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今回インタビューを受けて頂いたのは、芸人でありながらロボットエンジニアでもあるカニササレアヤコさん。平安装束を身に纏い、笙と呼ばれる雅楽の楽器を使ったシュールな芸風で人気を博しながら、一方でロボットエンジニアとしての顔も持つカニササレアヤコさんに、芸人とロボットエンジニアの両立から、ロボットエンジニアを目指したきっかけ、そしてこれからの目標まで、いろいろとお話を聞くことができました。前後編にわたり、たっぷりとお届けします。
お笑い芸人×ロボットエンジニアの道へ
デバイスプラス──本日はよろしくお願い致します。まずは、カニササレさんがエンジニアという職業を目指されたきっかけを教えてください。
カニササレアヤコさん:もともと大学は文系だったのですが、大学卒業時にお笑い芸人を続けながら会社員として働く際に、エンジニアなら比較的フレキシブルに働くことができると思い目指すようになりました。プログラミングなど必要な知識については、志望企業から内定を頂いた後独学で勉強し始め、入社後も業務を通じて知識を習得していきました。
──エンジニア職について、事前に思い描いていたイメージと入社後では何か違いはありましたか?
カニササレさん:パソコンと向き合う時間が非常に長くなり、それまでの生活とはガラッと変わりました。椅子にずっと座っていることがこんなに大変だとは思いませんでした(笑)
──現在、ロボットエンジニアとして具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか?
カニササレさん:主に人型ロボットやコミュニケーションロボットに搭載されているアプリケーションの開発をおこなっています。スマートフォンアプリのような感じでロボットにインストールするアプリケーションの開発です。
──転職活動をされる際に、なぜロボットエンジニアの道を目指されたのでしょうか?
カニササレさん:最初に入社した会社ではWeb系のプログラミングを担当していたのですが、正直、1日中ずっとパソコンの画面に向かってプログラミングばかりやるのは向いていないことに気づきました。
また、お笑い芸人をやるにあたって、人とのコミュニケーションというものが非常に大切で、その分野の脳を常に使っていないとダメだということに気づいたからです。それでいくと、Web系と比べてロボット系の開発の方が、その過程でさまざまな人と関わりながらコミュニケーションしていくことができるので、ロボットエンジニアという道を進むことにしました。
──もう一つの顔であるお笑い芸人の活動について、ロボットエンジニアとの両立というのは大変なのではないでしょうか?
カニササレさん:現在勤めている会社がその点について凄く理解があり、例えば昼間にオーディションが入ってしまった際も、いったん仕事から抜けて帰ってきてからまた業務に戻る、というように柔軟に働かせてもらっています。これは非常にありがたいことです。
──カニササレさんの中ではお笑い芸人とロボットエンジニア、どちらも本業という意識をお持ちなのでしょうか?
カニササレさん:はい、私としてはどちらも本業でやっていきたいと考えています。お笑い芸人とロボットエンジニアという組み合わせはなかなかできないことだと思っています。これまでもペッパーくんとお笑いの大会に出場したりしましたし、今後も人型ロボットの開発ができるお笑い芸人として、いろいろとやっていきたいと考えています。
ロボットエンジニアから見た現在のロボットとは?
──ここからは人型ロボットやコミュニケーションロボットについて聞かせてください。一般的には人型ロボットというと「ペッパー」が有名ですが、現在どのように活用がされていて、今後はどういった活躍が期待されているのでしょうか?
カニササレさん:例えば、最近人型ロボットが多く活用されているのが企業の来訪者の受付です。また、カフェで店員の役割を人型ロボットが担っているケースも見られるようになってきました。自動でコーヒーを淹れて、お客さんに渡すといったことが実際にできるようになっています。このコロナ禍においては、ロボットが体温をセンサで測って平熱であれば建物内に入れるようにする、といったソリューションを提供している企業もあります。人と人との接触が問題となる中、そういったところにロボットがどんどん入り込んでいくことが期待される時代になりました。
── 一口にロボットと言ってもさまざまな種類があると思いますが、カニササレさんが最近注目しているロボットはありますか?
カニササレさん:そうですね。いま私が扱っているロボットで「ケビーエアー(Kebbi AIR)」というものがあります。これは台湾で開発されたロボットで、某猫型ロボットをオマージュしたような見た目で猫耳が付いています。卓上におけるコンパクトサイズながら機動力もあり、しかも人ときちんとコミュニケーションが取れるので、受付などで活躍してくれるコミュニケーションロボットです。また、最近はペット用ロボットも様々な種類が増えてきていて、その中でも「LOVOT[らぼっと]」と呼ばれるペンギンのようなコミュニケーションロボットにも注目しています。これも卓上に置けるようなサイズで、とてもかわいいですし人気のロボットです。
──これらのコミュニケーションロボットは、カニササレさんからご覧になって、どのあたりが凄いのでしょうか?
カニササレさん:これまでのロボットは人にとって役に立つという点が注目されてきましたが、最近では人の役に立たないロボットや、人のために動くロボットではなく、ロボットのために人を動かすような部分がフィーチャーされてきているように感じます。
例えば、ロボットがゴミを拾ってくれるのではなく、ゴミがあるところにロボットが行って、その場で人間をじっと見上げていると人間の方が「ああ!ごめんね」と言いながらゴミを拾うというアイデアが実際に実現しています。人間の役には立たないかもしれませんが、人間の生活に深く関わってきて、少し生活を豊かにしてくれるようなロボットが面白いと感じています。ロボットが人間の心に訴えかけて、その後の行動を引き出すような部分に対して特に興味深く感じています。
──これからのコミュニケーションロボットで使われる主なテクノロジーについて教えてもらえますか?
カニササレさん:まず、最近のコミュニケーションロボットはAIが搭載されていますので、ロボットが学習をしていってどんどん賢くなり、会話などはスムーズになっていきます。また、先ほど紹介した「ケビーエアー」は検温ソリューションになっていて、ロボットの頭にサーモセンサを搭載しています。前を通りかかった人の体温を測ることでき、コロナ禍においてさまざまな場所で活用されています。最近のロボットに搭載されているセンサは非常に高性能なのですが、逆に性能が高すぎると難しい部分も出てきてしまいます。
例えば、先ほどの「ケビーエアー」は、人を検知するセンサが搭載されていて、ロボットの前に人が来ると挨拶するのですが、センサの性能が良すぎると凄く遠くにいる人や横にいる人も検知してしまいます。高性能なことは良いのですが、センサの性能をどこまで使って、逆に言えばどう制限してロボットに合った性能を引き出すか、ロボットに搭載するうえで非常に悩ましい部分ですね。
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カニササレアヤコさんのインタビューは後編に続きます。後編ではロボットと人間のこれからの関係性、さらにカニササレさんのもう一つの顔であるお笑い芸人という職業についてもお聞きしていく予定です。ぜひご期待ください!
今回の連載の流れ
前編:カニササレアヤコさんが語るロボットの今と未来(今回)
後編:カニササレアヤコさんが語るロボットの今と未来