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大会の敗北で失うもの、得るもの FUKUOKA NIWAKAかく戦えり(3)

RoboMaster 2019
前記事:RoboMaster2019 あの試合では、何が起こっていたのか?FUKUOKA NIWAKAかく戦えり(2)

大会3日目 対UIUC戦、対香港科学技術大学戦、対上海理工戦

━━3日目の1戦目は、UIUC、イリノイ大学と浙江大学の合同チームです。結果は2ラウンドをとって勝利。実力が均衡するなか、いろいろドラマチックなマッチでした。

花園:2ラウンド目の試合開始直後の、エンジニアロボットの転倒ですね。

エンジニアは、段差に対する進入角度が一定角より大きくなってしまうと、斜めになって転倒しちゃうんです。その角度を自分が見誤ってしまいました。

花守:前と後ろには、さっき言った起き上がり機構があるんですが、横向きだと使えない。まあ、わかりやすく言うと、操縦ミスですね。花園さん、一番へこんでいましたね(笑)。

━━ヒーローは弾を撃てず、歩兵もダウン、まともに動けるロボットがいない状態で、もう勝つのは難しい、と見えました。その時、オペレータールームはどんな感じでしたか?

花守:エンジニアがコケた時点で、絶望が広がって、みんな一瞬「えっ」みたいな。エンジニアの後ろからヒーローがついていくことになっているので、コケたことを最初に確認するのはヒーローの操縦者です。で、みんなに報告する前に、めっちゃちっちゃい声で「えっえっえマジか」って。それで「なになになに?」って聞いたら、「エンジニアこけてます」。……あー終わった、という瞬間です。

━━しかしそのさなかに、古澤さんが相手の哨兵のHPが減っていることに気づきます。

花守:古澤さんがどう言ったかは憶えてないんですが、相手の哨兵が壊れているから基地にいってHPを削った方がいい、って。あの状況だと、確かに敵の基地を削るしかなかったんですよね。厳しい状況で相手の不具合に気づけたっていう部分は、たしかにドラマチックでした。
加えて、足回りが万全じゃないなか、基地にたどりついてちゃんとダメージを与えた歩兵操縦者の光武 亨さん(九州大学)も凄かったですね。
そういう意味では、全員の連携がうまくいった。……いや、エンジニアだけは連携取れてない!(笑)

河島:試合が終わった後、みんなで互いに「ナイスプレー!」となったんですけど、花園さんに「オマエだけはチガウな!」みたいな(笑)。

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━━仲が良さそうで何よりです。その次の試合が、先ほど花守さんが「神がかっていた」と言った香港科学技術大学戦です。結果は0−2、2ラウンドともに怒濤の攻めで取られ、完敗でした。

花守:相手の作戦が一定で、攻撃の準備が整った段階でこちらの状態にかかわらず全ロボットで攻めてくる、と認識していました。一応こちらも準備をしたんですが、それもままならないうちに、一気に攻められてしまった。ロボットの差もあったかもしれませんし、相手の流れを覆すだけの技術が僕らにはまだなかった。
試合後、なんでそんなにちゃんと動けるのか、聞きに行ったんです。で、ロボットができあがったのは、大会一週間前。僕らと変わりません。かつ、練習している場所の広さも、あまり変わらないらしい。ということは、純粋に事前の話し合いがちゃんとできていて、それが実現できるというのは、僕たちより明らかに優れていた。

花園:その「ロボットができあがる」っていう定義が、自分たちよりずいぶん基準が高い気もします。

花守:たしかに。でもいずれにしても、僕らは作戦やそれに合わせた動きの練習とかができていなかった。香港科技と戦って、これはけっこうクるものがありました。ぜんぜん、まだまだできる可能性があったと、個人的に思っています。
もう一回挑戦させて欲しいですね。具体的にどうすれば勝てるかわかっているわけではありません。中国のチームは、前回のベスト32とか16が、今回の標準になっているぐらい、スピードが速い。でも、それを上回るスピードで成長しないといけない。

━━そして最後のマッチ、上海理工大学です。1−2で、敗北。これで、中国本戦に出ることは適わず、国際予選での敗退が決まってしまいました。

花守:1ラウンド目は取って、2ラウンド目ですね。相手をフリーにしてしまって、基地をちょこっと削られて負けます。これも、言ってみれば練習不足……になってしまいます。例えばエンジニアロボットだったら、弾を取ることやレスキューの練習はしました。だけど、言い方は悪いですが、入り込んでくるハエをどう落とすか、みたいな練習はまったく足りていませんでした。その隙をつかれました。

花園:エンジニアロボットは、すごく視界が悪いんです。視界を確保するためにカメラがたくさんついているんですが、それぞれのカメラの画像を、メインのディスプレイに映して、操縦者はそのメインのディスプレイを見るんです。手元のキーボードでカメラを切り替えながら、そのディスプレイに映っているディスプレイを見る、というイメージです。

