入門者向け

はじめての電子工作! Arduinoを触ってみよう(ハードウェア編)

2000年代の始めまで、電子機器の試作は割高で手間がかかり、「手軽に試してみよう」とまでいかない時代でした。
そこで「手軽に電子工作を楽しめる開発環境を作る」というプロジェクトがあちらこちらで始まり、Arduinoもその中の一つです。
Arduinoはさまざまな工夫を凝らすことで、手軽に電子工作を楽しむ目的を実現しました。本記事ではArduinoの成り立ちと特徴について解説していきます。

 

目次

 

Arduinoは学生の研究から始まった

2000年代の始めまで、電子機器の試作は割高で手間がかかる分野でした。
マイコン単体は、それほど高価なものではありませんが、マイコンと周辺回路を一枚のプリント基板上に収めた評価ボート(「マイコンボード」とも呼ばれる)は、学生が気軽に手を出せるようなものはありませんでした。使い方も複雑で、電源をつなげてオリジナルのシステムが動作するにも手間がかかります。

開発環境も同様でした。作ったプログラムを動作させるコンパイラなども有償で提供されていて、ライセンス費用も高額でした。
当時、手軽な製品として、ベーシックスタンプ(BASIC Stamp)と呼ばれる、PICマイコンとRC-232Cの通信機能、電源、水晶が小型の基板に実装され、BASICでプログラミングができるものが流行りましたが、開発環境が2万円、評価ボードが1万円前後です。

そこで、イタリア北部の都市、イブレアにあるイブレア・インタラクション・デザイン工科大学(Interaction Design Institute Ivrea: IIDI)の准教授(当時)だったマッシモ・バンジ(Massimo Banzi)が指導教官になり、エルナンド・バラガン(Hernando Barragán)と生徒たちの論文のテーマとして、手軽に電子工作が楽しめる開発環境の研究を始めたのです。

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Arduinoの外観

 

このエルナンド・バラガンが考案した評価ボードは「Wiring」と名付けられました。
Wiringは、マイコンに「ATmega168」、IDEにはJavaベースの「Processing」を採用しました。 このATmega168は、AVRと呼ばれるマイコンの一つであり、当時、AVRはPICとシェアを二分していました。

 

AVRを使った汎用的なマイコンボード、Arduinoの誕生!

その後、マッシモ・バンジは、Wiringをベースにした新しいプロジェクトを立ち上げました。マイコンには「ATmega8」という、同じAVRシリーズの中から,Flashメモリの小さい物が採用され、これによりマイコンボードの価格を、3,000円程度まで下げることに成功したのです。
マッシモ・バンジは、このマイコンボードに「Arduino」と名付けました。これがArduinoの始まりです。

名前の由来は、開発に携わったマッシモ達がよく通ったパブの名前「Bar di Re Arduino」から取ったそうです。ちなみにArduinoは「アーデュイーノ」「アルドゥイーノ」と発音されますが、日本では「アルディーノ」と呼ばれることが多いようです。
Arduinoは、マイコンボードと、プログラムを作成しマイコンボードに転送する開発環境の総称です。このマイコンボードは「Arduinoボード」、開発環境は「Arduino IDE」と呼ばれます。

Arduinoは、価格の安さに後押しされて、世界中に広がりました。
その後Arduinoボードには、さまざまな改良が加えられました現行モデルの「Arduino Uno Rev3」は、AVRシリーズでより強力な「ATmega328P」を搭載しながらも、価格は3,000円程度を維持しています。そうした、当初のコンセプトを忘れない取り組みから、今日ではArduinoは、趣味や電子工作の学習、学生の研究、製品の試作など、さまざまな用途で利用される、汎用マイコンボードの代名詞のような存在となりました。

 

Unoから始めよう、スターターキットがArduinoを身近に

Arduinoシリーズの中心的な製品が「Uno」です。多くのArduinoボードが、このUnoから派生しています。では、このUnoの機能を見てみましょう。

UnoはマイコンにAVRシリーズの一つである「ATmega328P」を採用し、16本のデジタル入出力ピンを持っています。そのうちの6本は、LEDの明るさやモーターの回転数などを調整することができるPWM出力(パルス幅変調出力)としても使用できます。 また、アナログ入力も6本備わっているので、温度計など、電圧を測定する機器の作成も簡単です。

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Arduino Unoを上から見た図

 

さらに、Unoの基板上には、16MHzのクロックスピードを生成する水晶振動子、USBポート、電源端子などが搭載されています。
USBケーブルを挿すだけで、Unoとパソコン上のArduino IDEが接続でき、自作のソフトウェアがArduinoボードで動作します。

