できること

手軽に挑戦!Arduinoとセンサを使って重さをデジタルで計測!【第1回】

電子計りの仕組みと圧力センサを使った重さの計測

 

今回から、人気のマイコンArduinoとセンサを使って、さまざまな物の重さをデジタルで計測してみる連載を全4回でお送りします。教えてくれるのは、メディアアートの分野で、また「ちょっと深い仕組み」を解説する書籍の世界で活躍中の、伊藤尚未さんです。それでは早速始めていきましょう!

 

目次

  1. はじめに
  2. 電子計りとは?
  3. 重さを計る仕組み
  4. 圧力センサで実験

 

1.はじめに

こんにちは、伊藤尚未です。

突然ですが、子供の頃、テレビで「目方でドン」という視聴者参加番組がありました。夫婦で出演し、スタジオ内に用意された家電、食品、雑貨などを選んで獲得するゲーム番組だと記憶してます。

 

最後に天秤の片方に奥様を乗せ、もう片方に選んだ品物を乗せてつり合いがとれれば、その商品を獲得できるというものだったと思いますが、そうなるとふくよかな奥様の方がより多くの品物をゲットできるわけです。なにか引っ掛かるものがありますし、いま思えば大変失礼な番組だったような気がしますが…。まあ、私の記憶ですから不確かな点はあるかもしれませんが、それにしてもおおらかな時代であったのでしょう。

 

さて重さを計るものといえば、理科実験では上皿天秤などを使いますが、実際にはデジタルスケール、電子天秤と呼ばれるもの(以下、電子計り)が多用されています。昨今のヘルスメータ(体重計)も同じ仕組みでしょう。

左は1㎏、右は2kgを計る電子計りです

 

2.電子計りとは?

さて、私の職場のひとつである動物園にいると、よく電気製品の修理を頼まれることが多いのですが、その多くは修理不可能なもので、特にデジタル製品となるとお手上げ状態のものがほとんどです。ハンダ付けが外れた、接触が悪いというモノであれば修理できますが、結局「とどめをして」終わらせる場合も多いです。

 

まずはメーカ保証期間であるか確認をしますが、保証が切れていれば、一か八か、または向学心(?)でとりあえず開けてみます。依頼される製品として特に多いのは電子計りです。動物管理では主に、動物の健康を管理する上で重要となる、給餌量などを計るのに使います。とはいえ、飼育員さんは動物の面倒は見てもこういった機器には疎い方も多いので、私の方に回ってきます(私もその専門ではないのですが…汗)。

 

こういった計りは、餌の調理場などで使うので、環境湿度も高く、基板の錆びや腐食などが見られる場合も多いのが実際のところ。または物理的な衝撃というか、スイッチ系が不能になることが多いですかね。

ということですでに不能状態になったものを分解してみますと…

この計りでよく見るのがこのアルミの削り出し部品です。

 

計るものを乗せる皿に付いているので、これが重さを計るセンサ部分ということになりますが、どのような仕組みなのでしょう?

これは荷重センサ、ロードセルというもので、よく行く電子部品のショップでも同じ形のものを見かけたことがあります。ホイートストンブリッジという仕組みを使っているらしいのですが、それってどこかで聞いたような…。

 

3.重さを計る仕組み

ホイートストンブリッジというと高校物理で出てきたような…程度の記憶しかないので、改めて復習してみましょう。

4個の抵抗体を図のようにひし形に組み合わせた回路が例題に良く見られます。中央に橋渡しするような形で抵抗体を接続した形の回路がテストには出てきて、この中央の抵抗に流れる電流を求めよ、とか問題になりますね。

この時にひし形の対面頂点同士(A、C)に電源を接続し、他対面頂点間(B、D)の電圧を計ることで、抵抗値を計算するというものです。反対に言えばすべて同じ抵抗値だとした場合、B、D間に電圧は発生しません。つまり電気が流れないということですが、どこかの抵抗値が変われば電圧も発生するということになります。

ロードセルの場合は荷重によって金属が歪む部分に抵抗体が設置され、この変化をホイートストンブリッジで電気的に読み取れるようにしたものです。

 