河島:しかも、アナログ信号の、例えばちょっと古いカーナビのバックモニターみたいな、鮮明とは言えない画質です。上位チームのはもっと鮮明に見られるようにできていて、その点に関しては、すごく不利だったと思います。次回にむけて、確実に改善できる点です。

━━3ラウンド目、このハイライトは、NIWAKA哨兵の停止です。

河島:レールのカーブのところにタイヤが噛んで、ロックしてしまっていました。哨兵のモーターはスピードを優先していて、そこから抜け出すトルクが足りない状態でした。

花園:ちゃんと狙われてしまいましたね。こちら側も、すぐに気づけなかった。

花守:哨兵は、体力的に余裕があるはずなんです。数体から攻撃されたとしても、すぐに気づけば、遠いところにいた歩兵が戻ってきて阻止するぐらいの時間的余裕があるはず。自分みたいな立場の人間が気づけるはず、気づくべきだったので、それも敗因のひとつになっていると思います。

敗北から得たもの

━━ここで、今回の大会が終わってしまったことになります。どんな気持ちでしたか。

古賀:ぜんぜん、予想していなかった結果です。早すぎた。あっという間すぎて、信じられない感じ。

花守:僕も驚きました。ただ、同時に、得るもの、負けたことで学ぶものも多かった、と思いました。自分たちのロボットが前回より上だったとは思っていますが、向こうはゲームとしてのプレイヤースキルのこともそうですし、何より技術の進歩もすごい。僕らは成長速度がまったく追いついていない。だから負けたことに納得できた部分もあって、負けた瞬間に「次、どうにかしなきゃいかん」と思っていました。

━━負けた瞬間に、そうだったんですか?

花守:そうですね、割と切り替えが速いっていうのもあります。すぐにその日の晩ご飯のことを考えました(笑)。

花園:僕は前回の大会を経験していないので、成長速度とか国際予選でのまさかの、みたいな感想はなくて、ひたすらエンジニアロボットのことを考えていました。一年を通してそれしか考えていなかったので。
エンジニアの開発にあたって、優先順位を見誤っていたかもしれない、と思っています。僕たちのエンジニアは、僕がつけた優先順位なんです。一番時間を使ったのが、42ミリ弾を速く取って、いかに相手に取らせないか、ということでした。
ただ実際に戦ってみると、それよりもレスキューが重要でした。その能力は高くなかったし、練習も少なかった。

河島:練習が足りなかったというところにつながって来るね。

花園:悔しかったです。自分たちが最重要としていたものが、現実にうまくマッチしなかった。それに、自分たちのエンジニアロボットを、もっと勝ち進んで、多くの人に見てもらいたかった。単純に、悔しかったです。

河島:僕は、大会前に、どれくらいいけるか個人的に予想していました。中国の国内大会は、ネットで配信されますよね。あれを見て、各チームの成長速度がハンパじゃない、っていうのが本当にわかったんです。だから、世界ベスト16以上は無理だな、っていう感想だったんです。

━━冷静に、今、立っている場所を認識したんですね。

河島:世界一を目標にしているなかで、ショッキングなことでもあります。しかし、精一杯がんばったけど、届かなかった、というのが現実です。
でも、終わった瞬間に、いままでの10ヶ月間がこれで良かったのかという悔しい気持ちと、一方で、この敗北で、メンバーが自分たちの弱さに気づいてくれるんじゃないかというところに、少しの期待を持っていました。
実際に、次の日から、そういう動きが見えたんです。空いた時間に他のチームにインタビューして、例えば無限回転する機構はどんな部品を使っているかとか、どこで手に入るのか、どんな制御をするのか……、自分たちの足りないところを補うために、メンバー全員が本当に努力していたんです。
言い換えると、残りの時間を絶対にムダにしないという動きが、メンバーそれぞれから見えました。やっぱり上を目指すということは、こういう悔しさを乗り越えて成長していくことなんだな、と。

━━古賀さんは、そうしたメンバーを俯瞰して、あるいはすぐ横で見ていたわけですが、それを感じましたか?

古賀:そうですね。試合が終わった当日も、次回も出たいとか、今度は目一杯やりたいとか、最初から関わりたいとか、前向きに捉えてくれていました。そこは本当にうれしかった。それまで数人のコアメンバーでやっていた感じがありましたが、そうなれる人が増えたような印象は、試合が終わった直後に感じました。

━━なるほど、言ってみれば……、

花守:あの敗北で、チームが統一された感がある、ということですね。

上位校を目の当たりにして、改めて浮き彫りになる課題

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━━上位校は、確かに大幅な進化を遂げていました。例えば優勝した中国の東北大学は、ボーナスチャレンジを成功させ、その威力ブーストに併せ、射撃精度を極めて、ドローンだけで勝つ。ある意味でルール設定をひっくり返すまでの技術力でした。

花守:ゲームの中でルールをぶっ壊せるって、めちゃめちゃかっこいいと思うんです。みんなの想像を超えたロボットを作ったってことですもんね。それに、結局、全部のロボットがそのレベルじゃないと、優勝は確実なものにならないと思うんです。例えば、もしドローンが壊れていても、東北大学はヒーローロボットも強かったので、結局優勝したと思います。

河島:実際、決勝の方まで、あのドローンでの勝ち方は使わなかったもんね。

━━上位のチームを実際に見てみて、何か違いを感じましたか?

