Robomaster

日本のRoboMasterの歴史的転換点になるか!? 「RoboMaster 2019 Japan Summer Camp in 北九州」完全レポート!(第1日目)

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2019年8月28日から30日までの3日間、画期的なイベントが北九州で開催された。「RoboMaster 2019 Japan Summer Camp 北九州」。全国のRoboMaster競技者が集まって、対戦や技術交流会を行うという、日本初の試みである。
まだまだ発展途上にある日本のRoboMaster界にあって、後々、「あれが歴史的な転換点だったな」と思われる可能性を持つイベントだ。3日間にわたる白熱の様子を、レポートしよう。

第1日目・8月28日(水) 豪雨の中、暗中模索のテストラン、はじまる。

9:00・会場到着

2019年8月28日水曜日。佐賀県を中心とする九州北部に大きな被害をもたらした豪雨をものともせず、北九州市小倉にある西日本工業大学・地域連携センターには続々と人が集まっていた。今日から3日間、ここで日本初のRoboMaster公式イベントが行われるのだ。

デバプラでは早くから「RoboMaster(略称ロボマス)」について注目し、大会などのイベントの様子を折にふれ紹介してきたので、すでにご存じの方も多いと思うが、念のため簡単に説明しておこう。

「RoboMaster」は、中国・深センに本拠地を置く、ドローンや教育用ロボットなどの開発メーカーDJIが主催する、世界最高レベルのエンターテインメントロボットバトルのこと。
毎年深センで開催される世界大会では、参加チーム自ら設計したロボットで熱戦を繰り広げ、世界中の何百万人もがオンラインで観戦するという。参加チームには高度なロボット知識・技術はもちろん、バトルする上での戦略・戦術眼、そしてeスポーツ並みのオペレーション能力が求められるのだ。

より詳しい情報を知りたい方は、下記サイトをご覧いただきたい。

RoboMasterについて

日本からは昨年、FUKUOKA NIWAKAチームが参戦し、初挑戦ながらベスト16に進出という大成果をあげた。さらなる飛躍を狙って挑戦した今年は、残念ながら予選敗退・・・。国内だけでも200以上のチームが切磋琢磨する中国と、現時点でFUKUOKA NIWAKAチームが孤軍奮闘している状態の日本では、まだまだ大きな差があることを認めなくてはならないだろう。

それだけに、今回初めて行われる「Summer Camp」を通して、日本のロボマス界全体の底上げ、さらなる裾野の拡大が期待されるのだ。実際の対戦や技術交流を通じて、みんなの経験値を上げていく、その第一歩になる。つまり、ここから日本のロボマスの新しい歴史が始まるといっても過言ではない。

デバプラの今年の深セン大会のレポートはこちら。

RoboMaster 2019 FUKUOKA NIWAKAが見た景色と、その先の景色(前編)


ロボマスター急成長の理由〜日本のロボコニスト視点で分析

ロボマスター急成長の理由〜日本のロボコニスト視点で分析

9:30・準備

豪雨にも負けず全国各地から集まったのは、全部で8チーム。地元でもあり、唯一世界大会に出場している「FUKUOKA NIWAKA」からは、今回のキャンプの主旨、それとチーム力の底上げを狙い若手を中心に「FUKUOKA NIWAKA杠(ゆずりは)」と「FUKUOKA NIWAKA葵(あおい)」の2チームがエントリー。そして関西エリア代表として「Scramble」と「OSAKA TAKOYAKI」の2チーム。この計4チームがシードとなっている。

さらに遠くは北海道から「蝦夷羆(EZO KAMUY)」。東京から「OOEDO SAMURAI」。名古屋から「NAGOYA SHACHIHOKO」。そして広島から「Setouchi Salamander」の合計8チームがエントリーした。

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各チーム、ロボットの準備を急ぐ。

各チームとも社会人や大学生、高専生など混合編成ではあるが、たとえば「Scramble」では奈良高専と舞鶴高専、「OSAKA TAKOYAKI」では大阪大学が中核になっているなど、大学、高専でロボコンを経験してきた人がチームを担っているケースが多い。そのあたりの事情を、OSAKA TAKOYAKIで指導者を務めている三宅さんは「NHKロボコンだと4年生までしか出られないので、その後、何か続けていけるものがあればというところに、ちょうどロボマスがハマった」と説明してくれた。

