できること

第26回 Arduinoでパーツやセンサーを使ってみよう~ソーラーパネルでArduinoを動かしてみる(中編)

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前回はソーラーパネルを使ってArduinoでLチカすることができました。晴れている日は問題なく動作することはわかりましたが、屋内照明や少しでも曇ってしまうとソーラーパネルからの電力が足りず、Arduinoを安定して動かすことができませんでしたね。今回は、ソーラーパネルからArduinoを安定的に動かすために、ソーラーパネルからの電力を充電をしながら動作させる方法を学んでみたいと思います。

今回の電子工作レシピ

時間目安:20分
必要なパーツ

そもそも、充電池ってなに?

私たちが普段何気なく使っている「電池」。乾電池、マンガン電池、アルカリ電池、充電池、蓄電池etc…いろいろな呼び名や種類の電池が思い浮かぶと思います。また、車やバイクなどに載っているバッテリー、これも電池なのでしょうか?

これら普段利用している電池の種類は、大まかに2種類に分けることができ、使い捨てタイプの「一次電池」(マンガン電池、アルカリ電池などが一般的)、充電して繰り返し利用できるのが「二次電池」(ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、鉛蓄電池などが一般的)と呼ばれます。(ちなみに車のバッテリーは一般的には鉛蓄電池になります)

今回、充電池に充電をしたいのですが、各種充電池の特性を確認してみます。

ニカド電池
  • 充電回数500回前後
  • 安定した放電(空になるまで安定した高出力)
  • メモリー効果を受けやすい
  • 自然放電が大きい
  • 低音でも電圧が下がらない
ニッケル水素電池
  • 充電回数500回前後
  • ニカド電池よりも大容量
  • 自然放電が少ない
リチウムイオン電池
  • 充電回数500回以上可能
  • 3つの中でもっとも大容量
  • 低温でも電圧が下がらない
  • 満充電状態で放置すると寿命が短くなる
  • 自己放電が少ない
  • 他の2つの電池(1.5V程度)に比べて電圧が高い(3.7V程度)

充電池といっても種類によってかなり違うんですね。

 

充電池に充電するには?

充電池にいろいろ種類があり、メリット・デメリットがあることがわかりました。では、充電池に充電するにはどうしたらよいのでしょうか?単純に考えると、電池に電力を流してあげれば良いのですが、調べてみると、充電池の電圧と同じ程度の電圧(単三充電池であれば1.5V程度)で電流を流してあげれば良いようです。電池は電力を使うと電圧が下がるので、電圧を水の高さに例えると、電圧の高いところ(充電器)から低いところ(充電池)に電流が流れていく、というイメージになりますね。さらに調べてみると、充電池を充電する際に、電圧が高すぎたり過充電状態(満充電からさらに充電しようとする)になると充電池に負荷がかかってしまい、液漏れや最悪の場合爆発するなど危険があるとでてきました。電池には「専用の充電器以外では充電しないでください」とも書かれています。ううむ、これはちょっと安易な考えでソーラーパネルから充電するのはやめたほうが良さそうですね。

また、充電池は種類やメーカーによって、充電のための仕様が違ったり、満充電状態を検出する方法が違ったりするので、ソーラーパネルから充電池に充電を試みるのは危険なため、手軽に充電することが難しいようです。

 

救世主、電気二重層コンデンサ。

いきなり壁にぶつかり困りました。充電池に充電をすることが難しいので他の方法を考えてみます。調べていると「電気二重層コンデンサ」というキーワードにたどり着きました。なんでしょう、この重厚で力強さを感じさせるキーワード(笑)。さらに調べてみると、「スーパーキャパシタ」「ウルトラキャパシタ」などとも呼ばれているようです。電気二重層というのはどういうことかわかりませんが、コンデンサというキーワードはよく見聞きしますね。

