの勝負強さを見せたが、ベトナムの大会最速記録(34秒)という素晴らしい記録の前に敗れた。
東大は、国内大会のときと会場の環境が変わったことが痛手となり、自動制御機能を封じられたなかでの参戦となってしまった。悔しいが、マニュアル操作で決勝トーナメント進出までこぎつけた粘り強さには敬意を表したい。
期間や予算など、開発に割けるリソースは、チームによって様々だ。ロボット開発人数が4人というチームもあれば、2か月弱でマシンを仕上げたというチームもあった。国内選考会がなく、ABUがロボコン初挑戦となるチームもあった。
しかしどんなチームも、自分たちの出しうるベストを尽くしてマシンを仕上げてきているのが分かった。勝敗はついてしまうものだが、あらためて全てのチームに賞賛を贈り、本速報の〆とする。
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