日本のロボマスの裾野を拡大するためにも、これからもロボコニストの参加を望みたいところだ。

今キャンプでの対戦は、各チーム2台の歩兵ロボットを操縦し、相手歩兵ロボット、または相手基地を攻撃する。基地のHPをゼロにすれば勝ち。時間内にゼロにならなかった場合は、ダメージの少ない方が勝ちというルール。

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試合を待つフィールド。青と赤に分かれて戦う。

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これが基地。LEDの間にある標的に弾を当てるごとに、相手のHPを削ることができる。

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オペレーター達の到着を待つ、青と赤のオペレーションブース。中央は審判席。

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試合はまず、歩兵ロボットに弾を補給するところから始まる。今回はオペレータが主導で弾を補給するルールになっていた。

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これが、弾。当たるととっても痛い!なので競技者は安全保護メガネを着用する。

熱戦を前に、みんな闘志満々、意気揚々・・・と言いたいところだが、外は何と言っても集中豪雨である。そのためにまだ会場に到着できないメンバーやロボット、部品があり、表情が暗いチームもあった。神戸港からロボットを船便で送り、何とか間に合わせたというチームも。うらめしい豪雨である。

10:30・リーダー(キャプテン)会議

各チームのリーダーや幹部が集まって、ミーティングが催された。運営の石田洋子さん(RoboMaster日本委員会/ニワカソフト株式会社 事業戦略室)より試合の段取りなど説明を受ける。参加者はもちろん、運営も初めてのことで石田さんからは「みんなで作っていきたい。何か意見があればいつでもいいので言って欲しい」とのお願いがあった。また、人やロボット、部品が到着していないチームに対しては、他のチームが協力しながらやっていこうという確認がなされた。会議の後、フィールドなどを見学して回った。
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リーダー会議の様子。みんな少し緊張した面持ち。

石田さんに、今回のキャンプに対する意気込みなどをお聞かせいただいた。

「今年のFUKUOKA NIWAKAの敗戦はショックでした。去年よりチーム力を上げ、自信を持って臨んだのですが、相手はもっと先まで行っていました。これはお金をかけるだけではダメだと思いました。日本全体がひとつになってやっていかないと、中国のチームには勝てない。みんな力を合わせて、いつか世界大会で、日本チーム同士で決勝を争うようになりたい。その第一歩だと思っています」。今回のキャンプにかける石田さんの想いがひしひしと伝わってきた。

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忙しそうに現場を切り盛りしていた運営の石田さん。

運営にはボランティアで参加した学生も。北九州高専の牛島さんと前田さんに話を伺った。
「高専の先生から、『ボランティアをやってみないか』と言われ、参加しました。ロボマスは一応知っていて見てみたいなぁと思っていたので、もう凄く楽しみにしています」
彼らの話を聞くと、なかなかボランティア集めも大変だったらしい。ロボマスの知名度が上がり面白さがわかってもらえれば、きっとボランティア集めにも苦労しなくなる。そんな日が必ずくると、記者は確信している。
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ボランティアとして参加していた北九州高専の牛島さんと前田さん。

11:00・車検

「ロボマス」には、DJIによる厳密な規定・ルールがあり、それを逸脱することは許されない。車検もそのひとつ。車検は(1)サイズ重量ID (2)装甲モジュール・画像転送 (3)射速&電力 (4)その他 の4つの検査があり、それぞれで合格ならステッカーにマーキングが施され、全て合格(ステッカーのマーキングが埋まったら)したら、ロボットの機体にステッカーを貼るのだ。ステッカーのないロボットは、フィールドには入れないのである。

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重量や強度の検査。計りに乗せたり、ボディを叩いたり・・・。

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画像転送の検査。全てがマニュアル通りに厳しく進んでいく。

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射速の検査。銀色のホースの中に弾を撃ち込み、強さを測定する。

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検査に合格すれば、このステッカーにマーキングする。全ての項目でマーキングされていれば、車検合格である。そしてステッカーを機体に貼り、いざフィールドへ!

