「NHK学生ロボコン2023」でローム賞を受賞した京都工芸繊維大学「ForteFibre(フォルテフィブレ)」の皆さんとともに、前後編で大会を振り返る本連載。後編では試合の様子をお届けしていく。
【前編】:「あの時のピットvol.5」学生ロボコン2023 ローム賞受賞校に聞く【前編】
創意工夫を凝らした機体を完成させたメンバー。大会に向けて、上京しようとするが……。
■予期せぬトラブル
機体が完成し、一安心したのもつかの間、テストラン前日に東京入りする予定が、台風の影響で新幹線が運休に。メンバーは22時頃まで京都駅で粘るも、運転は再開せず、テストラン当日に移動経路を変更し、金沢を経由して6時間かけて東京に向かうことになった。大会前に心も体も疲弊してしまう想定外のハプニングだった。
その後もトラブルは続く。試合当日の朝、試走場でエレファントロボット(ER)とラビットロボット(RR)の、橋渡し連携の機構に不具合が出てしまった。初めてのトラブルに、緊張が走るピット。「なんとか間に合わせるしかない」とメンバーは修理の手を動かし続けた。
■あの時のピット
全体の調整や、最終チェックもままならないまま試合に突入。北見工業大(北海道)との第一試合は、直前にリカバーした橋渡しは成功したものの、2体のロボットが動作不良のためリングをうまく回収することができず、0対40と無得点に終わった。悔しい敗北だった。
一試合目、負荷をかけた状態で坂を上ろうとしたことで、基板の一部が燃えてしまっていた。試合間の調整時間に交換がうまくいかず、基板が固定されずに浮いたままの状態で迎えた二試合目。他大学のブロック勝ち上がりが決定しており、「まだ見せられていない昇降機構をなんとか披露したい」という思いで臨んだ。
不安な気持ちを覆すように、スムーズな移動とリングの確実な回収で次々と得点。一時は早稲田大に80点差をつけるなど大躍進し、チームの背後の応援席から歓声が上がる。ところが、勝利が見えた最終盤、RRの投てきの角度を調整する機構の配線が抜けてしまい、リトライすることに。残り30秒で意地を見せた早稲田に逆転を喫し、60対70で敗北。工夫を凝らした昇降機構の本領は発揮できなかった。
「なんとかするしかない」という一心でERの操縦をしたという竹内さんは「RRをかばうために普段練習していない動作をしたことでERにも問題が出てしまいました。想定していた範囲内で動けていたら勝ち目はあったかも」と悔やむ。
■試合を終えて
試合後は皆、涙が止まらず、30分ほどはお互いにかける言葉もなかったという。そんななか、何より励みになったのは、周りからの温かい声かけだった。「試合中、応援席から、『がんばれ!』という声がすごく聞こえて。いい試合だったよと声をかけていただいて、本当にありがたかった」と振り返る志田さんの目に涙が浮かぶ。
「うまく動けば勝てると思っていた機体だったので、機体の実力を全部発揮できずに終わってしまったことが一番悔しい。後輩には、自分たちが作りたい機体を作って、本番では思い通りに動かして勝ってほしいと伝えたい」。
彼女たちは今後、後輩のサポートをメインにロボコンにかかわっていく。逆境を乗り越えるチームワークと、「夢」をあきらめないしなやかな強さは、きっと受け継がれていくはずだ。
今回の連載の流れ
「あの時のピットvol.5」学生ロボコン2023 ローム賞受賞校に聞く【前編】
「あの時のピットvol.5」学生ロボコン2023 ローム賞受賞校に聞く【後編】(今回)