巨大人型ロボットで未開拓分野を切り開くスタートアップ「人機一体」に潜入してきました!

株式会社 人機一体 社長 金岡克弥博士

これまでもハードウエア系スタートアップを応援してきたデバプラですが、もっとディープなネタをお届けしたいということで、スタートアップに密着し、その “リアル” を、中の人の頭の中を、トコトン探っていく新コーナーを始めます。

第1弾は、立命館大学から誕生したロボット開発スタートアップ「株式会社人機一体」を取材させていただきました。「人機一体」ではロボット工学を用いて、人間の持つ身体能力を拡張する「パワー増幅ロボット」を開発しています(実際にデバイスプラス編集部も操縦させていただきました!)。今回は初回ということで、代表の金岡克弥 博士からプロダクト製作の歴史や「人機一体」の掲げるミッションについて語っていただいた様子をお届けします!

人機一体は何を目指すのか

人機一体は、代表である金岡克弥博士の開発技術をもとに、「あまねく世界からフィジカルな苦役を無用とする」をミッションに掲げ、人間の身体能力を拡張して労力コストや労働災害のリスクを減らし、マスタスレーブシステムによる巨大人型二足歩行ロボットの事業化を目指しています。

そもそも金岡博士は当初から、ロボットアニメで見られるような人型でのロボット開発を目指していたわけではなく、「人間が持つ身体の柔軟性を再現する過程で、世の中で定着しているロボットのイメージであったり、実用性を加味したうえで人型の形を採用するに至った。」と語っていました。

つまり、自動車が人間の移動をサポートするような単純な拡張や、むやみにロボットの力を何万倍にも増幅させるロボットスーツではなく、安全性を考慮したうえで、ロボットが発揮することのできるパワーを人間が扱えるようにすることを目指しています。

「人」と「機」が一体となるプロダクト

「人機一体」の事業化は2015年に始まりましたが、研究自体は2002年から始まっており、2004年頃には愛・地球博での展示に向けて腕や指の力を増幅する試作機「Power Effector」を製作しました。これは人の力を1000倍にまで増幅させる能力を持ち、500gの力は最大で500kgもの力にまでなるそうです(指を軽く押すだけでスチール缶を潰すことができます)。

Power Effectorを操作する金岡博士

動作に関しても、産業用ロボットとは違い、動き方や作業手順があらかじめプログラムされていないため、勝手に動いたりはせず、人が動かした時にはじめて自由に動き、相互に力のやり取りができる点を実現しているそうです。しかし、ロボットの強力なパワーだけではなく人間本来の繊細な力加減をロボットでも再現するため紙箱を潰さずにつまむような動作も可能だそうです。

そして2009年には、操縦する「人間」と実際に動作する「ロボット」を分離した形のマスタスレーブシステムによるロボット開発を始めたそうです。そして2014年に誕生したのが「MMSEBattroid」で、これは日テレのロボットバトル番組でも登場しています。

MMSEBattroidを操縦させていただきました!

外部に設置された操縦席で人間が腕や足を動かすと、その動きにシンクロしてロボットが動作する仕組みになっています。今回、お見せただいたのは二足歩行型ロボットの上半身部分のデモ機とのこと。「従来のロボットの握手は、単に”握手っぽい”動きをしていただけにすぎないが、MMSEBattroidは微妙な力のやり取りができ、直感的に操作できる。」と金岡博士は話しています。実際に操縦してみましたが、かなり細かい動きまで再現可能で、子供の頃に夢見たロボットアニメが実現しているようでワクワクが止まりませんでした。

金岡博士の話によると、パワードスーツのような「人が装着して直接的に身体能力を拡張するもの」ではなく、「少しだけ離れて操縦する、人間が安全な場所からロボットを動かすことができるもの」とのこと。また、ヘッドセット(Oculus Rift)を着用するとロボットの視点を体感でき、実際に自分がロボットになったかのような状態で操縦ができるそうです。本当にかっこいい!!

人機一体を支える頭脳

「人機一体」は金岡博士に加え、トヨタ自動車でプリウスやレクサスGSなどのハイブリッドシステム開発を手掛けてきた戸祭取締役、日本ナショナルインスツルメンツ出身で制御コンピュータ・プログラミングのエキスパートである Nan Nan SUN 開発部長が脇を固める少数精鋭のチームです。また、「人機一体」の開発や経営には多くの方が注目しており、既にリアルテックファンドからの出資や、立命館大学ロボティクス研究センター、大阪大学、九州大学からの技術協力を受けています。

人機一体のみなさん

マスタスレーブ技術の分野で最先端を目指す

大学の研究から始まり、その技術を「社会で役に立つものにしたい」という思いから、大学発のベンチャーとして「人機一体」を創業。ロボットの新しい使い方や価値を見出し、事業化を目指しているそうです。昨今、流行っている人工知能やIoTという分野ではなく、「人の判断力×ロボットのパワー」による「人が直感的に操作する、人の外部身体としてのマシン」を目指しており、「未発達の市場・分野であるが自分たちが先頭を切って研究を進めていきたい」というビジョンを金岡博士は語ってくれました。また、この分野はロボット技術の使用や開発に関する法整備が未開拓な状態にあるため、その点でも自分たちがパイオニアとして取り組んでいきたいとも語っており、とても熱い志が編集部には伝わってきました。

次回は、「人機一体」のキーマンである金岡博士に、ご自身がロボットに対して持っている哲学について、深く深くお聞きする予定です。お楽しみに!

 

 

今回の連載の流れ

第1回:巨大人型ロボットで未開拓分野を切り開くスタートアップ「人機一体」に潜入してきました!(今回)
第2回:なぜ、マスタスレーブなのか 人機一体 金岡博士にロボット哲学を語っていただきました!

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