ロボマスター急成長の理由〜日本のロボコニスト視点で分析

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ロボマスター2018

今回デバプラ編集部は、2016年のABUロボコン、NHK学生ロボコンに東京大学RoboTechのチームリーダーとして参加した田中敬さんに、ロボマスター2018の取材に同行いただいた。NHK学生ロボコンや日本のロボットコンテストからの視点も踏まえて、田中さんから見た「ロボマスター2018」を伝えていただく。テーマはその急成長の理由と、若干の「お金」について。

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ロボマスター2016年の大会も現地で見学したのですが、当時に比べて今回のロボマスターは、かなり大規模になっていました。演出、ルールの難易度、出場校のレベル、これらがたった2年でここまで変われるのかと思いました。急成長の背景にはいくつかの要因が絡んでいると思っています。

ロボマスターへの積極的な投資

1つ目が大会主催のDJIが積極的にロボマスターに投資しているということです。ルール作成や審判システムの開発に多くの社員を割いているらしく、2年前に比べてゲームバランス的により面白い大会になっている印象を受けました。

またDJI社員の方曰く大会の演出も重要視しており、一般の観客に対して「エンジニアが主役」「エンジニアはかっこいい」をどう演出するか、ということを考えているとのことでした。いろいろな人が言及しているとは思うのですが、ロボマスターはいわゆる”ロボコン”というよりはe-sportsみたいなもので、エンジニアでない人にとっても見ていて面白い大会だと思います。特に現地での盛り上がりは凄かったです。

その他にもDJIの手厚いサポートが大会の急成長に大きく寄与しています。

  • 機械部品のサポート(配布であったり、安く提供したり)
  • サマーキャンプが開催されており、DJIの社員から技術的なサポートを受けられる
  • 多大な賞金(後述します)

……といったようなもので、DJIのロボマスターへの力の入れようが桁違いだなとも思いました。このサポートにおいてはロボットを動かすまでのハードルを下げることが意図されていて、大会に参加できるレベルになるまでのコストと期間を減らして出場チーム数を増やそうというDJI側の努力を感じます。年々参加チームが増えているのもこういったサポートがあるからだと思います。

またロボマスター運営にとって国際チームを増やしたいということもあって、日本から参加しようとするチームにはサポートも手厚いと考えられます。そのようなサポートを受けられるロボットコンテストは他にはなかなかないと思います。

大学生の自主的な取り組み

2つ目に、DJI側だけでなく大学生の自主的な活動も盛んということです。それぞれの大学の交流も活発に行われているそうです。2年連続優勝した華南理工大学は他の大学のチームを呼んでセミナーを開いているらしく、彼らは「昨年までは自分のキャリアとか自分達の勝ちだけを考えていた。だが今年からはロボマスターにおけるエコシステムを作るということを意識して、技術の公開を行ったりセミナーを開いたりした」と言っていたのが印象に残っています。

またピット内の交流がかなり盛んにできる大会でもあります。NHK学生ロボコンや高専ロボコンではピットに数人しか入れないのに対して、ロボマスターは沢山のメンバーが入れます。NHK学生ロボコンや高専ロボコンだと、ピットにいる数人全員がメンテ等の作業をしていることが多いですが、ロボマスターでは人数入れる分、手の空いている人も多く、非常に質問しやすいなと思いました。また中国という国柄もあってピット内は賑やかというかとてもうるさく、交流しやすい環境だなと思いました。

ロボマスターピット

複数の中国の強いチームと交流できるチャンスがあるというのは、他のロボットコンテストにはないメリットだと思います。実際に交流して初めてわかるようなロボット製作に対する考え方の違いだったり、環境の違いだったり、中国の技術力のレベルの高さであったり、中国人の元気さであったり、様々なことが肌で感じられると思います。

モチベーションに関わる賞金金額

3つ目に資金力です。賞金の額にも大きく表れています。優勝50万元(約800万円)と大学生が出場できるロボットコンテストの中では大きな額で、日本で開催されているコンテストとは桁違いです。また地域大会3位以内でも3万元(約50万円)と全国大会の優勝チームだけではなく、それ以外の多くのチームに賞金がでます。

さらに驚いたのが個人で評価されても賞金が出ることです。指導者(4人 2万元(約30万円)) 、キャプテン(4人 5000元(約8万円)) 、顧問(4人 5000元(約8万円)) 、ボランティア(10人 3000元(約5万円))、マネージャー(4人 3000元(約5万円)) 、広報(4人 3000元(約5万円))にそれぞれ優秀賞が用意されています。

これらの賞金は出場者にとってやる気が出ますし、特に後方支援の活動は軽視されることも多いですが、プロジェクトを遂行していく上で必要なことを、こういった形で評価されるのは教育上においても素晴らしいシステムだと思いますし、問題点をシステムで解決していくのはとても中国らしいなとも思いました。

ロボマスター2018表彰式

また、「オープンソース」に賞金が出ているのは、面白いシステムだなと。運営側が各参加チームに技術公開を推奨するシステムを用意して、新規参入の障壁を下げて大会のレベルの底上げをすることも、年を重ねる毎に大会が面白くなっている要因のひとつなのかなと思います。オープンソース1等が10万元(約180万円)と賞金が高いことも、DJI側がかなり推していることも伺えます。

また賞金以外のお金についても桁違いだったりします。1年に1000万近く大学から支援を受けているチームや、中国の有名電気機器メーカーからのスポンサードを受けているチームもありました。大会の活動においては、各チームがスポンサーを自由に付けることが出来て、スポンサーを集めるのはあくまで勝つための手段の一つ、とのことでした。

このように、

  • 多大な投資によって作られたシステムによって急成長している
  • 参加者たち同士の盛んな交流によって、大きなコミュニティーが形成されている
  • 資金力が凄い

……といった、中国という国を体現しているかのような大会でした。

ロボマスターに参加する日本のチームが増えて、そして決勝で日本のチームが中国のチームを倒す姿が見られる日が来たらいいなぁと思いながら、コメントを以上とさせていただきます。

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今回の連載の流れ

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