祝・ロボマスター日本初参戦 高専・学生ロボコニストが目指す “世界” FUKUOKA NIWAKA インタビューVol.1

「いやー、うれしい!
何がって、あの「ロボマスター」に日本から出場するチームが現れたんですよ!」

……そう叫んだのは、デバプラ編集部員K。もちろん記者も、同様にうれしい。
ロボマスターと言えば、ドローンで有名な、あのDJI社が主催する中国のロボコン。中国と言えば、世界市場の席巻ぶりやABUロボコンでの活躍を見てもわかるように、もはや誰もが認めるロボティクス先進国。その中国を中心に、2017年大会の実績では学生ロボコニスト達がなんと7000人以上、200チームも出場した、大規模な大会だ。

優勝賞金は、約800万円。
乗りに乗っている、DJI社の全面的サポート。
ド派手かつ、熱狂的な演出と応援。
激しいマッチになる、対戦型。
なにより、その技術的地盤と参加人数により、ハイレベルなバトルになること必至。

そんな “世界” の舞台に、日本から初となる参戦を決意をしたのは、福岡県のNHKロボコンのOB達を中心に結成された「FUKUOKA NIWAKA」。

高専ロボコン・学生ロボコンを応援し続けてきたデバプラ編集部も、注目せざるを得ない。そこで、チームの中心的なメンバーに、その思いや現状を聞いた。

河島さん 花守さん 糸山さん
左:ニワカソフト株式会社 ・糸山 晃司さん チーム広報
中:北九州工業高専・花守 拓樹さん 主にメカ担当
右:北九州工業高専 / 九州工業大学OB・河島 晋さん 主に回路・制御担当

 

あらためて、ロボマスターとは

━━まず、あらためて、ロボマスターについて教えてください。

河島:ざっくり言えば、DJIさんが主催する、対戦型の超スポーツな感じの大会です。アメリカのロボコンのような、熱狂的な、スポーツに近いような盛り上がりがある印象です。高専・学生ロボコンと比較するとすれば、より派手かつ激しい、という感じでしょうか。

花守:そうですね。例えばアメリカのバトルボッツは非常に激しいわけですが、それと一線を画すのは、同時に非常にレベルの高い秩序があることです。

━━秩序とは。

花守:基本的な試合内容としては、ロボット同士による撃ち合いです。相手の「基地」ロボットのヒットポイントをゼロにした方が勝ち。その他のロボットが5種類、全部で1チーム6台ぐらい。これはルールで定められたものです。それらが基地を守ったり攻撃したり味方の体力を回復したり、それぞれの役割を果たします。

━━秩序というより、台数も多く、しかも対戦型。複雑に思えます。

花守:はい、複雑です。そこで、「ジャッジシステム」が使われています。これは、大会側から提供されるデバイスのセットで、当たり判定や主観カメラ、弾速の測定等々、一連の機能をまとめたものです。各ロボットに取り付けたジャッジシステムが、試合の状況を自動的に認識して、まとめます。そしてそれをリアルタイムでモニタに表示することで、複雑な試合でも、ひと目で状況を把握できるようになります。また、例えば特別ボーナスによる攻撃力の変化といった細かなルールも、このジャッジシステムにしたがって運用されたりします。つまり、ジャッジシステムが厳密で自動的なルール適用をして、それによって秩序が生まれている、というイメージです。

━━なるほど。確かに画面を見ると、各種のデータが一覧できますね。

モニタ映像

花守:ロボマスターは、ロボットを主観で操作するのが特徴だと思います。その操作画面にも、同じデータが表示されます。各ロボットの被弾状況や、全体の形勢などです。

━━対戦型のビデオゲームのようです。e-Sports的というか。しかもチーム戦となれば、観戦も白熱しそうです。

河島:そうですね。ゲームか、オリンピックの競技を見ているようでもあります。

花守:スポーツと言ったのは、そういう意味でもありますし、秩序というか、ルールがきちんとしているから盛り上がって楽しい、という面もあります。

編集部注)
日本語によるルールは、チームのウェブサイトにまとまっています。

RoboMasterについて


また、このルールの概要を把握したうえで、下記動画などを見ると、大会の雰囲気がつかめると思います。

製作ロボットは5種類

━━具体的な試合の流れは?

