第1回:消費電力の計算方法について
第2回:出力電流の絶対最大定格について
第3回:ブラシ付DCモータの簡単な駆動について
第4回:PWM駆動による定電流動作について
第5回:PWM駆動の電流回生方法による差について
質問:モータに最大の電流が流れる状態はどのような場合ですか?
回答:モータの動作の中で最大の電流が流れるのは、ある方向に負荷が無く最大回転数で回している状態から、瞬時にある方向に対して逆転動作させた直後になります。
ブラシ付きDCモータの等価回路をFig-1に、ブラシ付きDCモータが最大回転数で回転しているときに、電源の極性を反転させる直前と直後の等価回路をFig-2に示します。
Ea:電源電圧、Ia:モータの電流、R:電機子抵抗
L:コイルのインダクタンス、Ec:モータの発電電圧
(a)電源極性反転直前 (b)電源極性反転直後
ブラシ付きDCモータは等価的に抵抗とインダクタンスとモータ発電電圧の直列接続回路として表すことができます。ある方向に回転していて無負荷で回転数が最大であるとき、モータの発電電圧も最大になり、この値をEcmaxとします(Fig-2(a)参照)。この状態からある方向とは逆の方向に回転(逆転)させるために電源の極性を前と逆でモータに接続します(Fig-2(b)参照)。この時、電源電圧と発電電圧が加算されモータの抵抗とインダクタンスの直列回路に印加されることになります。このためモータ動作の中で最大の電流が流れることになります。
最大電流をIpkとするとDC的には、
Ipk=(Ea+Ecmax)/R
の電流が流れるはずですが、インダクタンスが電流の瞬時変化を防ぎ、時間に対して急峻ながら傾斜を持って電流が上昇するためこの最大値にはなりません。
モータに逆方向の電流が流れるとある方向の回転に対して、逆回転させるトルクが働くため回転数が下っていきます。モータの発電電圧は回転数に比例するため、発電電圧も下がりモータに流れる電流も減っていきます。この過渡波形例はFig-3のようになります。
今回の連載の流れ
第1回:消費電力の計算方法について
第2回:出力電流の絶対最大定格について
第3回:ブラシ付DCモータの簡単な駆動について
第4回:PWM駆動による定電流動作について
第5回:PWM駆動の電流回生方法による差について
第6回:モータに最大の電流が流れる状態について(今回)
第7回:出力トランジスタの寄生ダイオードを通じて電流回生した時の消費電力について
第8回:モータにトルク負荷をかけた時のモータ電流について
第9回:モータの電気的時定数に対して十分に小さいPWM周期について
第10回:1個のMOSFETでモータをPWM駆動させるときのモータに並列接続するダイオードに流れる電流について