電子工作と私 ~AgIC編~

「AgIC」の清水信哉さんと小笠原一憲さんに、子ども時代の電子工作の思い出や、今後の夢などをざっくばらんに語っていただいた。

引っ越したばかりのオフィスにて。左より小笠原一憲さん、清水信哉さん。

引っ越したばかりのオフィスにて。左より小笠原一憲さん、清水信哉さん。

Q.お2人の電子工作歴は?

清水さん:16歳からやっているので、もう10年ですね。私はいわゆる進学校に通っていたんですが、勉強もしましたけど、どっちかっていうと電子工作の方に夢中で(笑)。CPUなんかも設計してつくりました。

 

Q.CPUをつくったんですか?

清水さん:17歳の頃ですけど。それからプログラミングもやりつつ、いろんな電子工作をやって、東大では電気系の学科に入りました。好きなんですよね、電気が(笑)。F1カーをつくる「学生フォーミュラ」というサークルがあるんですが、大学ロボコンと同じように各大学で車をつくって走らせるコンペの電気自動車版にも出場しました。大学ロボコンと違うのは、自分たちでつくった車に実際に人間が乗って100キロを超えるスピードを出して走るところです。当時はガソリン車だったんですけど、電気自動車でもやることになって、私は東大で初めて電気自動車版フォーミュラをつくったときの創設メンバーでもあるんです。電子工作をやるうちに車もつくってみたいと思っていたんで、大学ではそればっかり(笑)。人数が少なかったんで、設計も製造もやっていました。車を購入して改造するんじゃなくて、鉄パイプを切って溶接してフレームをつくるところから、本当にゼロから車を1台つくるんですが、楽しかったですね。

小笠原さん:電子工作を始めたのは、僕は遅かったですね。大学1年の時だったんで。子どもの頃は電子工作ではなくミニ四駆とかプラモとか、そういうのをやっていました。

清水さん:ミニ四駆はやったよね。

小笠原さん:モーターをチューンしたりするんですけど、何の理論にも基づいていないから単なるトライ&エラーなんですよね(苦笑)。電子回路がわかっていたら、と今でこそ思うんですが、やっぱり電子回路を1人でゼロからやるというのはハードルが高い。大学に入って、ロボコンのサークルで教えてくれる方がいたんでできるようになりましたけど、子どもの頃にそういう方が身近にいたらよかったですね。

小笠原一憲さん

 

Q.大学ロボコンをやっていたんですか?

小笠原さん:東京工業大学でやっていました。いずれはロボットもつくりたいんですよ(笑)

 

Q.最初に電子工作でつくったものは?

小笠原さん:「ライントレーサー」です。下に書かれた白線をセンサーで読み込んで走るロボットです。

清水さん:私は実用的なものはあんまりつくっていないので、説明が難しいんですが(笑)。LEDでチカチカ光らせる、発信機みたいなものが最初です。LEDをチカチカ光らすなんて、今だったらArduinoを使えばすごく簡単にできるんですけど、それを使わずに論理ゲートとか基本ロジックだけでつくることにこだわっていました。CPUも全部それだけでつくったんですよ。そういうレベルでものを完成させるのが好きでしたね(笑)

 

Q.そのCPUを使って何かをつくるとか?

清水さん:そういうのはなかったですね。それよりも自分の持っている技術をフルに使って、自分が面白いと思うものをとことんつくるのが好きなんです。例えば私は「リレー」も好きなんですが、その「リレー」だけで計算機をつくるとか。何の役にも立たないんですけど、「リレーだけでつくるってすげえ」みたいな(笑)

 

Q.あえて「リレー」でつくっちゃおうと。

清水さん:そうです。そのうち全部真空管でつくったCPUもやろうと思っています。原理的にはできるんで。昔はそうだったはずですし。まあ、何の役にも立ちませんけどね(笑)

清水信哉さん

 

Q.では役に立つもので(笑)、将来つくってみたいものは?

小笠原さん:僕はやっぱりロボットですね。いまだに産業ロボットが主流で、最近はコミュニケーションロボットなども登場していますが、それよりも「ルンバ」みたいなロボットがいいなと思っています。もともと家事が好きじゃないんで、トイレ掃除を自動でやってくれるような(笑)、人間の自由な時間を増やすロボットをつくりたいですね。あとは、サイボーグとか(笑)

清水さん:私は電気自動車ですね。大学の時につくったのはF1カーだったので、今度は街で乗れる車をつくりたい。私のように若くて、収入も少なくて、東京に住んでいて、となると車って買えないんですよ。そんな人でも気軽に買える1人乗りの電気自動車です。基本的に都市部で走るし、1人乗りなんで小さくていい。電気自動車は航続距離が問題になるって言いますけど、私みたいに生活圏が山の手線内で完結するような人は(笑)、というか街中でいつも暮らしている人はそんなに長い航続距離は必要ないと思うんですよ。スピードもそんなに出なくていいし。例えば「セグウェイ」みたいに気軽な感じで乗れる電気自動車をつくってみたいですね。

オフィスにはAgICの名刺やHPにある電子回路の写真を再現したレゴブロックも。清水さんの古くからの友人で、世界で13人目のレゴ認定プロビルダー・三井淳平さんがつくってプレゼントしてくれたという。

オフィスにはAgICの名刺やHPにある電子回路の写真を再現したレゴブロックも。清水さんの古くからの友人で、世界で13人目のレゴ認定プロビルダー・三井淳平さんがつくってプレゼントしてくれたという。

 

Q.最後にモノづくりを目指す人たちにアドバイスを!

清水さん:起業して経営者になっても、私はやっぱり1人のエンジニアとして「モノづくりをやりつづけたい」と思っています。現に今もプライベートでは、自分で面白いと思ってつくったものをニコ動にアップしていますし(笑)。エンジニアリングって、やっぱり座学からは生まれない。これをつくりたいという想いがあって、その目標に向かってつくっていく過程で試行錯誤することが一番の勉強だと思うんです。本当に何でもいい。役に立たないものでもいいんです。自分が面白いと思ったもの、実際に動くものをつくってニコ動にあげてください(笑)。それを続けていくことが大事だと思います。

小笠原さん:実際にものをつくるときに、難しいとあきらめちゃうんですよね。最初に自分で壁をつくっちゃう人が多いと思うんです。プログラムもそうかもしれないですけど、理論がわからないからやめるんじゃなくて、わからなかったら実験して試してみる。そういうスタンスでやってもらうと面白さも深まります。そういう試すところでAgICの製品を活用してもらえれば、電子回路の試作も簡単にできますし、便利ですよ(笑)

工具類がぎっしり

オフィスの一角には、工具や工作機械が並ぶ。経営者となっても1人のエンジニアとして「モノづくりをやりつづけたい」という清水さんの想いが伝わってくる空間。

オフィスの一角には、工具や工作機械が並ぶ。経営者となっても1人のエンジニアとして「モノづくりをやりつづけたい」という清水さんの想いが伝わってくる空間。

 

 

今回の連載の流れ

電子工作と私 ~AgIC編~ (今回)
電子回路を手書きで簡単に! 家庭用プリンタで印刷も手軽に! 電気とモノづくりを身近にする東大発ベンチャー・AgICの挑戦!

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