第40回から第46回までこれまで7本の記事で紹介してきた、ローム・センサ評価キット。Arduino Uno/Lazuriteに対応しているこのキットでなんとなく見えてきた使い方やできることをまとめてみたいと思います!
「センサから取得した値をスマホに送信してごにょごにょしたアプリを作りたい!」
「ハンダ付けとか電流電圧の計算とかわからないけど、まずはさくっとセンサを使って電子工作を楽しんでみたい」
……という方には導入の足がかりとして読んでいただければうれしいです。
目次
- センサ評価キットとは?誰がどういう時に使うのにおすすめ?
- 種類について~センサ評価キットとセンサメダル
- どんなセンサが使えるの?
- どんなものが作れる?
- まとめ
1.センサ評価キットとは?誰がどういう時に使うのにおすすめ?
センサ評価キットを一言で表すと、「電子工作をする際によく使うセンサをまとめて手軽に扱うことができるキット」です。電子工作をしている時に、新しいセンサを使いたい、となった時に出てくる作業としては、一般的にデータシートを元にして下記のような作業が必要になってきます。
新しいセンサを回路に組み込む場合の作業
- センサの使い方自体を把握する(各端子の役割など)
- 対応する電流・電圧などセンサを動作させるための電源周りの確認
- 組み込む回路側の設計を考える
- 1〜3ができたら、実際に必要な電源や配線を用意する
などの作業が必要となってきます。電子工作を初めたばかりでよくあるケースとしては、「Vccに流れている電圧は5Vだけど、センサは3Vまでしか対応してない or センサの動作には12Vが必要」とか「データシートが英語でちょっとわからない…」などでセンサの値を使ってデバイスを作りたいのに、そもそもセンサの使い方でつまづいてしまい、本質的なデバイスの作りこみや改良をするところまでたどり着かずに挫折する、ということがあります。センサ評価キットはそういう部分を縁の下の力持ちのごとくサポートしてくれる素敵なキットです。図で表現するならこんな感じでしょうか。
作りたいものがあってこのセンサを使えばいいのに、そのセンサを使うための電源の確保や具体的な使い方があまり親切ではない(勉強しなさい!と言われてしまえばそれまでですが…)ため、挫折してしまった方も多いのではないでしょうか。
これまでDeviceplusで連載しているArduinoではセンサからの入力をごにょごにょ(プログラムで処理)してLEDなどをはじめとするパーツや、ディスプレイやネットワークを通じて出力する、という部分が手軽になったことでこれまで敷居の高かった電子工作を手軽にすることができましたが、その次にぶつかるのが実際に入力・出力回路を作る部分だと思います。
一つずつ電子回路の知識を学び楽しみながら制作していくのも良いのですが、「こういうものが作りたい!」という最初の衝動をいかに手軽に実験できるか、実験を経てさらに改良するためにはどうすればいいか、というのは制作している皆さんが考えていることだと思います。
そういう「作って→試して→改良する」サイクルをスピーディーにできるのがこのセンサ評価キットの特長です。
公式サイトに書いてある説明では、
Arduino Uno、Lazurite、mbedなどのオープンプラットフォームに対応したロームセンサ評価キット SensorShield-EVK-001です。ロームの高性能センサ8種を組み合わせて評価できます。センサ評価、初期セット評価、教育教材に最適です。
とありますので、まさにこれからArduinoやLazurite、mbedを利用して電子工作を始めようと思っている・回路の制作で一度挫折してしまった方や、ソフトウェアの知識はあってプログラムは書けるけどハードウェアは初めて、という入門の方などに最適なキットになっています。
2.種類について~センサ評価キットとセンサメダル
センサ評価キットには、評価キットシリーズとして「センサ評価キット」と「センサメダル」という2種類のキットがあります。「センサ評価キット」は写真1で紹介したArduinoやLazurite、mbedなどに装着して使えるモジュール型のキットです。「センサメダル」は主にBluetooth Low Energy通信によるスマートフォンなどと連携することが可能な、ウェアラブルデバイスなどの用途に向いたセンサデータを扱うことができるキットになっています。
名称 | センサ評価キット 製品名:SensorShield-EVK-001 |
センサメダル 製品名:SensorMedal-EVK-001 |
---|---|---|
連携方法 | Arduino UNO / Lazurite / mbedなど | Bluetooth Low Energy通信にて |
搭載センサ | 加速度、気圧、地磁気、照度・近接、カラー、磁気、温度、紫外線の計8種 | 加速度、気圧、地磁気、角速度(ジャイロ)の計4種 |
サイズ | 62mm×87mm | φ33mm |
特徴 | 8種類のセンサ Arduino Uno/Lazuriteで利用可能 各種ドキュメント・開発ソフト有 |
センサを使用した初期開発に最適 特徴あるセンサアプリケーションの提供 低消費電力(ボタン電池1個で) |
想定アプリ例 | センサ評価・初期セット開発 IoTデバイス 電子工作・教育教材 |
ウエアラブルデバイス 高機能腕時計 マシンヘルス監視デバイス |
対象となるユーザー | 電子工作初心者、センサを評価したい方 | 電子工作中級〜上級者向 Bluetooth Low Energy通信などのプログラムが書ける方 |
価格 | 14,700 円 | 14,700 円 |
※画像は公式サイトより引用
3.どんなセンサが使えるの?
センサ評価キットに付属されているセンサ
Arduino / Lazurite / mbedを利用する際によく使うセンサが一通り付属されていますね。センサの取り付けはセンサモジュール本体に差し込むだけで、必要な電圧もジャンパピンでなので、センサの取り替えも手軽です。
センサメダルに搭載されているセンサ
センサメダルは主に腕などの身体に付けて利用するようなシーン向け(ウェアラブルデバイス向け)に必要なセンサが搭載されています。
4.どんなものが作れる?
センサ評価キットを使って作れるものはアイデア次第で無限大ですが、購入した方が手軽に試せる例としていくつかご紹介します。
最初にセンサを使ってみるための入門記事
第40回 Arduinoでセンサを使った開発が劇的に楽になる!8種のセンサを持つロームセンサ評価キットを試してみた(導入&地磁気センサ編)
センサ評価キットの開封の儀から実際にセンサを取り付けてサンプルプログラムを動かすまでの流れを紹介しています。センサキットを購入した方は、まず一度本記事を試していただければ流れを把握できると思います。
センサ1つでできる「簡易速度計」
ホールセンサと7セグメントLEDを使った簡易速度計測デバイスです。本編ではホールセンサの仕様からサンプルプログラムの解説までのセンサを使うまでの一連の流れを紹介しています。
複数のセンサを組み合わせた例〜照明デバイスを作る
本来なら複数センサを扱うのは必要な電圧が違ったりでかなり回路が複雑になったりめんどくさかったりするのですが、センサ評価キットなら手軽に複数センサを利用することが可能です。本記事では色、気圧、温度センサの3種類のセンサからの入力値で光の明るさ、色や揺るぎが変化する照明デバイスを作成しています。
まとめ
ざっとこれまで連載した内容と合わせて、ローム・センサ評価キットの使い方をまとめてみました。なにはともあれいろいろな高性能センサを手軽に試すことができる本キット、アイデア次第で無限大の可能性を秘めている、その制作過程での試行錯誤の連続を強力にサポートしてくれる強い味方ですね。
次回は引き続きセンサ評価キットを利用してデバイスを作っていきたいと思います!
■関連リンク
ロームセンサ評価キット 公式ページ