2018年7月29日、会場であるShenzhen Bay Sports Centerでは、ロボマスター2018の本戦トーナメントが行われている。
FUKUOKA NIWAKA ベスト16!
我らがFUKUOKA NIWAKAの活躍は、すでにご存じだろう。国際チーム予選、そして本戦リーグを見事勝ち抜き、本戦トーナメントの舞台に立った。
国際チーム予選には、シンガポール南洋理工大学や、バージニア工科大学、カーネギーメロン大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校といったチームが出場した。歩兵ロボットが1台のみ、ドローン無し、といったチームもある中、NIWAKAは3台の歩兵を揃え、余裕のある試合運びを見せてくれた。ほぼ完勝、と言っていいだろう。
しかし、ここまでの道のりは、けっして順調ではなかったようだ。4月のDJIによる動画チェックに際して、チーム代表の古賀さんは「内心ヒヤヒヤしていた」とのこと。また、各ロボットが完成したのが、深センへのマシン発送の当日、ということからも、その慌ただしさがうかがえる。もちろん、だとすればゲームの練習や各種調整する期間もほとんど無かったということにもなる。この国際予選は、調整のいい場になっただろう。
国際予選の決勝戦、香港科学技術大学戦では、土をつけられた。しかしこれもかなりの僅差で、ほんの少しの運の傾きで、どうなっていたかわからない展開だった。残り3秒での逆転劇もあった。NIWAKAのマシントラブルもあった。香港科学技術大学と言えば、ABUでも毎回レベルの高いマシンを仕上げてくる強豪だ。さらに言語的にも地理的にも別のレイヤーでの「有利」があると言っていい。
対してNIWAKAは言うまでも無く「初出場」。その技術力に確かなものがあることはわかりきっているが、本当の試合自体の経験は浅い。この国際チーム予選、香港科技大戦の敗戦からも、大きな経験を得て、練度を上げたことだろう。
ただ、連戦はメリットだけではない。NIWAKAの機体を触れることはできなかったが、記者が触った、DJIによるプロト機はそれなりに腰を入れなければ持ち上がらない重量。NIWAKA機も、それほど変わらないだろう。これがあのスピードでぶつかり合うということは、マシンへのダメージも大きなものになることは間違いない。もちろんそれだけでなく、単純な消耗もある。NIWAKA Twitterによれば、「メカナムホイールは消耗品」とのこと。1戦につき、20個のメカナムホイールが動いているのだが……。
ただ、現場では意外なことも行われていた。NIWAKAの最終戦、困ったNIWAKAメンバーを見て、隣のチームが消耗していないメカナムを「貸してくれた」とのこと。このあたりのフレンドリーさ、チームを超えたエンジニアとしての仲間意識、さらに言えば「コードをくれ」といったコミュニケーションがあることも、NIWAKAメンバーが教えてくれた現場のムードだ。
本戦リーグも、NIWAKAは安定した戦いぶりを見せてくれた、と記者には思える。さすがに相手チームの力も上がり、簡単に勝てる展開は減ったが、それでも記者個人としては「安心してみていられる」状態だった。
ただ、メカナムホイールの消耗以外でも、アツい場面は多かったようだ。ヒーローロボットのローディング用アームを下ろし忘れたままトンネルをくぐろうとしたパイロットに対して、「FFFFFFFFFF!!!!」との声がオペレーティングルーム内に轟いたこと(キーボードのFキーで、アームが下がる)。現地で、ヒーローロボットの装弾と射出に関する不具合が明らかになり、同じくルーム内で「(弾が)出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ!!!!」と絶叫するメンバーがいたり……(ちなみにこのトラブルは、現地調達した、チップスターの箱を使って解消したとのこと)。
本戦トーナメントでのNIWAKAの勇姿に電撃
本戦トーナメントのステージに立ったFUKUOKA NIWAKAの姿を見て、記者は震えが走った(実を言えば、国際予選の1戦目もそうだった)。よくぞここまで、でもあり、シンプルにクールすぎるという思いでもあり、ここからの激戦を予感したからでもある。
本戦トーナメント第1戦の相手は、東北大学。ABUロボコンでも有名な、紛れもない強豪校だ。
結果は、0−2のストレート負け。
圧倒的だったのは、東北大学の歩兵の威力だ。ファーストラウンド、NIWAKAの歩兵を倒しファーストブラッド、攻撃力ボーナスの取得、そして哨兵撃破。3分と少しの間の出来事だった。スピードも攻撃能力も、そしてマニューバも一級品だった。攻撃力ボーナスも複数回稼ぎ、総ダメージの2万越えは恐ろしい。「とにかく歩兵がうまかった!」とはNIWAKAチームの声。