ここで問題が起こった。FUKUOKA NIWAKAなど手慣れたチーム以外のロボットが、なかなか車検をパスできないのだ。それもそのはず、Setouchi Salamanderのように、まだチームができて2週間、メンバー全員が集合したのは今日!というところもあるのだ。

「うちは車検を通す以前の問題ですね。でも、ここに居られることさえ奇跡」と苦笑しながらSetouchi Salamanderのチーム関係者は語っていた。

また、2台持ち込んだロボットのうち、1台のみ車検パスというチームもあった。当然ながらそのチームは、1台で2台の敵ロボットを相手にしなくてはならない場合もある。かわいそうだが、ルールは守らねばならない。

14:00・テストラン開始

お昼の休憩をはさみ、いよいよテストランが始まった。しかし、まだ車検をパスできないロボットがあり、時間は押し気味である。

やがて「Scramble」対「OSAKA TAKOYAKI」を皮切りに、テストランが始まった。実戦に挑むのは初めて、というチームがほとんど。実戦を行うことで初めてわかることも多かったはず。たとえば、ロボットの強度など。思いのほか、実戦中にバッテリーが外れ、動作をストップさせるロボットが多かったのだ。これも実際にバトルを行って初めてわかることだと言う。「思った以上にロボットのぶつかり合いが激しいので、衝撃の激しい部分には3Dプリンターの部品を使わないとか、いろいろ良い勉強になりました」という声もあった。
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自陣から相手を狙う「Scramble」と「OSAKA TAKOYAKI」の2チーム。

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敵陣を攻める「OSAKA TAKOYAKI」(赤)の2台の歩兵ロボットを迎撃する「Scramble」(青)の歩兵ロボット。

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敵の基地を狙うオペレーター。

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メンバーや機材が遅れる中、孤軍奮闘の「OOEDO SAMURAI」代理キャプテン、青田香菜子さん。

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激しい肉弾戦のため、壊れてしまうロボットも多発。

そんな中、「FUKUOKA NIWAKA」の2チーム、そして奈良高専と舞鶴高専のロボコニストを中心に2017年からチームを結成し活動している「Scramble」は手際がよく、「さすが!」と思わせた。特にスタンバイや、1回戦と2回戦の間のインターバルの時間の使い方が上手い。

RoboMasterではオペレーターはブースからロボットの一人称視点での映像しか見えていない。
「Scramble」はスタンバイの際、車載カメラの前に動作確認の紙を出し、オペレーターはディスプレイでその紙に書かれた動作を行っていたのだ。これで、車載カメラの動作確認、指示通りに動作できているかの確認が同時に行えることになる。極めて効率的だ。メンバーに聞いたら、「学生が自分たちで考えて始めた」という。素晴らしいことだ。

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カメラの前に、動作確認の紙を出し、視覚の確保と操作状況を同時に把握しようとする、「Scramble」の優れたセッティング方法。

一方、「FUKUOKA NIWAKA杠」では、インターバルの間、ロボットの細かな動きをフィールドに入ったメンバーがスマホで録画。すぐにオペレーションブースに走り、オペレーターに見せて確認させていた。

どちらのチームも特別、難しいことをしているわけではないが、そういう細かな行動を積み重ね、限られた時間を無駄なく使うことで大きな成果を上げていた。他のチームも、ぜひ学ぶべきだろう。

テストランも終盤に差し掛かった頃、日本のRoboMasterの第一人者であり仕掛け人、今回のSummer Campの世話人でもある古賀 聡さん(RoboMaster日本委員会委員/ニワカソフト株式会社 代表取締役)にお会いしたので、お話しを伺ってみた。

「今回、初めての開催で準備不足の面もありましたが、とにかく『RoboMasterやりたい人、ここに集まろうよ』という想いでスタートしました。ここで試合をするだけでなく交流して、次のWinter Campで選手がレベルアップしていける場になれば、という想いです。私は日本から世界大会で優勝できるチームを出したいと思っていますので、そのための第一歩にしたいですね。大変なことも多いですが、やりながら改善していこうと思っています。」