花守:上位チームって、できないアクションがないですよね。ボーナスチャレンジとかレスキューとか、基本的なことは当たり前で、それに加えて、リーサルウェポンというか、東北大学のドローンもそうですし、ヒーローで遠距離攻撃ができるとか、ずば抜けたもの。予算とかヒューマンリソースとか、いろいろあると思いますが、最終的にはあそこにたどり着く必要がある、と確信しました。

河島:熱量がすごいです。RoboMasterに夢中になる人、本気になる人が多いんですよね。上位になるチームは入部希望者が何百人いるなかから選抜された人だったり、と聞いています。そう考えると、日本でも競技人口が増えて、盛り上がっていくことが、日本のチームが世界で勝つうえで重要になってくる、と思っています。

花園:そうですね、やっぱりボトルネックになっているのが人的リソースです。NIWAKAは、予算はかなりめぐまれている方だと思うので、本当に人を集めていかないといけない、と再認識しました。

これからのRoboMaster、FUKUOKA NIWAKA

━━最後に、今後のこともお聞きします。次の大会に向けて、どう動いていきますか?

河島:全体としては、今言ったような学びの上に、これから具体的なことを決めていくことになると思います。僕に関して言えば、FUKUOKA NIWAKAのメンバーとしては引退で、RoboMaster Japan、日本委員会の側になります。
先日のサマーキャンプでは、まだ始まったばかりで至らない点も多かったと思いますが、これからどんどんフィードバックをもらって、改善していきたいと思っています。元選手、ですから、出場する側の気持ちもわかる技術担当として、一番必死にやっている選手たちの、活躍の場を作りたいです。
さきほど、花園がエンジニアロボットの開発に夢中になっていた、という話がありました。これってすごく重要ですよね。本人が夢中になって、それが成果につながるというのは非常に幸せなことです。これから、このRoboMasterで夢中になる楽しさを経験してもらったり、もっとそうなれる人が増えたり……。それが、これから頑張っていきたいことです。

━━花園さんは?

花園:勝ちたいです。勝ちに貪欲になって一緒に頑張ってくれるメンバーと一緒にやりたいです。

━━楽しいですか。それとも、大変、ですか?

花園:楽しいです。辛いですが、めちゃくちゃ楽しいです。

花守:自分は、前回と今回で、見える景色がぜんぜん違いました。成長速度を体感したり、大会自体の進化も目の当たりにして、これからできるだけ長くRoboMasterを続けたい。FUKUOKA NIWAKAというチームがコンスタントに強いチームであるように、できるだけ、できること全部やって、日本のものづくりのアイデンティティとか、世界に通用するって自分で思えるものを作って行きたい。そう思いました。次回も、具体的にどんなポジションかは思案中ですが、精一杯やりきるつもりです。

古賀:そうですね、僕は、こうやってRoboMasterをやりたいと思っている人に対して、もうなんでもします、って立場です(笑)。少しでも興味があったらどんどんこちらへ来て欲しいですし、他のチームももちろんですし、もし支援したいという方がいれば、それも大歓迎です。よろしくお願いします!

◆◆◆

FUKUOKA NIWAKAの課題は、いずれも一筋縄ではいかないものだ。人的リソースの増強も、技術的なレベルアップも、また戦術の熟練も、一朝一夕にはならない。加えて、中国チームの進化は圧倒的だ。
しかし一方で、この敗北から得たものは、非常に大きかったようだ。やはり、その場に立ち、感じ、自分の手で何かを為した結果の学びは、何事にも代えがたい。難しい課題があったとしても、解決するきっかけを得たに違いない。そう思わせられる、みなさんの言葉だった。
FUKUOKA NIWAKAはもちろん、RoboMaster Japanも、このリアルな体験を糧に、また違う次元に進化してくれるだろう。引き続き、デバプラはこの両者を、また各参加チームを追っていく。

※FUKUOKA NIWAKA、また日本各地の各RoboMaster参加チームでは、常時メンバーを募集している。多少なりともRoboMasterに興味を持ったかたがいらっしゃれば、実際に参加するかどうかを問わず、ぜひコンタクトしていただきたい。

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Device Plus 編集部

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