セカンドラウンド、おそらくNIWAKAも必至に対策を練っただろう。試合開始直後、東北のヒーローが停止。攻めに回るNIWAKA。しかし、東北大学の歩兵の動きは、ヒーロー不在の悪影響を上回った。連携により、残り5分の時点でNIWAKAヒーローを撃破、ファーストブラッド。そして回復したヒーローを、さらにもう一度、包囲してダウン。6対5の状況にもかかわらず、東北大学歩兵3機の活躍により、NIWAKAの負けが確定した。
本戦トーナメント2戦目は、対華北理工大学。これも0−2で敗北となった。
ファーストラウンド序盤は、互角の立ち上がりに見えた。相手ヒーローを削るNIWAKA。しかし削りきれず。しかし華北が42ミリロードを成功させると、試合が動く。動きがにぶくなったNIWAKA哨兵に華北ヒーローと歩兵が迫り、ファーストブラッドが哨兵、という珍しい展開に。NIWAKAは続いて歩兵も失い、徐々にベースHPも失い、敗北。メンバーからは、「序盤にヒーローを仕留めきれなかったのがミス」とのコメントがあった。
セカンドラウンド序盤、やはり一方的な展開にはならない。しかし残り5分頃、ファーストブラッドは華北が取得。NIWAKA歩兵がダウンした。ここからマッチが傾き出す。華北は、明確な押し引きと、固まらないポジショニング戦略があるように見える。記者の技量では正確に言うのが難しいが、ムダのないマニューバ、とでも表現すべきか、東北大学の圧倒的な強さとはまた違った、負けない、そしていつの間にか勝つ戦い方を持っている、とも感じる。
……この敗戦で、NIWAKAの敗退が決まった。
ここに至るNIWAKAの戦いぶりは、ロボマスター公式Twitchでもアーカイブされている。また、NIWAKA部分のみをまとめたYoutubeを作成している篤志家もいるようだ。探してみていただきたい。
NIWAKAメンバー その後
全ての試合を済ませ、全員が晴れ晴れとした顔が印象的だった、NIWAKAメンバー。
ヒーローを操縦したTakuma Miyazakiさんは「とにかく忙しい1週間だった。でも、一瞬の出来事だったように思えます」とのこと。歩兵ドライバーのHidetaka Odaさんも、「上手い言葉が出てこないけど、きつかったけど楽しかった!」。いずれも外から見ていた記者にも、よく分かる実感だ。そして歩兵ドライバーのMinori Furusawaさんは「魔法のような一週間だった」と語ってくれた。この言葉が、そしてみなさんの言葉と表情が、高揚と希望と苦闘と栄光と敗北と忙しさと……とにかくたくさんの感情の坩堝たる、ロボマスターの現場の空気を語り尽くしているように思える。時間が、あまりにも輝いている。
また、今回主催者代表のYangshuo氏にも話を聞くことができた。このFUKUOKA NIWAKAのベスト16進出に関しては、率直に高く評価していた。「個人的にも、高い技術力だったと思う。8ヶ月しか準備期間がないなか、また基本的な情報が中国語で提供されているなか、ここまで来たのは本当にすごいこと」とのことだ。さらに、NIWAKAのような国際チームが増えることを望んでいて、海外から参加するチームのサポート体制をより充実させることを意図していることも明言してくれた。
余談だが、記者は会場で、『ロボマスター大全』とも言えるブックレットを手に入れた。100ページ超のフルカラー、そして2017年大会に出場したロボットの「解剖計画」的なものも付いている。ただし、もちろん中国語だ。こうした情報が日本チームにも届けば、ロボマスターの敷居がぐっと下がることだろう。
また、NIWAKA代表の古賀さんは、今回の大会を通じてロボマスターに興味を持ち、「自分も出たいと思った方は、ぜひ手を上げてください」と語っていた。かつ「超えてください」とも。この後、メンバーがMakerFaireに出たり、各種のイベントに登壇したりする機会があるようだ。そういった場面でも、手を上げることができるだろう。ソーシャルメディアも活用できるはずだ。
FUKUOKA NIWAKA Twitter
Robomaster JP Twitter
今回の連載の流れ
決勝直前! ロボマスター2018 @深セン現地レポート
【速報】ロボマスター2018深セン現地レポ・FUKUOKA NIWAKA参戦記(今回)
【速報】ロボマスター2018 決勝現地レポ〜ハイレベルなストラテジーを堪能せよ
ロボマスター急成長の理由〜日本のロボコニスト視点で分析
深セン華強北(ファーチャンペイ)で???!!!を探す:ロボマスター2018取材番外編
深センで「負け」を知ること〜ロボマスター日本初出場チームFUKUOKA NIWAKA大会後インタビューVol.1
呪いをかけられること~ロボマスター日本初出場チーム FUKUOKA NIWAKA大会後インタビューVol.2