古賀さんは、今年の世界大会での敗戦を、おそらく誰よりも悔しく感じている一人のはず。今回のキャンプを、日本が世界へリベンジするためのステップだとお考えだろう。デバプラ記者も、この想いをきっと実現していただけたらと願う。
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日本のロボマスの第一人者、古賀 聡さん。

19:00・テストラン終了&予選リーグ抽選会

やがて夜になり、テストランは終わった。各チームに初日の感想を聞いてみた。

「ま~チームができたのが12月で、実際に動き出したのが6月。とにかく動いて射撃して、今日も敵チームには30発ぐらい当たってたので、これからですね。そのあたりをつめて、明日に臨みたいです。」(OSAKA TAKOYAKI 丹羽キャプテン)

「なかなか面白かったです。難しいですけどいい経験になります。実際に動かして何を改善すべきかもわかったので、明日に備えたいです。」(Scramble 水野キャプテン)

「初めてなんで何をするべきか見ながらやっていました。途中で電源が抜けてしまって・・・。でも明日はそういうのが解決できればいいと思います。」(Setouchi Salamander 山野キャプテン)

「自分たちのマシンがまだ動いていないので、借り物で動かせてもらったのですが、マトモに動かすのも今回初めてだったので、純粋に操作自体が面白くて楽しんでしまいました。OOEDO SAMURAIのマシンは今、回路チェック中で、何とか明日には動かしたいですね。」(OOEDO SAMURAI 青田代理キャプテン)
「勝ちはしましたが、マシンのトラブルが出てきたりとか・・・。確かめたいことは、だいたい確かめられたかなと思います。明日のリーグ戦にそなえて、情報収集と戦略を立てていきます。しかし何が起こるかわからないので・・・」(FUKUOKA NIWAKA葵 上地キャプテン)

「テストランについては、自分たちで課題を明確にできたので、よかったと思います。僕らが他のチームさんより進んでいるとしたら、インターバルの3分間で何をしないといけないのかが明確になっている点だと思います。そういうのは、見て学んでもらうしかないと思います。」(FUKUOKA NIWAKA杠 小豆澤キャプテン)

「結構、難しかったですね。操作感というか空気感が違っていて、周囲の方々のサポートありきで動いているところもあります。今のメンバーが集まったのが7月で、このキャンプでようやく本格的な活動に入って未来が見えてきた感じです。明日は自分たちの力を確認するために、頑張りたいと思います。」(NAGOYA SHACHIHOKO 臼井広報担当)

「思い描いていたものとは違う感じがしました。動作が早い部分が多くて、自分たちのロボットはすぐに止まってしまったのですが、動いている相手チームのロボットを狙わなくてはならないので、手動では厳しいところがあります。3月の本大会に向けては画像処理系を取り入れて自動照準で撃つシステムも考えなければと思いました。」(蝦夷羆EZO KAMUY 三上広報担当)

初めて実戦を経験したからこそ得られた成果が、とてつもなく大きいように思える。この1日は、彼らにとっても非常に大きな1日になったのではないだろうか?(実は、明日2日目に、それがわかる!)

この日は最後に、明日のリーグ戦の抽選会を行い、1日のスケジュールを締めくくった。
それでは各チームのキャプテンの抽選シーンをご覧いただこう。

●蝦夷羆(EZO KAMUY)
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●OOEDO SAMURAI
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●Scramble
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●Setouchi Salamander
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●NAGOYA SHACHIHOKO
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●OSAKA TAKOYAKI
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●FUKUOKA NIWAKA杠
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●FUKUOKA NIWAKA葵
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そしてこれが、2日目のリーグ戦組み合わせだ!

●Aグループ
A1:蝦夷羆(EZO KAMUY)
A2:OSAKA TAKOYAKI
A3:FUKUOKA NIWAKA葵
A4:OOEDO SAMURAI

●Bグループ
B1:NAGOYA SHACHIHOKO
B2:Setouchi Salamander
B3:FUKUOKA NIWAKA杠
B4:Scramble

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グループ毎に総当たり戦を行い、上位2チームが決勝トーナメントに進出する。さぁ、今日のテストとはまた違う、本気の勝負がいよいよ始まる。

次号を、待て!

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Device Plus編集部

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