エレクトロニクス技術のホビー誌『電子工作マガジン』でも電子工作の魅力を伝えているテクニカルライター・丹治佐一さんに、子ども時代の電子工作の思い出を伺った。
Q.子どもの頃は何でも分解していたそうですね。
ラジオとか時計とか、身近なモノは何でも分解しては、また戻していました。昔の機械はパーツが大きくて、ドライバーがあれば簡単に分解できた。中の機構も今ほど複雑じゃなかったし、分解も非常に楽な時代でした(笑)
Q.自分で初めてつくったモノは?
もうなくなったんですが、当時は電子工作雑誌の『ラジオの製作』とか『初歩のラジオ』という雑誌があったんですよ。「このパーツを使うと、こんなモノがつくれる」というような記事が載っていて、それをマネして中学のときに父に買ってもらったハンダごてを使ってつくっていました。
パーツを買いに秋葉原の「信越電気商会」(電子部品の老舗「秋月電子」の前身)にもよく通っていました。通りにジャンク屋さんが並んでいて、部品が10円から売っていて、見ているだけで面白かった。今でもそうですけど、他には売っていないパーツが「信越電気商会」では不思議と売っていたりするんですよね。そういえば、そこにしか売っていなかったICチップを使って、デジタル時計をつくりましたね(笑)
Q.高校は電気系だったそうですね。
それまで周りに電気好きとか電子工作好きがいなかったんですよ。でも、高校に入ったらそういう奴らばっかりで、研究の時間が楽しくて学校にも早く行って友達とモノをつくっていました。
次は何をつくろう、パーツは何を使おう、こんな設計はどうだ、「信越電気」で新しく売り出したICチップでテレビゲームをつくろう……、そういう話ばっかりしていました。
Q.テレビゲームもつくっていたんですか?
つくりましたよ。今みたいにスマホでゲームをダウンロードする時代じゃないですから、自分たちで組まないとできないんですよ(笑)。何かをやるためには、自分たちでつくるしかない。そういう時代でした。手軽に使えるパソコンも当然なかったですし。
Q.3Dプリンタが話題ですが。
本当にいい時代になりましたよね。昔は製品をつくるとなると、大規模なシステムが必要で設備投資が大変だった。今はPCで形の3Dデータをダウンロードして、3Dプリンタで物理的な形として3D化。実際の形が出来上がったらオリジナル回路を組み込み、Arduinoを使って簡単に動かせちゃう。昔を考えると、本当にうらやましいですよね。
実は今「DMM.com」の3Dプリントサービス「DMM.make」の仕事もしているんですよ。これは、特別な知識や技術がなくても自分で考えたデザインを3Dデータ化できて、それをアップロードすると高性能3Dプリンタで出力してくれるサービスなんですが、自分用としてだけでなく、ネット販売まで出来ちゃう。
僕もワイヤレスタンク(詳細は丹治さんのサイトで!)をつくったんですが、その完成度が本当に高くて驚きました。電池ボックスのフタを開けて、電池も普通にガチャッとハマるように精密にできています。迷彩の色もキレイに出ているし、市販のものと遜色ないぐらいです。
自分の好きなデザインやカタチのハードウェアをパソコンでササッとつくっちゃって、ネットに上げれば誰でもハードウェアを売れる時代になったんですよ。すごいですよね。
Q.ちなみに、丹治さんが最近つくったものは?
ロボット工作キットの「RAPILO」です(笑)。1~2時間でつくりました。テクニカルライターとしてはカスタマイズとかいろいろやりたいところなんですが、忙しくてまだ手がつけられないんですよね。早くいじりたい(笑)。楽しみです。
今回の連載の流れ
「ググる」よりも「つくる」面白さを子どもたちへ。
電子工作と私~丹治佐一さん編~(今回)