河島:最終目標は、相手の「基地」ロボットのヒットポイントをゼロにすることです。この基地は、大会側から提供されるものを使うことになります。その他にロボットが5種類、これらが自分たちで作るものです。
・歩兵ロボ……普通のロボで、体力も攻撃力も低く、代わりに複数台を投入可能
・ヒーローロボ……体力も攻撃力も高い、要のロボット
・エンジニアロボ……攻撃はできず、代わりに味方の体力回復などが可能
・哨兵ロボ……自動制御で攻撃・防御を行う。2018大会から採用
・ドローン……言わずもがな、空中から攻撃
……という感じで、それぞれに役割があります。

花守:フィールドは結構広くて、25メートルプールぐらいでしょうか。そこに橋や基地、弾、補給エリア、障害物などが配置されています。その地形や各種のルールを使いながら、相手のロボを倒すなりかわすなりして、最終的に相手の基地を攻撃することを目指す、という感じです。

━━なるほど。その両端からスタートして、ロボットの特徴を活かしながら、さまざまな戦略・戦術・作戦を駆使して戦う、ということですね。1対多の状況を意図的に作ったり、包囲したり、あえて引いて守って相手の消耗を狙ったり、スピードで優位を取ったり……。ロボットの面でも、戦術の面でも、かなり高度です。確かに盛り上がりそうですね。でも、それだけあると、ロボットの製作の工数が大きなものになりそうです。

河島:大変です(笑)。

花守:大変(笑)。でも、楽しくて、やりたくて集まってるわけですから。ただ、僕が経験してきたロボコンより、圧倒的にハードルが高いのは確かです。ロボマスターズで試合に出られるというのは、7台ぐらい作って、ジャッジシステムを完全に動作するようにして、細々としたレギュレーションをクリアするということです。その最低限をクリアするだけでも、相当な技術力とか経済力、そして時間が必要です。

河島:例えば高専ロボコンだと、授業が終わってそのまま放課後に部室に集まって、という感じだと思います。ところが今回は、メンバーが社会人だったり学生でも違う学校だったりして、集まることだけでも難しい。その限られた時間をどう使うか、というのも大きな課題ですね。

FUKUOKA NIWAKA製作の様子

━━各ロボットの進捗はいかがでしょうか。7月が大会で、直近のマイルストーンは、4月にある「進捗審査」と聞いています。

花守:今、一番取りかかりやすい歩兵ロボのメカ1台目ができて、それを河島さんたち回路班に渡して動かしてもらっているところです。その他のロボットは設計中だったり、ルールが定まっていないので様子を見ていたり。

━━歩兵は、複数台用意。

花守:そうです。今回、チームメンバーの方に、かなり技術的にすごいものを持っている企業や、部品をちゃんと発注できる方がいらっしゃるので、そういう人の力も借りています。僕は学生ですから、そういう経験はありませんでした。しかし、今では、外注のありがたさを噛みしめています(笑)。で、届いた見積書を見て、「あ、俺の時間ってこういう金額なんだな」みたいなことも勉強しながら。

━━制御面は?

河島:今回は、そのジャッジシステムがあります。まずはそれを使いこなすことですね。きちんと規格に沿った通信をしなくてはならない。その研究が第一のステップです。例えばモーターも、今までに使ったことがない、DJIの製品だったりします。これを研究しつつ、メカ班が作ったものを動くようにしていく作業をコツコツとしています。

━━歩兵以外のロボットは?

花守:哨兵ロボは、ざっと設計したモノが1台あります。これは今年から採用されたものなので、過去のものを参考にできません。ですので、まずは作って動かしてみよう、ということです。ヒーローロボに関しては、今設計していますが、頭の中ではゴールが見えている状態です。

━━哨兵ロボは、自動制御が必要ですよね。今まで経験はありますか?

河島:今回は、おそらく画像処理がメインになってくると思います。自分自身としてはそんなに経験はないのですが、ロボカップや水中ロボコンに参加したときの経験で、どういったことをすれば今回の課題を解決できるか、そのノウハウは知っています。また、メンバーに、その分野の知見を持っている人がいるので、そういった人達と協力しながら組み上げていくことになります。

━━ドローンも自作?

花守:はい、作ります。足の匂いを嗅いで気絶する、はなちゃんというロボットがあります。これを作ったNext Technologyは、ドローンの専門家でもあります。そのメンバーがチームに加わっているので、任せることになると思います。本人たち曰く、余裕、だそうです(笑)。

━━では、プロの方も専門家の方もいるし、何をしていくべきかはこれまでの経験からわかる。そして実際に、作業は進んでいる。順調ですね。

全員:そう言っておきます(笑)。

 

 

今回の連載の流れ

第1回:祝・ロボマスター日本初参戦 高専・学生ロボコニストが目指す “世界” FUKUOKA NIWAKA インタビューVol.1(今回)
第2回:ロボマスターに挑む理由、応援する理由 FUKUOKA NIWAKA インタビューVol.2

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