wikipediaで調べてみると…

電気二重層コンデンサ – wikipedia

電気二重層コンデンサ(でんきにじゅうそうコンデンサ、Electric double-layer capacitor、EDLC)は、電気二重層という物理現象を利用することで蓄電量が著しく高められたコンデンサ(キャパシタ)である。20世紀末から電気二重層キャパシタの開発が始まり、いくつかの分野で使用が始まっている。今後性能がさらに向上すれば一部のバッテリーを代替する可能性がある。 電気二重層キャパシタは陽極と陰極の2つの電極を持つが、この2つが二重層という名前の元となったわけではなく、両極それぞれの表面付近で起こる物理現象である「電気二重層」が元となっている。電気二重層キャパシタはウルトラ・キャパシタ(Ultracapacitor)やスーパー・キャパシタ(Supercapacitor)とも呼ばれる。

その中に「一部のバッテリーを代替する可能性がある」ということで、未来の充電池の代わりになるかもしれない、ということがわかりました。

簡単に電気二重層コンデンサの特徴を見てみると、

  • 短時間で充放電がおこなえる(電池に比べて内部抵抗が低いため)
  • 寿命が長い(充電・放電による劣化が少ない)
  • 自己放電の時間が早い
  • 充電・放電時の電圧変化が直線的
  • 電池に比べ低温でも動作可能

充電池をそっくりそのまま代用とはいかないかもしれませんが、これは期待が持てそうです。

 

 

あれ、そもそも、コンデンサって何?

よく見聞きするこの「コンデンサ」って何でしょう?前回も何気なく登場していますね。

写真1.真ん中と左側の部品がコンデンサ

写真1.真ん中と左側の部品がコンデンサ

 

再度wikipediaで調べてみると…

コンデンサ – wikipedia

コンデンサ(蓄電器、羅: condensare、独: Kondensator、英: capacitor キャパシタ)とは、静電容量(キャパシタンス)により電荷(電気エネルギー)を蓄えたり、放出したりする受動素子である。 静電容量の単位はF(ファラド)が使われる。通常使われるコンデンサは数pF – 数万μF程度であるが、電気二重層コンデンサなどでは数千Fオーバーの大容量な物もある。両端の端子に印加できる電圧(耐圧)は、2.5V – 10kV程度までさまざまである。

「静電容量(キャパシタンス)により電荷(電気エネルギー)を蓄えたり、放出したりする受動素子である。」とあります、これって充電池と同じ働きですよね!?基本的に充電池は異なる金属を電解溶液を通じて化学反応させてその中で電力を発生させるしくみですが、コンデンサは、2枚の金属の間に絶縁体を挟む構造で、その金属に電気を流すと電荷が蓄えられる(お互いの電荷が絶縁体を挟んで引き付け合う状態)というしくみになっています。コンデンサは化学反応で電荷を得る充電池と違い、電荷が最大までたまると電気が流れなくなるので、今回利用する電気二重層コンデンサでは充電する際も満充電の検出や過充電などの心配がないので手軽に扱うことができます。通常のコンデンサでは静電容量が極端に小さいことから交流電流を直流にする回路やノイズをカットする回路などで使われたりします。

 

図2.コンデンサのしくみ

図1.コンデンサのしくみ

コンデンサをもっと知るために、簡単な実験をしてみましょう。

 

コンデンサを作ってみる

2枚の金属の間に絶縁体を挟むのがコンデンサのしくみ、ということで適当な大きさのアルミホイルとラップを用意します。2枚の金属がくっつかないようにアルミホイルを挟んだ状態にします。

写真2.アルミホイルとラップ

写真2.アルミホイルとラップ

この状態で、電池のプラスマイナスをそれぞれのアルミホイルにつなげて電気を流したあと、電圧を測ってみると…

写真3.電池から電流を流したあと、電圧を測ってみると…

写真3.電池から電流を流したあと、電圧を測ってみると…

おお、0.036Vとなっていますが、わずかに電圧を持っていることがわかりました。金属同士の距離が近ければ近いほど、電荷の結びつきが強くなるとのことなので、2枚の金属にそれぞれ銅線をつなげたうえで2枚の金属が触れないように折りたたんでいきます。