さて、ロードセル実物にもどると、シリコンのシーリング部分にセンサが埋め込まれているようですが、どのようなものなのでしょうか?抵抗値が変化するようなものだと想像しながら、カッターを使って慎重に剥がしてみますと…

シリコンをカッターで切っていきます。

フィルムの中に電極のようなものも見えますね。

 

こちらがセンサのようです。これが歪むことで抵抗値が変わるようです。リード線が3本あるので、電源端子と二つのセンサ端子ということなのでしょう。回路図ではこの部分なのではないかと想像します。

センサ部分にある電極のようなものの間に、歪みで抵抗値が変化する抵抗体が封入されているのではないでしょうか。

歪みで抵抗値が変化する抵抗体が封入されている。

 

4.圧力センサで実験

歪みで抵抗値が変わるというのも不思議なのですが、単体でこの部品に近いのではないかと、圧力センサというのも同時に購入してみました。

丸形のコンパクトな圧力センサです。

 

丸形の圧力センサと言われるものです。よく見ると左右の配線から細かい櫛状のパターンが交互に並んでいるような形をしており、多分この間になにか特定の抵抗値を持つ導電性のものが詰まっているのでしょう。無負荷時で10MΩ以上ということですが、テスターで抵抗値を計れるよう端子を接続しましたが…このテスターでは計れませんでした。

OL=Overloadです。感知部分を指で押さえると

確かに抵抗が下がることで力学的なセンサとして使えるようです。

 

多分ロードセルの小さなセンサ部分も同じような抵抗体が封入されているでしょう。これで重さを計れることがわかりました。

実際に電子部品のショップで2Kg用のロードセルを購入し試してみます。データシートでは赤、黒のリード線が電源、緑、白が信号線です。インピーダンスが1000Ωということなので、赤-黒、緑-白間を実際に計ってみると約1000Ωでした。

実際に計ってみると約1000Ωでした。

 

すると、内部ではこのような抵抗値になっているということになりますね。

だとすると、他の端子間はどうかと考えると、ここは合成抵抗の求め方です。中学校でやったのを覚えていますでしょうか?

直列部分は単純に和ですから1000+1000+1000=3000

並列の合成抵抗Rは

1/R=1/1000+1/3000=750

で、赤-緑などを計れば合成抵抗の計算から750Ωになるはずです。

実際に計ってみると確かになりました。

 

では、実際に計ってみましょう。かける電圧は5‐12Vとなっているので、単三乾電池4本で6Vをかけてみます。

 

実際にテスターで計ると6.46v、新品は少し電圧が高いですね。信号線をテスターで計ってみると変化が見られるでしょうか?

無負荷状態で0.1mA。

指で軽く曲げるように力をかけてみると1.9mV。

 

確かに変化が見えました。これをマイコン側で読み取れるようにすると面白そうです。

と、ここまで考えたところで、荷重で電気的な変化を読み取るなら、前述の丸い圧力センサでもよいのではないか?という疑問がわいてきました。確かに抵抗値が変わるので、これでも計ることはできそうです。

 

では、なぜ圧力センサではなくロードセルをよく使うのでしょうか?精度や安定性の問題なのでしょうか?

という疑問はひとまず棚上げにしながら、次回はArduinoへ入力していきたいと思います。

お楽しみに!

 

 

今回の連載の流れ

第1回:電子計りの仕組みと圧力センサを使った重さの計測(今回)
第2回:Arduinoで重さを数値化する!
第3回: 重さ比べで遊べる機械を作る!
第4回: 有名なあのシーンを再現してみる!

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日本電子工作普及推進委員会代表、メディアアーティスト。サイエンスライター、動物園の飼育員のフリした電気工事士、理科実験教室講師、ワークショップ講師、教材開発など、幅広く活動中。 月刊「子供の科学(誠文堂新光社)」で電子工作の連載を続けて19年、代表的な書籍は「電子工作大図鑑」「電子工作パーフェクトガイド」があります。

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