ロボコン

高専ロボコン2022、ロボットは風を読めるのか? 

今年のテーマは激ムズ「紙飛行機飛ばし」だ!


2022年の高専ロボコンで試されるのは、予測不可能な状況を切り抜ける「現場対応力」か。

コロナ以降初めての対戦形式で、ルールはシンプル、ただしとても高度な課題が提示された。デバプラ編集部は学生ロボコンに続いて現地取材で熱戦をレポートする予定だ。

 

■競技課題は「ミラクル☆フライ」! 紙飛行機が美しく国技館を舞う

今回の競技テーマは、紙飛行機飛ばしだ。1つのフィールドに2チームのロボットが入り、5種類/全9箇所のターゲットに向かって紙飛行機を投げる。紙飛行機がターゲットの上に「着陸」すれば、各ターゲットに応じた得点が加算される。

 

競技時間は2分30秒で、詳しい得点条件や勝利条件。制約事項は以下の通りとなる。

 

1.  得点条件、勝利条件

競技フィールドは12メートル×8メートルの長方形で、2.5メートル×8メートルの「テイクオフゾーン」と9.5メートル×8メートルの「ランディングゾーン」に分かれる。

2チームのロボットは共通のテイクオフゾーンから、ランディングゾーンに置かれた「スポット」「滑走路」「ベース」に向けて紙飛行機を飛ばす。

 

「スポット」は丸いテーブルの形状で、ロボットから最も近い場所に3箇所の「スポットA」、少し離れた場所に2箇所の「スポットB」が設置される。スポットに紙飛行機が乗れば、1点が加算される。何機乗っても1点となるため、スポットで獲得できる得点は最大で5点だ。

「滑走路」はフィールドの両端奥に2箇所が設置される。滑走路に紙飛行機が乗ると、1機あたり1点が加算される。

「ベース」は筒状のターゲットで、フィールド中央と奥に設置される。中央には両端が開いた太めの「ベースA」があり、紙飛行機1機あたり3点が加算される。奥の「ベースB」は紙飛行機1機あたり5点、加算されるが直径が狭い。

 

すべてのスポット、滑走路、ベースに1機以上の紙飛行機が乗ればVゴール達成、その時点で勝敗が確定する。試合中は、相手の紙飛行機を自分の紙飛行機で落として相手の得点やVゴールを妨害できる。Vゴールがなかった場合、競技終了時点で獲得点数の多かったチームが勝利だ。

 

2.  制約事項

得点条件はシンプルだが、ロボットが「紙飛行機を飛ばして、乗せる」のを実現するのはかなり難しい。そのため今回は抜け道的な得点や裏技的な勝利を抑制するために、細かい制約事項が定められている。代表的な例が以下だ。

 

ランディングゾーンへの侵入:

ロボットがランディングゾーンへ侵入するのは「上空を含めて不可」だ。例えば、アームを長く伸ばして紙飛行機を置くような機構はルール違反となる。あくまでテイクオフゾーンから紙飛行機を飛ばさなければならない。

 

風力を使った妨害や飛行の支援:

ロボットの機構に圧縮空気を用いることは可能だが、風力で紙飛行機を飛ばしたり、相手チームの飛行を妨害するために吹かせたりといった目的で風を使ってはいけない。

 

紙飛行機ではないものを飛ばす:

紙飛行機は「飛行時に揚力が発生する翼を持つもの」と定義され、サイズや形状に一定の規定がある。その規定を満たさないもの、つまり「ボール状に丸めた紙」などは紙飛行機ではなく、それらを自チームの支援や相手チームの妨害のために飛ばすことはルール違反となる。ただしFAQによれば、「揚力の発生する形状の紙飛行機を、揚力が発生しない方法で飛ばす」ことは可能だ。

 

相手ロボットの動きを妨げる行為:

共通のテイクオフゾーンを使うため、ロボットのポジショニングは勝敗のキモとなる。ただし、相手チームが回り込んでも移動できないような位置に自分のロボットを置く、相手ロボットの上部に自分のロボットの機構を展開する、飛ばせる状態にない紙飛行機を連結させて壁をつくる、といった方法で相手を妨害するような動作はルール違反とされ、最悪の場合は失格となる。

 

■当日の環境は予測不可能、どんなロボットをどう動かすのか?

 

ロボットにとって、安定した軌道で紙飛行機を飛ばすのはかなり難しい。まず形状に安定性がなく、個体差が大きいため、詰まりが発生しやすい。また、今回はターゲットに「当てる」のではなく「乗せる」のが目的となるため、ただ勢いよく飛ばしても得点にはならない。特に「ベースA」は、紙飛行機の軌道をカーブさせる必要がある。さらに、会場の気流は練習環境と地区大会、テストラン、本戦のそれぞれで大きく異なる。いわゆる「必勝ルート」は存在しない。冒頭で述べた通り、予測不可能な環境を切り抜ける「現場対応力」が問われている。

 

地区大会ではスポットを中心に狙って確実に得点勝ちをした試合や、滑走路への着陸がぴったりとハマって大量得点で勝利した試合があった。しかし、同じ勝ち方が国技館でも通じるかは、全くの未知だ。特に国技館は天井が高く構造も複雑なので、各チームが「風を読む」必要が出てくるだろう。テストランでのデータ収集も重要になるはずだ。

 

飛ばせる紙飛行機の数量には制限がないため、地区大会から大量の紙飛行機が舞い上がり、会場が沸くシーンも見られた。本戦に出場する各チームとも、さまざまな趣向を凝らしたマシンを仕上げており、そんな地区大会の様子はロボコンの公式YouTubeチャンネルでも公開されている。

 

本戦は11月27日、デバプラ編集部も現地から熱戦の模様をお届けする予定だ。リモート応援のファンも、現地応援に行けるファンも楽しもう!

 

■高専ロボコン2022・全国大会出場校

旭川工業高等専門学校

苫小牧工業高等専門学校

一関工業高等専門学校

福島工業高等専門学校

秋田工業高等専門学校

群馬工業高等専門学校

東京工業高等専門学校

長野工業高等専門学校

小山工業高等専門学校

鈴鹿工業高等専門学校

石川工業高等専門学校

富山高等専門学校(本郷)

国際高等専門学校

和歌山工業高等専門学校

奈良工業高等専門学校

大阪公立大学工業高等専門学校

徳山工業高等専門学校

呉工業高等専門学校

大島商船高等専門学校

香川高等専門学校(高松)

香川高等専門学校(詫間)

大分工業高等専門学校

熊本高等専門学校(八代)

都城工業高等専門学校

有明工業高等専門学校

 

■高専ロボコン2022・地区予選の様子

東北地区大会(10月2日)

中国地区大会(10月9日)

四国地区大会(10月9日)

北海道地区大会(10月16日)

関東甲信越地区大会(10月16日)

近畿地区大会(10月23日)

東海北陸地区大会(10月23日)

九州沖縄地区大会(10月30日)

出場ロボット解剖計画
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