電源はUSBケーブルを通してArduinoボードに供給されます。パソコンからプログラムの書き込みが終われば、Arduinoボードは単体で動作するので、USBケーブルを取り外すことができますが、別途電源が必要です。最初はパソコンにつなげたまま、USBケーブルから電源を供給するほうが簡単でしょう。

外部機器や、自作した電子回路との接続を見てみます。
Arduino Nanoをはじめ、マイコンボードは、半田付けで外部機器と接続するのが一般的です。一方、Unoは配線を何度でも取り外しできるコネクタ方式を採用しているので、いろいろと試行錯誤しながら回路を設計できます。

もし、Arduinoを使用したことがない場合は、スターターキットから始めるのが簡単です。Arduinoボード(Uno)だけでなく、LEDやセンサー、コンデンサ、配線用の各種ケーブルなどが同梱されています。これらの部材は何度でも再利用でき、Arduinoボード単体も手頃な価格で入手できるので、本格的な設計に進んでも、スターターキットは無駄にならないでしょう。

 

Arduinoを使った製作、猫よけペットボトルも簡単に

Arduinoは、どんな電子工作でも思いのまま実現することができます。少し前に流行った「猫よけペットボトル」も、Arduinoを使えばこうなります。

 

動画では、電動のスプレーボトルを改造し、Arduinoボードと赤外線センサーを取り付けています。赤外線センサーに動物が反応すると、Arduinoボードが電動スプレーをONにします。動画では「Raid MAX」という製品の空になったスプレーボトルを使用しています。日本では「カビキラー」などの電動スプレーが改造用に入手しやすいでしょう。(※注意:改造は自己責任で行ってください)

Arduinoは、動画にある少しジョークのようなものから、業務で使用する電子機器まで、自由な発想でシステムを設計することができます。Arduinoボードも、さまざまな種類が発売されているので、用途に合わせて選択しましょう。
例えば、「Arduino Nano」は、Unoより小さく、クレジットカード4分の1程度の基板サイズです。mini USBコネクタを搭載しているので、薄型ケースなど、省スペースへの組み込みに適しています。

「Arduino Micro」はAndroidなどで使用されるmicro USBコネクタを採用しています。パソコンとの接続に、スマートフォン用のケーブルが使えます。
他にも、Arduinoシリーズには、小型のIoTデバイスに利用できそうな「Arduino Zero」や、Wi-Fiを内蔵した「Arduino Uno WiFi」、そして、54本のデジタル入出力と16本のアナログ入力を持った「Arduino Mega」など、多くのバリエーションがあります。きっと目的に合ったArduinoが見つかるでしょう。

 

Arduinoに機能を追加するシールドが可能性を広げる

マイコンボードには、簡単に新たな機能を追加できるように、拡張基板(拡張ボード)が用意されているものがあり、もちろん、Arduinoも対応しています。Arduinoでは「シールド」と呼ばれます。
シールドは、Arduinoボード本体と完全に分離さていて、積み重ねるように基板同士を接続することができます。

Unoを始めとする各Arduinoボードは、コストを抑えるためWi-FiやBluetooth、LAN、モータードライバなどの機能を省いています。これから作成しようとする機器に合わせて、必要な機能を持つシールドを別途購入すれば、新しい機能を簡単に拡張できます。

シールドの一例には、flashメモリとmicroSDスロットを追加するMEM SHIELDや、LANに接続するETH SHIELD、リレーやソレノイド、DCモーター、ステッピングモーターを制御するMOTOR SHIELDなどもあります。

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ArduinoとMOTOR SHIELDの組み合わせ

 

また、ユニークなのはPROTO SHIELDです。Unoと同サイズのシールドですが、部品は何も載っていません。全面がユニバーサル基板になっているので、簡単な電子回路であれば、ここに実装してArduinoボードに直接搭載できます。

Arduinoボードとシールドの組み合わせは無限にあります。慣れるまでは、選択肢の多さで混乱するかもしれません。Arduinoは拡張が簡単なことも利点の一つです。最初は必要最低限の物がセットになったスターターキットから始めて、だんだんと機能を追加していくのも良いでしょう。

 

まとめ

ArduinoはCreative Commonsのもとで公開されるオープンハードウェアです。これにより、多くのサードパーティーがシールドの開発に参加し、どんどんと新しい機能がArduinoボードに追加できるようなってきています。

Arduinoボードとシールドを使えば、ちょっとした電子工作から、顧客が求める仕様を満たす本格的な電子機器まで、思いのまま開発できるようになるはずです。
Arduinoはスタートするのも簡単です。皆さんも、さっそくArduinoを始めましょう。

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