前回は、コンデンサのしくみを通じて、電気二重層コンデンサの充電方法について学びました。電気二重層コンデンサが短時間で充電が可能なことがわかりましたので、今回はその性質を利用してソーラーパネルで電力をためつつ、ソーラーパネルからの発電が弱まった際に電気二重層コンデンサから電力を供給してArduinoを安定的に動かしてみたいと思います。
今回の電子工作レシピ
時間目安:60分
必要なパーツ
- Arduino Pro mini (Arduino Pro Mini 328 3.3V 8MHz https://www.switch-science.com/catalog/946/)
- ブレッドボード https://www.sengoku.co.jp/mod/sgk_cart/detail.php?code=EEHD-4D6P
- 電気二重層コンデンサ 25F 5.4V http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-09303/
- 携帯機器用ソーラーモジュール 300mW http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-06564/
- LDO3端子電圧レギュレータ(出力5.0V)【BA50DD0T】 http://www.marutsu.co.jp/pc/i/127890/
- 電解コンデンサ 33μF~100μF 16V~35V http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-03122/
- 積層セラミックコンデンサ 0.1μF 50V http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-00090/
- LED
- 抵抗器(220Ω)
電気二重層コンデンサの充電時間の計算
今回利用する電気二重層コンデンサは、25F、5.4Vを利用します。
これまでは1F、5.4Vでしたので、容量は約25倍ですね。LED一つ光らせるのであれば満充電状態であれば1時間以上光らせることができます。もちろん、充電もその分時間はかかってしまいますが、充電時間を簡単に計算してみましょう。
コンデンサの充電式:CV=It
- C:静電容量(F=ファラド)
- V:充電電圧(V=ボルト)
- I:充電電流値(A=アンペア)
- t:は充電時間(秒)
この式を元に、ソーラーパネルからの電圧を5V、電流を100mAと仮定して、充電時間を計算すると、
t = C × V ÷ I → t = 25F × 5V ÷ 0.1A
t = 1,250秒 = 約20分
となります。出力電流が500mAや1Aなどのソーラーパネルの場合、この2〜4分で充電が完了すると考えると、電気二重層コンデンサの充電時間がいかに短いかわかりますね。
ソーラーパネルから電気二重層コンデンサへの充電
さっそく、ソーラーパネルから電気二重層への充電回路を作成します。図1の左上の大きなコンデンサが電気二重層コンデンサとなります。この回路では、直列に接続された2枚のソーラーパネルから3端子電圧レギュレータ(5V)を通じて、5Vの定電圧を出力します。3端子電圧レギュレータから出力された電気は、電気二重層コンデンサとLEDに接続されています。
この時、実際の動作としては、3端子電圧レギュレータから出力された電気は、電流が流れやすい方(電圧が低い方)に流れていくので、空の状態の電気二重層コンデンサに流れていきます。その時電気二重層コンデンサは充電されていくので、徐々に電圧が上がっていきます。その状態がしばらく続いた後、電気二重層コンデンサよりもLEDへ流れる方が電圧の負荷が低ったタイミングで3端子電圧レギュレータからの出力はLEDに流れていき、LEDが光ります。ですので、電気二重層コンデンサを満充電に近い状態にしたい場合は、LEDの回路にかかる負荷電圧を約5.3〜5.4Vの間にすることで実現できますね。
Arduinoへの電力供給
次にArduinoへの電力供給部分に取り組みます。Arduino Pro Mini(3.3V)への入力電圧の推奨値は3.35V-12V(https://www.arduino.cc/en/Main/ArduinoBoardProMini)となっていますので、第25回で利用した3端子電圧レギュレーター(3.3V)でも問題なさそうですが、今回は5Vの3端子電圧レギュレーターを利用していますので、ArduinoのVccピンからはArduinoのモデルの電圧である3.3Vが供給されますが、RAWピンからは5Vの出力を得ることができるので、いろいろなパーツを使う際にも重宝しそうです。
この回路では、先ほどのLEDの代わりに出力先にArduinoのRAWピンを接続しています。こちらも同様に、最初は電気二重層コンデンサの負荷電圧が低いため、電気二重層コンデンサへ充電されますが、Arduinoの負荷電圧より電圧が高くなったタイミングで、Arduino側へ電流が流れ始めます。
また、ソーラーパネルからの電力が弱くなった場合は、電気二重層コンデンサの蓄えている電圧が上回り、電気二重層コンデンサからArduinoに電流が流れるようなしくみになっています。
いろいろな回路を試してみる!
ひとまずArduinoへの安定的な電源回路ができたので、いろいろな回路を動かしてみましょう。最初はLチカですね。9番ピンにLEDを接続して試します。
しっかり光ってますね!充電時間を計算した式を応用して、コンデンサにたまっている電力がどれくらいの時間でなくなるのか知るためにも、テスターを利用して消費電流を調べてみます。LEDがオフの時はArduinoだけの消費電流が約7mA、LEDがついた場合は12mAでしたので、ざっと計算しても2、3時間くらいは動きますね。実際に動かしてみると思った以上に役目を果たしてくれそうです!
次はサーボモータを動かしてみます。モーターは比較的消費電力の大きなパーツなので、どれくらい動くか心配です……。
サーボモータが動いている時の消費電流は約140mAでした。これであれば、常に稼働した場合も10分程度は動かすことができるので、蓄えた電気を使って、サーボモータを使ってスイッチを押したりするなどの利用もできそうですね。
まとめ
ソーラーパネルから電気二重層コンデンサに充電を行い、ソーラーパネルからの電力が弱くなったら充電電力を使ってArduinoを動作させる回路ができました。効率的に電力を充電する・利用するにはもっと回路を改良する必要がありますが、手軽に扱うことができるので、いろいろな応用にも生かせそうです。
今回、この充電回路を用いて、第22回に作成した植物監視水やりマシンを改良してみました。この水やりマシンは植物を陽に当てる関係上、窓辺に置きたかったのですが、コンセントを延長するのが美しくなかったので、今回の回路を組み入れることでArduinoと植物を単独で動作させることができました。
上記の例に限らず、これまで作成した回路をソーラーパネルと電気二重層コンデンサを使って電池やコンセントを必要とせずにArduinoを動かすことができますので、ぜひ挑戦してみてください。