写真4.自作コンデンサを折り畳んでいく

写真4.自作コンデンサを折り畳んでいく

折りたたんだ後、丸めていきます。

写真5.自作コンデンサを折りたたんでいく

写真5.自作コンデンサを丸めていきます

ある程度丸め終わったら、マスキングテープで固定して、万力などできちんと金属同士が近くなるようにつぶして圧縮します。

写真6.マスキングテープでぐるりと固定。

写真6.マスキングテープでぐるりと固定。

これで、自作コンデンサが完成しました。再度、自作コンデンサに電池から電気をためてみます。

ご注意ください!:電気をためる際は必ず電池1~4本程度を使って実験してください。家庭用のコンセントなどは危険なので絶対に使わないでください。

写真7.自作コンデンサに電気をためる

写真7.自作コンデンサに電気をためる

すぐに放電してしまいますが電気がたまっていることがわかりますね!実験を通してコンデンサのしくみがわかりました。

 

充電池と電気二重層コンデンサの違い

コンデンサのしくみを理解したところで、改めて充電池と電気二重層コンデンサの違いを整理してみます。

メリット デメリット
充電池
  • 充電容量が大きい
  • 価格が安価
  •  充電時間がかかる
  • 寿命が短い(500〜1,000回程度)
電気二重層コンデンサ
  • 短時間で充放電が行なえる
  • 寿命が長い(10万回〜)
  • 充電・放電時の電圧変化が直線的
  • 低温でも動作可能
  •  容量に対して値段が高い
  • 自己放電が早い

また、電気二重層コンデンサを使う場合、便利な点と注意点で下記の点が挙げられます。

  • 過充電の心配がない
  • 充電の際は電圧を一定にする
  • 充電の際には耐電圧を大きく超える電圧で充電しない

 

電気二重層コンデンサを使ってみる

今回使う電気二重層コンデンサは1F(ファラッド)、5.5Vのものを利用します。一般的に目にするコンデンサの単位はμF(マイクロファラッド)やnF(ナノファラッド)、pF(ピコファラッド)なので、その大きさがわかりますね。

1F = 1,000,000μF =  1,000,000,000nF = 1,000,000,000,000pF

先ほどの実験のように、コンデンサを電池から充電した後、LEDをつないで時間を測ってみます。単3電池4本だと6Vになってしまうので、これでも大丈夫ですがダイオードを2つ入れて電圧を5V程度に落とした状態で充電します。

写真8.電池から電気二重層コンデンサに充電

写真8.電池から電気二重層コンデンサに充電

写真9.充電後の電気二重層コンデンサ

写真9.充電後の電気二重層コンデンサ

 

電圧計で測りながらみていくとみるみる電圧が上がっていく様子がわかります。ある程度充電できていることがわかったので、実際にLEDをつけて試してみます。

写真10.LEDをつけてみるテスト

写真10.LEDをつけてみるテスト

無事光りましたね。LEDであればものの1分程度の充電でも数分は光っていました。

充電とLEDをスイッチをつけて交互に試せる回路にした場合は下記の通りとなります。

図3.電気二重層コンデンサの充電とLED点灯回路

図2.電気二重層コンデンサの充電とLED点灯回路

 

まとめ

電気二重層コンデンサは将来バッテリーの代わりになる可能性を秘めていることがわかりましたね。これを使って、次回はソーラーパネルからの電力を電気二重層コンデンサに貯めつつ、Arduinoを安定動作させるための実際の回路を作成していきたいと思います!

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電子工作や新しいデバイスをこよなく愛するエンジニア。日常生活のちょっとしたことを電子工作で作って試して、おもしろく過ごしたいと日々考えています。

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